鍵盤楽器の歴史を学んだ話 ~浜松市楽器博物館~
推しのコンサートついでに、楽器の街・浜松にやってきました。浜松に行ったからには訪れてみたかった楽器博物館。
世界各国のおそらくすべてのジャンルの楽器がこれでもかと並べられているのも圧巻なのですが、筆者が最近とくに興味がある鍵盤楽器に関してはその深さが想像以上。すごい情報量!展示スペース広っ!しかもとてもわかりやすく興味深い展示だったので、楽器初心者である筆者は大興奮。
人生2週目があるなら、やっつけで逃げるように提出した大学の卒論もこれならもっと書けた(笑)と思ってしまうほどネタの宝庫だったので、何度でも通いたくなる博物館でした。
まだまだ夏休みの自由研究レベルですが、せっかくなのでそのいくつかを簡単にnote記事に残してみることにしました。
それぞれの時代の打鍵の構造
チェンバロ
鍵を押すと弦をはじく構造。語源は先祖の打弦楽器・ツィンバロム(cimbalom)。英語ではハープシコード=Harp(ハープ) + Chord(弦)、フランス語でクラヴザン(clavecin)。
よくコンサートプログラムで見る「クラヴザン組曲」ってチェンバロのことだったんですね!(角野さんを例に)
なんと、楽器博物館には各時代の打鍵のアクションを体験できるセットが置いてあり、弾き比べできるのです!
こちらチェンバロの打鍵の動きを動画で。
ピアノの誕生とイギリス式アクション
産業革命によりピアノ製造の大規模化・低コスト化が可能になり、中産階級向けの家庭用鍵盤楽器の生産が進みました。
その時代の鍵盤楽器はハンマーで弦を打つというアクションを持ったピアノとなり、鍵を押す指の力で音の強弱をコントロールできるようになったのだそうです。
こちらイギリス式の構造
ウィーン式アクション
鍵を押したとき指でハンマーの重みを感じやすいため、イギリス式よりも細やかなタッチコントロールが可能になったもの。
言われてみれば確かにイギリス式の方が若干軽くてさわやかな音が出ていたかもしれないですが、この非常に些細な違いを求めたプロたちのプロぶりを思い知る初心者でした。
こちらウィーン式の構造
ダブルエスケープメント アクション
ショパンご愛用で有名なエラール社が特許を取得している技術で、イギリス式アクションに鍵を完全に戻さなくても再度打鍵できる装置を追加したもの。これにより連打の精度が高まり、超絶技巧の演奏が可能になったのだそうです。
ダブルエスケープメント アクションのハンマーの動き。残念なことに筆者に連打の技術がなく、得意の連打が再現できていない(笑)ですが、響きがもうモダンピアノのそれですよね。
アップライト ピアノ
これについては特に説明パネルはなかった気がしますが、確かピアノを一般家庭用にコンパクトにするために縦型構造になったのがアップライトですよね。カワイのミニチュア模型がかわいらしくて、ついこちらも動画を撮ってしまいました。
(なんだかこれだけショート動画になってしまいました。修正予定)
パネル展示
とても気に入ったパネル展示をいくつか。
イギリス式とウィーン式の違いを一目で解説したパネル
音の強弱を楽しんでいたであろうショパン(イギリス式)、軽くすぐ消えていく音(ウィーン式)を使って作曲していたモーツァルトとシューベルト。なるほど!と思える曲がいくつもありますね。
弦の違いを一目で解説したパネル
フォルテピアノとモダンピアノの張力の違いを、熊1頭分と象5頭分で比較したのがなんとも秀逸で感動!
希少なピアノのパフォーマンス
もちろん博物館に展示されている歴史的なピアノたちはどれも希少なのでしょうけど、その中でもとりわけ、世界に10台ほどしか残っておらず(戦争で焼けてしまったなどの背景も)、日本で公に展示しているのはこの楽器博物館だけではと言われる希少なピアノがありました。
1925年プレイエル製 二重奏専用ピアノ
ちょうどパフォーマンスの時間に出くわし、前のめりすぎる席で聴いていたため画角に収まりきらず、ピアニストさんたちの動きはペダルの足のみでお楽しみください(笑)
現代の2台ピアノ演奏のように片方のピアノの蓋を取る必要もなく、同じ響板を使うため響きも揃っている(2台ピアノに使うピアノは響きの近いものを探すという手間があるらしい)、また鍵盤の裏にレバーがついていて2台分のダンパーペダルの動きを合わせる設定ができる(!)というメリットがあります。ラヴェルやプーランクが活躍したこの時代のパリでは2台ピアノがとても流行っていたらしく格好のピアノでしたが、通常のピアノより重さが出て移動しづらいことなどもあり、あまり普及はしなかったのだとか。
プレイエルのロゴがかわいくて悶えました。
最後に
筆者は実のところ博物館の類であまり興奮や感動をするタイプではないのですが、想像以上に楽しい体験だったのですよね。一度では吸収しきれない情報量だったので、また浜松にお邪魔する機会がある時には詳しく見に行ければと思っています。
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