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お茶漬け
私が多分中学生だったころ、金縛りによくあっている時期があった。
陸上部で毎日運動しすぎていたので見たんだと思う。
そのころ、私は父とそこまで仲がよくなかった。
今もとても仲がいいとは言えないけれど、。
反抗期みたいなものだったんだと思う。
金縛りにあった夜、ようやく現実に目覚めることができて安心したが、もう一度寝るのが怖かった。
私はリビングに起きて、水を飲んだ。
父はまだ寝ていなくて、リビングでゆっくりしていた。
昔のことすぎて、どういう流れでそうなったのかわからないのだが、父がお茶漬けでも食べるか?と聞いてきたので、食べることにした。
私は夜歯磨きをした後になにか食べるという経験がほとんどなく、とても貴重な、なにか食べること自体が変な感じだった。
私の前にささっと出てきたお茶漬け。たしか昆布だったと思う。
きっと安心したんだと思う。
お茶漬けのあったかさと、父が起きているという事実と、お茶漬けを私のために作ってくれたことに。
その後のことも覚えていない。
でも、そのお茶漬けを父が出してくれたということは鮮明に覚えている。
この夏、帰省しているときに気分が悪くなってごはんが食べられない時があった。
その時に出してくれたのが、鮭と昆布の雑炊。
なんだかあの夜のことを思い出した。
ふとした瞬間に、あの夜のことを思い出す。
思い出すたびに口元がふっとゆるんでしまう。