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The MUSIC OF JOHN WILLIAMS:STAR WARS AND BEYOND 2021 指揮: 原田慶太楼 演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

(2022年版を聴きに行った直後ですが、まずは溜めていた昨年のレポートを。ややこしくてすみません!)

ジョン・ウィリアムズと言えばスピルバーグ監督作品など世界的大ヒット映画の音楽を担当した作曲家。その有名な映画音楽の数々を迫力あるオーケストラの生演奏で聴くというコンサート。このコンサートでは司会者と指揮者の原田慶太楼さんがプログラムの背景などをお話くださるトークつきで、クラシックファンだけでなく映画ファンも垂涎もの。毎年チケットが完売になるという人気公演ですが、昨年感染症対策の影響で延期になり、約1年ぶりの開催となりました。会場はいつものクラシックコンサートとは少し雰囲気が違い、よりカジュアルで、若々しいエネルギーと興奮で満たされていました。

この記事はクラシック音楽初心者が、勉強がてらコンサートの余韻を味わう目的で残す、備忘録に近いコンサートレポートです。


プログラム

1.オリンピック・ファンファーレとテーマ Olympic Fanfare and Theme
2.「E.T.」 Flying Theme
3.「リンカーン」 With Malice Toward None for Solo Trumpet and Full Orchestra
4.「1941」 March from 1941
5.「屋根の上のバイオリン弾き」 Excerpts from Fiddler on the Roof
6.「シンドラーのリスト」 Theme from SCHINDLER'S LIST for Violin and Orchestra
7.「ジュラシック・パーク」 The Theme from Jurassic Park
8.「ハリー・ポッターと賢者の石」 Hedwig's Theme
9.20世紀FOXファンファーレ 20th Century Fox Fanfare
10.「スター・ウォーズ」Star Wars
  Main Title
  Luke and Leia
  Yoda's Theme
  The Imperial March (Darth Vader's Theme)
  Cantina Band
  Anakin's Theme
  March of the Resistance
  Rey's Theme
  The Jedi Steps and Finale

<出演>
指揮: 原田慶太楼
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
バイオリン: 篠崎史紀(NHK交響楽団コンサートマスター)
トランペット:川田修一(東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者)
MC:田添菜穂子(フリーアナウンサー)

公演日:2021年8月21日 (土)サントリーホール
   (2020年4月4日 (土)からの振替公演)

後に公開されたこの公演のダイジェスト動画


原田慶太楼さん

海外アーティストの渡航が叶わなかったコロナ禍、その代役で日本の若手音楽家の活躍が話題になりました。原田さんもコロナ禍で行われたNHK交響楽団との共演でその才能が日本全国に知れ渡り、いま最も注目されている指揮者のひとりと言われています。原田さんは東京のインターナショナルスクールからアメリカの高校へ進学後、アメリカやロシアでご研鑽を積み、様々なオーケストラと共演した輝かしい経験をお持ちです。現在はアメリカ・ジョージア州サヴァンナ・フィル・ハーモニックの音楽・芸術監督、東京交響楽団正指揮者をされ、国内外で活躍されています。

バーンスタインのミュージカル「ウェストサイドストーリー」に魅了され、それまでミュージカルのサックス奏者を目指していたところ、師に出会い指揮に転向されたとインタビューなどで語っていらっしゃいます。映画音楽といえば、昨年は「ラ・ラ・ランド」のシネマ・コンサートの指揮をされたのも記憶に新しいです。

クラシック初心者の筆者が原田さんを知ったのもコロナ禍があってこそ。すべてのコンサートが中止になった緊急事態宣言中、クラシック音楽を絶やさないためにYouTubeなどSNSを駆使して積極的に、かつ一番早くに活動し始めた音楽家のおひとりでした。国内外の音楽家をゲストに迎え毎日ライブ放送した「Music Today」、山田和樹さん・鈴木優人さんという指揮者3人で裏話を繰り広げる「The Three Conductors」というYouTube番組。筆者は「The Three Conductors」で指揮者について興味深い知識が増えただけでなく、とても身近に感じられるようになったのですが、それが革新的だったのはクラシックの裏事情を捧腹絶倒のぶっちゃけ話で、おそらくこれまでクラシック音楽に携わる方々が暗黙の了解で壊してはいけない壁(と思われる)を次々と壊していらしたところ(笑)。そのユーモアセンスとノリの良さ、YouTubeでは司会をしながら画面操作をするというクラシック音楽家のイメージを変えるデジタルの強さ、そしてネイティブの英語がとても勉強になるのも推しポイント。筆者のような初心者に大きくドアを開き、クラシック音楽をとても親しみやすいものにした原田さんは、新たな試みを次々に実践するディレクターのような方でもあります。そんな個性的なお人柄は「出る杭は打たれる」どころか「杭が出すぎて打てない」と言われるのだとか(笑)


ジョン・ウィリアムズとスティーブン・スピルバーグ

2018年から毎年開かれているというこのオール・ジョン・ウィリアムズプログラム。日本では原田さんの指揮以外考えられないと思える理由があります。ジョン・ウィリアムズご本人と交流があり、スピルバーグ監督が司会をする演奏会でウィリアムズ氏のサポートをしたご経験もあるという驚きの事実(リハーサルでオケに彼のメッセージを伝える係)は、会場をどよめかせていました。原田さんを通して偉大な作曲家からの直接のメッセージを再現するオーケストラ。なんて貴重なのでしょう。

プログラムに掲載されている原田さんとジョン・ウィリアムズ氏のお写真。

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オリンピック・ファンファーレとテーマ Olympic Fanfare and Theme

ダイナミックで勇敢で、高揚感があるこの作品は金管楽器とパーカッションがとても印象的。これは音楽初心者の想像でしかないのですが、前述のようにサックス経験者の原田さんの音楽は、だいたいどの作品でも金管楽器をとてもかっこよく、上手に生かしていると日頃から感じています。さらに生き生きとしてエネルギッシュな原田さんの指揮でこれぞ!という鳥肌ものの演奏。

この日のチケットはP席。ステージの裏側になる、指揮者ガン見席(笑)これがまた想像以上の大正解で、金管楽器に飛んでくる熱い指揮が、まるで自分に向かっているかのよう。筆者はちょうどティンパニ奏者の裏になるような位置だったのですが、「さぁ来い!」と言わんばかりのティンパニに投げる合図がど真ん中に飛んできて、これはもう筆者の語彙力では表しきれない大興奮のかっこよさ。1曲目でもう魂を持っていかれ、その後はちょっとふわーっとしていました(笑)

そして今日のコンサートマスターは、テレビで拝見したことがあるNHK交響楽団の篠崎さん・通称マロさん。ちょっといつもと雰囲気が違いますがトレードマークのような髪型と髭はカットしたのかしら、と思っていたのですよね、この時は。

音源は2019年グスターボ・ドゥダメル指揮、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団より。まさにこの曲が使われたロサンゼルス・オリンピックの開催地ですね。ふと調べてみました。ロス五輪1984年、原田さんは1985年生まれ。まだ生まれていらっしゃらない・・・。



「E.T.」 Flying Theme

原田さんの裏話によると、この作品は映画のエンドロールの長さに合うように作るものだったのだそうで。ところが音楽がどうしてもエンドロールより長くなってしまう。そこでなんと、オケに合わせて映像の方をを合わせこんだのだそうです!スピルバーグ氏のウィリアムズ氏に対する絶対的信頼ですね。

そしてこの映画で印象的なのは自転車が空を飛ぶシーン。その自転車を表現する楽器はティンパニ。ぜひ自転車を飛ばす瞬間のティンパニに注目して欲しいという原田さんは、嬉しそうな表情で自転車を飛ばしていました。(そしてやはり目の前のティンパニに送られる原田さんの合図に魂を持っていかれる)



「リンカーン」 With Malice Toward None for Solo Trumpet and Full Orchestra

トランペット・川田さんのソロが光る作品です。

原田さんは途中指揮をせず観客と一緒に拍手でリズムを取り、あれ、指揮は?というシーンが。クラシックファンとも限らない観客をより楽しませ、飽きさせない工夫をされたのだと想像します。

この曲のトランペット・ソロバージョンの音源がなかなか見つからず、The President's Own(アメリカ海兵隊軍楽隊)という渋いところから引っ張ってきました(2019年)。制服がかっこいいですね・・・。



「1941」 March from 1941

勉強不足で存じていませんでしたが、1979年に公開された戦争コメディとのこと。コメディらしい明るいマーチングバンドです。「E.T.」のテーマ同様、映画のエンドロールに合わせた音楽を要求されたものだという。こちらは逆にエンドロールに曲の長さが足りず、カデンツァを入れることになったのだとか。Wikipediaによるとカデンツァとは、独奏楽器や独唱者がオーケストラの伴奏を伴わずに自由に即興的な演奏・歌唱をする部分のこと。つまり音楽性を失わずに上手く長さの調節ができる”つなぎ”を入れたのですね。



「屋根の上のバイオリン弾き」 Excerpts from Fiddler on the Roof

バイオリン弾きの映画ですから、主役はバイオリンです。その注目のバイオリニストですが、なんと途中からオケの間をコンマスのマロさんが弾きながら歩いて登場!サプライズ演出に会場は笑いに包まれていました。個人的に「ということは、今までマロさんだと思っていた方は?」そうですよね、イメージが違いすぎますよね(笑)違う方だったという事実に自分でウケてしまいました。マロさんはスターウォーズの大ファンなのだそうです。

MCでは、このステージ演出が企画されてしまったので渋々歩くことになったというマロさんでしたが、歩きたいと言ったのはマロさんの方だとバラされていました。原田さんは笑いながら一瞬振り返り「嘘ばっかし!」とつぶやいたのを見逃しませんでした。ザ・P席の特権! 

この曲、あまり音源がないですね・・・。スペインのフィルム・シンフォニー・オーケストラという映画音楽に特化した楽団の録音です(2019年)。



「シンドラーのリスト」 Theme from SCHINDLER'S LIST for Violin and Orchestra

切ないバイオリンのメロディが有名なこの曲では、マロさんがたっぷりの哀愁を表現されていました。原田さんは指揮棒を持たずに指揮していましたが、繊細な曲の時は指揮棒がない方がメッセージを伝えやすいとおっしゃっていたことがありますね。

音源はグスターボ・ドゥダメル指揮、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団(2020年)。


「ジュラシック・パーク」 The Theme from Jurassic Park

ゆっくりとした恐竜の動きがうまく表現された雄大で、滑らかな音楽。明るく熱い指揮のイメージが強い原田さんですが、こうして繊細さや感動的な音楽も丁寧に、精密に作られていると感じます。

音源は2020年ジョン・ウィリアムズご本人指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。Apple Musicの方はミュージックビデオのフル尺をぜひ。YouTubeのハイライト動画も貼っておきます!


「ハリー・ポッターと賢者の石」 Hedwig's Theme

原田さんが注目ポイントと教えてくださったのは冒頭のメロディを奏でる鍵盤楽器のチェレスタ。魔法を表しているといいますが、作曲家のアイデアには舌を巻きますね。筆者はこの日まで鉄琴の類かと思っていました。指揮はどこか熱く楽しそうでした。

YouTubeはジョン・ウィリアムズ x ウィーンフィル x ソリスト:アンネ=ゾフィー・ムターさんのバイオリンバージョン。



20世紀FOXファンファーレ 20th Century Fox Fanfare

休憩を挟んで第二部。劇中作品だけでなくファンファーレを入れるとは、映画好きにはたまらないですね。この有名なメロディもウィリアムズ作品だったのですね!こんな作品までフルオーケストラで聴く体験、最高ですね。

そしてこの後はスターウォーズ。今回の公演でスターウォーズをいちばんの楽しみにしていた観客も多いと想像しますが、その期待感を煽ります。


「スターウォーズ」Star Wars

Main Title

待ってました!という会場の熱いエネルギーを感じます。もう語るものはありません。かっこいい!

なんとドイツ・グラモフォンの公式フル尺動画が公開されています!ジョン・ウィリアムズ指揮、ウィーンフィル(2020年)


Luke and Leia

ここから先はメインテーマから始まるひとつの作品として、楽章のように仕立てられていました。

ジョン・ウィリアムズ指揮、ウィーンフィル(2020年)


Yoda's Theme

ウィリアムズ作品はハープが良い存在感を出しているものが多いですね。


The Imperial March (Darth Vader's Theme)

再び会場が大興奮のダースベーダーのテーマ。原田さんの表情もダークになっていて、オーケストラとその世界観をつくる意気込みのようなものを感じさせました。

そして、これは必見です!Apple Musicにあるミュージックビデオ。ジョン・ウィリアムズご本人が指揮する2015年ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団。サムネイルで出ていますが、途中何かが登場しています!これは楽しいですね。日本では無理なのでしょうか。


Cantina Band

ざわざわと舞台の後方で配置換えがされ、狭いスペースに何人もの奏者が加わってきます。原田さんも指揮台から降り、その目の前に移動。小さなジャズ・バンドエリアを作っていたのでした。再び、あれ、指揮は?という原田さんは会場の拍手を煽り、小さく楽しそうに踊っていました。


Anakin's Theme


March of the Resistance


Rey's Theme

ジョン・ウィリアムズご本人が指揮する動画がありました~。


The Jedi Steps and Finale

これで楽しかった2時間ほどが終わってしまうのでした。充実した公演は時間の経過がとても速いのですよね。


最後に

映画ファンというほどではない筆者ですが、このプログラムに予想以上に感動してしまい、終演後からはこの感動を誰かに伝えたい!このプログラムでクラシックを聴かない人たちをクラシック沼に引き込みたい!という野望を持つようになりました。もちろん、とびきりかっこいい指揮も!こうして翌年も前のめりで鑑賞に行くことになるのでした・・・(翌年のnote記事執筆中)


出典

プログラム プロマックス[主催・企画・制作 ](当日配られたもの)

「1941 (映画)」Wikipedia

「カデンツァ」Wikipedia

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