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詩小説 「私の晴れはいつ?」

森山あきは、頭を抱えていた。
目の前には、不採用通知。これで4度目。
なにがだめ? 年齢? 経験のなさ?
不採用通知が届くたび、自分を全否定された気になる。
あなたは社会に向いてませんよ。
あなたは何も持ってないんですね。
働いていた時に貯めたお金が、まさに羽を持って飛んでいく。
ここにはいたくない!
ここは居場所が悪い!
お金にまで全否定されたかのよう。
辞めなければよかったんじゃない? と街行く視線、全部が言っている気がする。でも前の職場でも、あきに対する視線は攻撃的だった。
あらぬ噂があきに纏わりついて、離れなかった。
「社内のあらゆる人と不倫」
「コネで入ったから、なんでも許されると思ってわがまま放題」
「楽な仕事だけ選んでる。給料泥棒」
そのすべては噂に過ぎず、本当のことはひとつもない。嘘を並べられ、イメージだけでそんな風に言われたのでは、たまったものではない。
言葉と視線と孤立に耐えられなくなったあきは、退職せざるを得なくなった。それゆえの転職活動。
あきは、絶望感に包まれ、先の人生が真っ暗闇に感じた。
なんでもいい。仕事ができれば。給料なんていくらでもいい。
焦りと不安しかない。自分にできる仕事はなんだ。働くってなんだ。
なにができる。なにをしたい。もうわからなくなって、涙が出てくる。
自分はダメ人間なのだろうか。存在を許されないのだろうか。
「生きていたくない……」
あきのこぼした言葉と、外の土砂降りの雨が混ざり合う。
「なんでこんなにダメになるんだ!」
拳を床に叩きつける。
生きている価値はないのか…
手の痛みに生きていることを感じる。でもそれ以上に自分が透明に感じる。
握りしめた拳に、次々涙が流れる。
うずくまったあきは、小さくなったまま泣き続けた。
私に来る晴れはいつなのだろうか。

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