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【スカラーインタビュー#9】高校生チームが挑む「文化祭のDX」

「EACH EDGE」は、長野県在住・出身の高校生から若手社会人を対象とした人材発掘・育成プロジェクトです。テクノロジーを活用して、未来の「当たり前」を半年間で形にします。
 
この連載では、スカラーに選ばれた参加者の形にしたいプロジェクトや、参加した背景、実際にプロジェクト実現のために取り組んできた手応えをじっくり掘り下げます。


今回ご紹介するスカラーは、長野県上田染谷高等学校に通う4人組のチームです。高校2年生の小平悠彰さん、石井啓太さん、堤太洋さん、佐野凛斗さんの4人は、高校の文化祭で待ち時間を見える化できるシステムを構想しています。チームの大半がプログラミング未経験からスタートした4人ですが、EACH EDGEへの参加を通して、どんな気づきを得たのでしょうか?

文化祭の待ち時間を見える化して、もっと便利に。

ーー今日は佐野さんが都合により欠席なので、3人にお話を伺っていきたいと思います。まずは、皆さんがこのプログラムに応募したきっかけを教えてください。
 
小平:僕たちの高校のカリキュラムに「探究活動」の時間というのがあって、その中でプログラミングに興味があるメンバーが集まりました。その4人で何をするか決めようといろいろな意見を出し合う中で、堤くんが「文化祭を便利にしよう」というアイデアを出したんです。それに対してみんなが「いいね!」と盛り上がって、活動することが決まりました。
 
石井:今年と去年、文化祭に参加して楽しんだんですけど、その中で課題や改善点もあるなと感じました。だから、文化祭をよりよくしたいという意見が出た時、みんなのためにもなるし、すごくいい案だなと思いました。        

メンターと相談する参加メンバーの4人

ーー高校の文化祭で、どんな課題を感じていたんですか?

堤:一般公開の日が2日間あって、トータルで約3,000人が来るんです。クラスごとに展示や販売などの出し物をやるんですけど、人気の出し物は待ち時間がぐっと伸びてしまうんです。
 
石井:人気の出し物では1時間並んでも中に入れなかったりする一方で、離れた建物で行っている出し物には来る人が少なかったり、偏りが出てしまうんです。あとは、食べ物が完売したり、また売り始めたりしたときの状況がわかりにくくて……。そういうのを改善したら、人が分散して混雑の解消になり、来校者も生徒自身ももっと楽しめる文化祭になると感じました。
 
ーーそれが「文化祭の待ち時間を見える化する」というアイデアになり、EACH EDGEへの応募につながったんですね。
 
小平:そうですね。僕たちがチームを結成した時点で、堤くん以外の3人はプログラミング未経験者だったんです。その中で本当に作れるのかという技術的な不安があったので、メンターに教えてもらう機会のあるこのプログラムに応募しました。サーバーを契約する費用の捻出にも悩んでいたので、開発費の援助があるのもありがたいなと思いました。

メンバーの大半が、プログラミング経験ゼロからのスタート

プログラミングに取り組む4人

ーー堤さんだけが、プログラミングの経験があったんですね。

堤:小学校のクラブ活動でパソコンクラブに入っていたので、その過程でプログラミングに少し触れた程度です。だから、今回参加してみて、自分が想定していなかったプログラミングの書き方を知ったり、より適したプログラミング言語を学んだり、気づきが多かったですね。
 
ーーなるほど。他の皆さんはゼロからプログラムの勉強を始めたんですか?

小平:そうですね。メンターの先生からプログラミングの仕組みを教えてもらったり、プログラミング言語への理解を深めたりするところから始めて、4人で協力して分担しながら進めています。それでもやっぱりまだ難しい面もありますね。
 
ーーこのプロジェクトを進める中でいちばん苦労したのは、プログラミングの技術的な部分ですか?

小平:プログラムを組むのもそうですけど、こうしたプロジェクト自体を進めていくこと自体が初めてなので、リーダーとしてどう指示したらいいんだろうとか、進捗が思わしくない時にどう言えばよかったのかとか、自己反省して……。進め方に苦労しましたね。
 
石井:プログラミングの勉強をゼロから始めてみて、難しいなと思うことがけっこう多くて。周りのメンバーも忙しい中で、自分が困っていることを共有したら、もっと周りの人を忙しくしちゃうのかなと悩んだりしました。いまはグループ内で頻繁に連絡をとるんですけど、最初はうまくコミュニケーションをとるのが大変だと感じていました。
 
ーーコミュニケーションが取れるようになったきっかけがあったんですか?

石井:中間報告会の準備のために、電話やLINEで連絡をよく取るようになったからだと思います。
 
小平:そうですね。いまは話し合いたいことがある時とかに不定期でランチミーティングを開いています。どうやってシステムを組めばいいかといった相談はLINEで毎日やりとりしています。
 
ーー中間報告会という節目に向けて頑張ったことで、コミュニケーションが取りやすくなったんですね。実際に発表してみて、手応えはどうでしたか?
 
堤:他の人たちの発表を聞いて、相手にしている舞台がちがうなって。社会を変えようという明確なビジョンを持って、そこに向かって着実に進んでいて、これはとんでもない人たちと一緒にやっているなと感じました。その時、僕たちはあまり進捗が進んでいなかったので、それ以来、早く進めなくてはという焦りに駆られています。

つくる立場になって、見えてきたこと

燕三条の会社を訪問した様子

ーープログラムとしては折り返し地点を過ぎたところですが、いちばん印象に残っているのはどんなことですか?
 
小平:メンターの藤本先生にアドバイスいただいて、「燕三条 工場の祭典」に行った経験が大きかったです。オーダーメイドのシャツ、スプーンやフォークなどの洋食器、家の壁に取り付ける換気フードとか、それぞれのものを作っている会社の人に直接お話を聞いたんです。製品に細かいところまで配慮されたこだわりがあることがわかって、僕たちもそういったシステムを作りたいなと思いました。
 
堤:僕は中間報告会と燕三条、どちらも印象に残っていて。燕三条では普段何気なく見ているものに、いろいろな考えやこだわりが組み込まれているんだなと気づきました。中間報告会で他の人の発表を聞いている時に、明確な目標を立てて、それに対するこだわりを持って進めていると感じて「あっ、燕三条で聞いたことと同じだ」と思ったので、印象に残っています。

ーーなるほど、周りのものを見る視点が変化したんですね! 他にもこのプログラムを通して影響を受けたことはありますか?

小平:じつは、僕は来年の文化祭の実行委員長でもあるんですが、例えば、文化祭でのゴミのポイ捨て問題を考える時、このプログラムに参加する以前は、各自のマナーに任せるしかないよねという結論でした。

でも、探究して考えるようになると、僕たちにもできることが絶対あるとわかって。例えば、ゴミ箱をバスケのゴールに見立てたり楽しいものにしたりすると、ポイ捨てが減るみたいな解決策もあるかもしれない。問題への向き合い方が変化しました。
 
石井:僕は以前まで文化祭にただ参加するだけの立場だったんですけど、プログラムを通して、運営する立場など別の視点から考えた時に感じる問題点やその改善策とかを考えられるようになったかなと思います。
 
堤:僕はカメラが趣味で写真を撮ったりするんですけど、一般の人から見たらただの写真かもしれないけど、カメラをやっている身としては「すごいな、どうやって撮影したんだろう」って思うことがあって。それと同じことをプログラミングを通しても感じるようになって、最近は回転寿司の予約システムに感動しました。
 
――待ち時間が表示されたりするアプリがあって、便利ですよね!

堤:そうなんです。よくできたシステムで、どうやって作られているのかも気になって……。その分野に深く踏み込むと、ものを見たときに情報が増えるんですよね。使っている側にいる時は便利だなと感じるだけかもしれないけど、そのシステムを作ろうとすると大変な工夫がいる。一つのものを見ても、いろいろな情報を得たり、考え方が広がったりするようになって、面白いなと思います。

それぞれの未来につながる一歩を踏み出す


構想中のアプリのデモ画面

ーー物事の違う面が見えるようになるというのはすごいことですね。最終報告会までいよいよあと2ヶ月ですが、チームではどんなことを目指していますか?

小平:まずは今年の文化祭での課題をデジタル面から解決するのが目標です。最終報告会までに、そのプロトタイプを完成させられたらと思っています。それを文化祭で実際に使ってみて、フィードバックを得ながら、今度は上田市内の店舗などに拡張していけたらと思っています。

ーー上田市内に拡張していくというのは、店舗の空き状況などがわかるということですか?

小平:そうですね。あとは、例えば、上田市内にはシェアサイクリングのための自転車があるので、それが置いてある場所の情報や、バスの位置情報の共有などを一つのサイトに統合することでより見やすくして、上田市を訪れる人が移動しやすくなればと考えています。
 
ーーこのプログラムが終わったあとも見通しているんですね。最後に、それぞれが目指していることなどがあれば、教えてください。
 
石井:このプログラムに参加するまでは、パソコンが好きだからI T企業に就職できたらいいなと漠然と考えていたんですが、利用する側だけではなくて提供する側の視点を考えるのが楽しいなと感じるようになってきて、経営学などを学べる大学なども進路として考えるようになりました。
 
堤:僕は日常の不満を考えるのが楽しくなってきて(笑)。文化祭の待ち時間の見える化を思いついたのも、不満からきているんです。プログラミングがもっと分かりやすかったらいいのにというのが、最近の不満ですね。日本語でこういう風に動作してほしいと言ったら、全部コードを書いてくれる機能がほしいとか。そういう不満を改善していったら、いいビジネスが生まれるのかもしれないと思っています。
 
小平:僕がプログラミングに興味を持ったきっかけは、ゲームを作りたいという夢があるからなんです。いまやっているプログラミング言語はゲームを作るのとはまた別の言語ではあるんですけど、今回の経験を生かして、いつかゲームを作って、エンドロールのところに自分の名前を載せるのが夢です。
 
ーーチームとしてもそれぞれ個人としても、これからが楽しみです!お話を聞かせていただき、ありがとうございました。

取材・文:大宮まり子
 
 
 
 
 


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