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実践共同体における学習と熟達化(論文メモ)
こんばんは、ゆーまです。
最近、「学びのコミュニティ」づくりに関心が高まっています(肌感ですが)。でも、そもそも「学びのコミュニティ」とは何なのでしょうか?
そこで、今回はこのテーマに関連する論文をレビューしてみました。
今回紹介するのは、「実践共同体における学習と熟達化」(2013, 松本雄一)という論文です。
この論文を通じて、学びのコミュニティとはなんぞや?というのを探っていきたいと思います!
紹介する論文
タイトル:実践共同体における学習と熟達化
年:2013
著者:松本雄一
概要
実践共同体研究の進展を目指し、実践共同体における学習と熟達化のプロセスについて、既存研究を整理し、その概念、機能、役割、さらには今後の研究の可能性について考察しているレビュー論文です。
そして、実践共同体研究の求められる背景には2つの背景があります。
→2013年時点の論文ですが、今はより強まっているように感じます。
企業の側に人材を育成する余裕がなくなってきている
自律的なキャリア形成に対するニーズの高まり
主要研究の整理
実践共同体に関する4つの主要研究を整理し、それぞれの特徴を比較しています。
Lave & Wenger(1991)
正統的周辺参加(LPP: Legitimate Peripheral Participation) という概念を提唱しました。これは、初心者が熟達者と関わることで、徐々に技能を身につけていく学習プロセスを指します。学習は、単なる知識の伝達ではなく、共同体の中での参加を通じて進行するものとしてます。
Brown & Duguid(1991)
実践共同体は、学習・イノベーションを促進する場であり、公式組織とは異なる特性を持つと指摘してます。規範的知識(企業のマニュアルや制度に依存する学習)と、非規範的知識(現場の経験や工夫)にはギャップがあり、そのギャップを埋めるのが実践共同体の役割であるとのべてます。
Wenger(1998)
実践共同体の学習をアイデンティティ形成の視点から分析してます。個人が実践共同体に関与することで、自分の役割や専門性が確立され、自己の成長につながることを示しています。また、実践共同体の境界や、複数の共同体に所属する多重成員性についても言及しています。
Wenger, McDermott & Snyder(2002)
企業における実践共同体の「育成」と「管理」の視点を導入し、実践共同体を組織内で活用するための方法を提案しています。公式組織と実践共同体が相互に影響し合いながら、知識を創造・蓄積・活用する仕組み二重編み組織を示しています。
概念の検討
上記の研究を整理し、実践共同体の概念について4つの主要な論点を明確にしています。
実践共同体の構成要素
Wenger, McDermott & Snyder(2002)によると、実践共同体は以下の3要素から成り立っています。
領域(Domain):共同体の関心の対象(例:技術開発、医療、教育など)
共同体(Community):知識を共有し、相互に学び合う人々の集まり
実践(Practice):共同体内で行われる学習活動や経験の蓄積
実践共同体の目的
実践共同体の第一の目的は「学習」であり、必ずしも生産性向上や組織目標の達成を目的とするものではありません。
実践共同体はつくれるのか
Wenger, McDermott & Snyder(2002)は、実践共同体は企業内で「意図的に育成できる」とのべていますが、Lave & Wenger(1991)は「自然発生するもの」であると考えています。
公式組織との関係
実践共同体は公式組織とは別の存在ですが、相互に影響し合いながら学習のループを形成します。
機能
実践共同体の機能を4つの視点から整理しています。
正統的周辺参加:初心者が共同体に関与しながら成長していく仕組み
公式組織からの距離の確保:業務の延長ではなく、自由な学習の場を提供
複眼的学習:公式組織の規範的知識と、実践共同体の非規範的知識のギャップを活用し、より深い学習を促進
多重成員性によるループ学習:企業と実践共同体の知識を相互に循環させる
役割
実践共同体の役割は、以下の4つに整理されています。
個人の学習・熟達化
実践共同体に参加することで、スキルの向上やキャリアの確立が可能になります。
チーム・組織学習の促進
チームや部署の枠を超えて、知識の共有と学習のループを形成します。
人材育成・教育
企業の研修などとは異なり、自発的な学習環境を提供します。
知識創造・イノベーションの促進
業務に直接関係しない学習を通じて、新たなアイデアやイノベーションを生み出します。
まとめ(感想)
この論文を読んで、「職場と大学院での学びの往還」と、実践共同体のループ学習には共通するものがあると感じました。
また、こうなると、このような「学びを往還できるコミュニティ」はどのように作って、育てていけるのかが、がぜん気になるところです。
まずは、身近なところで試してみることが大事なのかもしれません。例えば、社内で小さな勉強会を開いてみる、関心のあるテーマについて継続的に対話する場を作る、といったアクションが考えられるかなと思います。
職場での実践と論文での学びを往還させながら、このテーマでも探究を深めていきたいと思います。
(興味のあるテーマが増えすぎて広く浅くになってしまいそうなので、もうちょい絞ろうかなとは思いつつ。。)