世界は偶然でありかつ必然
本を読んだり、あるいは色々考えたりしていると世界の偶然性と必然性について思いを致すことがたまにあります。今日はそのことについて、簡単な証明をしていこうと思います。
世界が偶然であることの証明
まず、必要になるのが「現実」と「可能性」という概念です。
現実とは既に決定してしまっている出来事のことを指します。時制で表すと過去や現在完了、現在進行形などが当てはまります。
可能性とは、もしかしたら起こるかもしれない色々な出来事のこと指します。自制で表すと未来などです。
ここからが証明になります。
ある現実が起こったとして次にどんな現実が起こるのかについて私たちは様々な可能性を考えることができます。しかし、それら諸可能性から何が選ばれるのかは全く無根拠です。従って、世界は偶然です。
ただ、この証明に異を唱える人もいるかもしれません。例えば、自分がボールを投げればそれは落ちるということは事実であり、この場合どの可能性が選ばれるのかは無根拠ではなく科学法則に従っているのだと。
しかし、この事実もまた実際にボールを投げてそれが落ちるのを確認するまで究極的には決定されていないのです。ボールを投げた次の瞬間にもしかしたら物理法則自体が変わってしまうかもしれません(この点については「科学とは何か」という別の議論をする必要がありますが、まぁ可能性としてはありうるでしょう)。あるいは、もしかすると次の瞬間にあなたは死んでしまっているかもしれません(次の瞬間にも生きているという保証はどこにもありません)
つまり、どの可能性が選ばれるのかについての絶対的で必然的な法則は存在せず、科学法則についてもそれは蓋然性が高いという程度にとどまるしかないのです。
世界が必然であることの証明
世界は様々な可能性の中から選び取られて現実となることは前段落で確認しました。では、ある一つの可能性が現実となった後はどうでしょうか。現実となったものは既に決定してしまったことなのでしたね。だとすれば、私たちは次の諸可能性を考えるにあたってこの現実を土台に考えるしかないわけです。これは必然です。現実は絶対に変わることがない。
また、過去現在未来のどの時点においても世界が変わることはあり得ません。なぜなら、過去と現在は現実であり未来は可能性ですが、可能性自体は変わることはなくどの可能性が選ばれるのかが無根拠であるだけだからです。
従って、世界は絶対に変わらないという必然性を持っています。証明終了。
世界は偶然でありかつ必然、それと人生
以上の議論から、世界は何が現実となるのかについて偶然であり、世界それ自体は変わることがなく必然であるという結論が導かれます。論理的な議論はこの結論までを範囲としますが、これをもっと私たちの日常に引き付けて考えると、自分の人生は偶然であり必然であるということです。それはつまり、確かに私がこの人生を歩んでいるのは偶然であるけれども、同時にその人生自体は変えることのできない必然なのだからこの人生を歩んでいくしかないということの自覚をさせてくれるということです。
皆さんも自分の人生について色々考えることがあったらぜひこのことを思い出してみてください。何かの助けとなったら幸いです。