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エリザベート王妃国際音楽コンクール 2021(ピアノ部門)

世界三大ピアノコンクールのひとつというエリザベート王妃国際音楽コンクール。務川慧悟さん第3位、阪田知樹さん第4位という、日本人おふたりが揃って上位に入賞されたことは心が躍る出来事でした。

クラシック音楽初心者の筆者にとって、コンクールはどう行われるのか興味がありましたが、一般人が見ることなどできないものなのだろうと思っていました。それがライブ配信というかたちで鑑賞できるとは、思ってもみなかったチャンス!しかもファイナリスト6名の中に日本人が2名も入っているということの重大さは、初心者でもなんとなくわかるものがありました。初めてピアノコンクールを追いかける高揚感を約1ヶ月間味わっていました。

今回の記事は、それぞれのコンテスタントの演奏を聴き分けるものまでは至りませんが、初心者の基本的な知識としてコンクールとはどういうものなのか、そのルールなどを、公式サイトを斜め読みしながら簡単に備忘録としてまとめてみたものです。


ピアノコンクール 2021

エリザベート王妃国際音楽コンクールはショパン国際コンクール、チャイコフスキー国際コンクールと並んで世界三大ピアノコンクールといわれているそうです。
今年のコンクールはコロナ禍のため2020年から延期されたもの。本来、有観客で開催されるもののようですが、今回は無観客でパブリック配信(公式ウェブサイトなどからのライブ配信&テレビ・ラジオ放送)されました。

感染症対策での特例

そんな今年のコンクールは、例年といくつか違うルールがあったようです。例えば:

1)初めてFirst roundからパブリック配信 
2)各ラウンドに進む人数が絞られる(セミファイナル24名→12名、ファイナル12名→6名)
3)本来2日間に渡るセミファイナルのリサイタルと協奏曲は、今年は1日でいっぺんに行う

滞在先

個人的に興味深かったのが、コンクール中のコンテスタントたちの滞在先。コンクール側から用意されるようですが、ホテルではなくホームステイなのだそうです。練習できるピアノが置いてあるお宅に滞在できるということでしょうか?また、ファイナリストになると、なんとお城で合宿!課題である未発表曲はファイナル初日に世界初披露することになっており、その情報漏洩の問題に加えて演奏のための解釈など第三者の協力を求めてはならないということから、携帯電話など電子機器を取り上げられ、軟禁・・・じゃないですね(笑)隔離されます。有無を言わさず健康的にデジタルデトックスですね。


日本人コンテスタント(務川慧悟さん、阪田知樹さん、吉見友貴さん)

勉強不足で海外の音楽家はまだ追えていない筆者。日本人コンテスタントだけ少し追ってみました。

第3位に入賞された務川慧悟さんはフランスのパリ国立高等音楽院に審査員満場一致の首席で合格、現在も在学中のようです。2019年ロン=ティボー=クレスパン国際コンクールにて第2位入賞など、数々のコンクール受賞歴がある方。ちなみにセミファイナルで共演した指揮者・Frank Braleyさんはパリの大学で師事した先生だという!(緊張が少しほぐれたりしたでしょうか??)個人的には務川さんの流暢なフランス語が衝撃的で、インタビュワーにどうやってそんな上手なフランス語を習得したか聞かれた務川さんは、フランスには7年住んでいるから自然と、と謙遜していらっしゃいましたが、努力されたのではと想像します。クラシックの音楽家は3ヵ国以上の言語を操り、音楽以外にもいろいろな能力に長けている方が多く、なんだか別次元の人というほど尊敬する存在です。また務川さんは文筆家としての活動や、最近では反田恭平さんが立ち上げた株式会社としてのクラシックの音楽家の事務所に所属されていることが話題になっているようです。これからのクラシック界を革新的に牽引していくチームなのかもしれませんね。

第4位の阪田知樹さんはドイツ・ハノーバー音楽演劇大大学院に留学中とのこと。2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位、6つの特別賞。コンクール史上、アジア人男性ピアニスト初優勝の快挙。また第14回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにて弱冠19歳で最年少入賞と輝かしい経歴がある方。また阪田さんは指揮・作曲・編曲でもご活躍されています。今回のコンクールではとても落ち着いていて、特にステージ上では堂々としている印象でしたが、インタビューでは好きなテレビ番組という質問にポケモンが好きだと答えて、テーマソングをピアノで弾いていらっしゃいました。おちゃめな方なのでしょうか。

そんなおふたりは東京藝術大学の同期だったのだそうです。

そしてセミファイナリストとなった吉見友貴さん。高校2年生で第86回日本音楽コンクールで最年少優勝という経歴を持ち、現在はボストン・ニューイングランド音楽院に奨学生として、桐朋学園大学に全額免除特待生として在学中の21歳という。例年であれば12名に残ったならファイナリストでしたし、今回のコンテスタントの中でも最年少チームのひとり。他のコンテスタントの年齢まであと2周くらいコンテストに挑戦できそうですね!?初心者にもわかるこの若さでの偉業。将来有望なピアニストのひとりでしょうね。そして演奏に関係ないのですが、このコンクール公式ウェブサイトに掲載されているアーティスト写真がすごくいいです!個人的にコンテスタントの中で優勝だと思っています(笑)


First round

ビデオセレクションで331人から74人に絞られ、その中から参加を見送った者を除き58人がFirst roundに進出。その58人の名前と国の一覧がこちら。日本は7人もいます!しかしさらに驚くのはヨーロッパの国々より多い韓国勢!筆者はあまり詳しくはないのですが、韓国のドラマや映画などでピアノ曲が印象的に使われているものがヒットしていたりすることから、ピアノが人気なのはなんとなく想像できる気もします(?)

■条件(例年):以下の曲それぞれ選んだものを申請し、その中から審査員が選んだものの全曲または抜粋を演奏する。演奏曲の告知はパフォーマンスの1時間前。演奏の順番はコンテスタントの自由。パフォーマンス制限時間:25分。演奏順はくじ引き。

・・・と、ルールブックには書いてありますが、吉見友貴さんのYouTubeを拝見して、今年は特例だったことが判明!

■条件(今年):以下の中からコンテスタントが選曲する。パフォーマンス時間20分以内でエチュードは1~2曲。演目はパフォーマンスの直前に告知される。演奏順はコンピューターによるくじ引き。

参加者数:制限なし  セミファイナル進出:12名
開催日:5月3日(月)~5月8日(土) 16:00 & 20:00


【 プログラム 

1)以下の①~②の合計制限時間:14分間以内
①ハイドン/モーツァルト/ベートーヴェン(Op.28まで)のソナタの中から第1楽章 
②自由選択

2) ①~④のエチュードから1~2曲:
①ショパン 
②リスト 
③バルトーク/ドビュッシー/プロコフィエフ/ラフマニノフ/スクリャービン/ストラヴィンスキーから選択 
④Abrahamsen/Dusapin/Ligeti/Mantovani/Messiaen/Ohana/Rautavaaraから選択


【 First roundの演目~Semi-finalに進んだ12名~

コンテスタントが多いのでFirst roundを勝ち進んだ12人の選曲だけ抜粋してみました。日本語版の作品の記載方法は、勉強がてら初心者なりに調べてみたものなので、心得ていないところがあるかもしれませんが、どうぞご容赦ください!

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(ここで注目なのは吉見さんのアーティスト写真ですよ!笑)


Semi-final

■条件:以下の曲それぞれ選んだものを申請し、その中から審査員が選んだものの全曲または抜粋を演奏する。演奏曲の告知はパフォーマンスの29時間前(つまり15時に演奏する人は前日の10時、20時に演奏する人は前日の15時)。リサイタル2曲と協奏曲1曲を同じ日に演奏すること。演奏の順番はコンテスタントの自由。協奏曲のリハーサルは1回と演奏直前の微調整?(balanced rehearsal)のみ。パフォーマンス制限時間:リサイタル約40分間、協奏曲約30分間。

参加者数:12名  ファイナル進出:6名
開催日:5月10日(月)~5月15日(土) 16:00 & 20:00
出演:指揮 Frank Braley/Orchestre Royal de Chambre de Wallonie


【 プログラム 

■リサイタル

1) このコンクールのために用意された約5分間の未発表曲。この未発表曲は3月4日に参加が確定したときに告知され、コンクール前に演奏してはならない。

2) 全く違うリサイタル曲を2つ。それぞれ30~35分間

■協奏曲

モーツァルトの以下の中から選択:KV450 (No. 15)/KV453 (No. 17)/KV456 (No. 18)/KV488 (No. 23) /KV595 (No.27)


【 セミファイナルの演目~演奏順~

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Final

■条件:6名のファイナリストはQueen Elisabeth Music Chapelに滞在し、特に未発表曲などファイナルに向けた自習時間を持つ。未発表曲はチャペルに着いたら告知される。その間ファイナリストは部外者とのコミュニケーション不可。またこの間オーガナイザーのルールに従い、オーケストラとのコミュニケーションをする。滞在期間中は取材・撮影が行われる。

出演:指揮 Hugh Wolff/Belgian National Orchestra
開催日:5月24日(月)~5月29日(土) 20:00


【 プログラム 

1) このコンクールのために用意された約10分間のピアノとオーケストラのための未発表曲。

2) 自由選択


【 ファイナルの演目~演奏順~

課題曲:MANTOVANI 「D'un jardin féérique 妖精の庭から」

1. Vitaly Starikov(ロシア) チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
2. Tomoki Sakata (日本) ブラームス:ピアノ協奏曲第2番
3. Keigo Mukawa(日本) プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番
4. Sergei Redkin(ロシア) ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
5. Dmitry Sin(ロシア)    ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
6. Jonathan Fournel(フランス) ブラームス:ピアノ協奏曲第2番


結果

結果は左から順に、それぞれの賞の名称も入れてみました。公式サイトには賞金金額も載っていたりしますが、筆者は夢の世界を味わうために、なんとなく省略しました(笑)また、トップの受賞者だけでなくファイナリスト6名の演奏がCDになったり、コンクールの締めくくりにコンサートが開かれるとのこと。再びコンクールのあの緊張感や高揚感を思い出して、楽しむことができそうです!

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動画

■それぞれ公式ウェブサイトの演奏動画(フル)はこちら

■コンクール史上初の前年受賞者による解説付きライブストリーミング・Twitch版。ファイナル前の合宿(?)中&ファイナル演奏直後のインタビューもあり。

阪田さんインタビュー:ファイナル前 13:18頃、ファイナル直後 2:01:00頃
務川さんインタビュー:ファイナル前 1:38:54頃、ファイナル直後 1:47:30頃

■サクっと3分前後のダイジェストならこちら


余談:過去にファイナルで演奏された協奏曲トップ10

興味深かったのでこちらの情報も書いてみました。コンテスタントが好む理由を、これから少しづつ探ってみたいものです。

1. チャイコフスキー第1番(過去34回)
2. ラフマニノフ第3番(過去25回)
3. プロコフィエフ第3番(過去18回)
4. ブラームス第1番(過去16回)
5. リスト第1番(過去15回)
5. プロコフィエフ第2番(過去15回)
7. ショパン第1番(過去14回)
8. ブラームス第2番(過去11回)
8. ラフマニノフ第2番(過去11回)
10. ベートーヴェン第5番(過去10回)←「皇帝」ですね!


最後に

3~4に一度しか開催されないというこのエリザベート王妃国際音楽コンクール。その直後に5年に一度しか開かれないショパン国際コンクールが続きます。ショパン国際コンクールはピアノコンクールとしては世界最高峰という表現も見かけますし、何よりコンクールの楽しさにすっかり嵌ってしまった筆者は、来月から予選が始まるのを今から待ち遠しくしています。また日本勢が盛り上げてくれるといいですね!


出典

ピアノ 2021 ルールブック(PDF)

今年の特例について

過去にファイナルで演奏された協奏曲トップ10

2021年 主要コンクール・スケジュールまとめ(ぶらあぼ)


















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