【スカラーインタビュー#10】 自分たちがほしいものを、自分たちでつくる。とっておきのイベント情報が集まるポータルサイト開発
今回ご紹介するスカラーは、長野市出身の吉澤尚輝さんです。吉澤さんは、ウェブ制作の仕事と飲食店のオーナーという2つの顔をもっています。そんな吉澤さんが新たに取り組もうとしているポータルサイトの開発についてお話をうかがいました。
地元・長野市で「シーシャ場 円 -en-」をオープン
ーーまずは吉澤さんのプロフィールを教えてください。
長野市出身で、諏訪市で会社員をした後、2020年に地元に戻ってきました。その後は、個人で、エンジニアやデザインどちらもやりながら主にウェブ制作をしています。あとは、長野市権堂で「シーシャ場 円-en-」という水タバコが吸えるカフェの経営もしています。
ーー飲食店の経営もされているんですか!?吉澤さんが長野市に戻られたのは、ちょうど新型コロナ流行の時期ですよね。お店を始めたのもその頃ですか?
オープンしたのは約2年半前なので、コロナ流行のど真ん中の時期ですね。
ーーその時期に飲食店をスタートするのは、大きな決断ですよね。
僕にとってはいいタイミングだと思ったんです。飲食店が減って、新しく入り込む余地ができたので。あとは、自分がいる場所がほしかったので、家を借りるくらいの気持ちで始めました。
ーーもともとシーシャが好きだったのですか?
それは何でもよかったんです。ゆっくりできる場所が欲しいという気持ちがあって……。僕はカフェで3時間いると、コーヒー3杯頼まなくちゃと思ってしまうので、カフェでゆっくり過ごすことがあんまりできないんです。シーシャは2、3時間吸えるので、それ一つだけでそこにいることへの後ろめたさがない。それに吸いながらコミュニケーションが発生しやすい。なので、初めてシーシャを知ったときに、これだなと思いました。
行きたいイベントに出会えるポータルサイト
ーー今回、EACHEDGEではどんなことに取り組んでいるのですか?
長野にはマルシェのようなイベントがたくさんあると思うんですけど、いいイベントでも知らないまま取りこぼしてしまうものが多くて……。そうしたイベント情報がまとまって、わかりやすく更新されているポータルサイトを作ろうとしています。
似たようなサイトは既にあると思いますが、参加者・主催者・出店者の三者に寄り添うサービスを提供することで差別化を図りたいと思っています。参加者は行きたいイベントを探せる。主催者は独自のウェブページを作らずとも告知ができ、このポータルサイトに掲載されていること自体がブランドになる。出店者にとっては応募の仕方がわかりやすく主催者とマッチングできるようなサービスを考えています。
ーー申請すれば、誰でもイベントを掲載できるということですか?
そこは、このサイトにふさわしいかどうかをしっかり吟味したキュレーションが入ります。このサイトは、今後一緒に会社を起こそうとしているデザイナーの友人と二人で運営していくのですが、僕たちが行きたいイベントを載せたいと思っています。自分たちがほしいものを自分たちでつくろう、という思いが最初の動機だったので。
ターゲット層は、ざっくりいうと20代後半から40代前半くらいがボリューム層で、男女の性別は問わず、カルチャーに興味を持って、知的好奇心のある人をイメージしています。
ーー自分たちがほしいものから、アイデアが生まれているんですね。
そうですね。イベントは内容が幅広いので、そもそも何を検索していいか分からないことが多いと思うんです。検索させるUIではなく、「こんなのありますよ」「こんなの好きでしょ?」とサジェストするアルゴリズムを考えて、強めに出していきたいなと思っています。
ーーそのポータルサイトを訪問した履歴からおすすめを教えてくれるんですか?
そうですね。そこには会員登録をしてもらわなくてはいけないハードルがあるんですけど、好きなジャンルや過去に行ったイベントの履歴から類推することになります。
これから立ち上げる会社の広告塔として
ーーイベント情報を掲載するウェブサイトは他にもありますが、キュレーションされたおすすめのイベントを教えてくれるウェブサイトは見たことがないです。
そういう形で差別化をはかろうと思っています。ユーザー数は月間1〜3万PVで十分かなと思っています。グロースした段階でどう伸ばしていくかは、やりながら考えていくことになりそうです。
ーービジネスとして成り立たせることを想定しているのですか?
そうですね。ただ、お金を稼ぐことを主軸にすると、いらない機能が増えたり、使いづらくなったりするので……。こうしたポータルサイトは広告収益が主軸になるのですが、ノイズにならないような広告を選定するなどしながら、収益も上げていきたいと思います。
これから立ち上げる会社の一つ目のプロダクトになるので、収益重視というよりは、こうしたものが作れると知ってもらうための広告塔になればと思っているんです。
ーー会社を立ち上げようと思ったきっかけは、何ですか?
今はデザインなどのウェブ制作を請け負っているんですが、その形が苦しくなってきていて、自分たちで事業を持ちたいと思ったのがきっかけですね。
ーー受託仕事の苦しさというと……?
ビジネスをしていく上で、ウェブサイトは最悪いらないじゃないですか。だから、広告費はいちばん最初に削ってもいい部分になってくるんです。
ーー確かに、景気が悪くなると広告宣伝費は減ると聞いたことがあります。
そうなんです。そうなると、最初に仕事がなくなるのが僕らなんです。その形で続けていくのはリスキーだしなという思いもあります。
人と人との繋がりが生まれる場をつくる
ーーこのポータルサイトができれば、「これを作った人と一緒にやりたい」という思いを持った人と仕事ができそうですね。すでに具体的なビジネスの構想がある中で、今回EACHEDGEに応募しようと思ったのは、どうしてですか?
この事業自体はEACHEDGEに通らなくてもやっていたと思うんです。参加した理由としては、自分の背中を押す意味と、新しいことに挑戦していく上でメンターの力を借りられたらいいなという思いもありました。
あとは、イベントはその場所で行われるので地域との繋がりが深い。メンターの方や運営の方でイベント開催が多い地域の方がいらっしゃれば協力が得られたらなとも期待していました。
ーー普段からお仕事でもウェブサイトを制作されていますが、吉澤さんにとって、新しいチャレンジの部分もありますか?
ウェブサイトの構築は今までもやってきたのですが、今回はPythonという新しい言語を勉強して作るので、そこはチャレンジングな部分ですね。
ーー実際に参加してみて、どうでしたか?
この前、初めてメンタリングに行ったんですが、とてもよくしてもらいました。僕が考えていた懸念点やそれに対する対策について、メンターさんも同じことを考えていたので、答え合わせができた感覚がありました。あと、こういう機能も入れたらどうかというような新しい知見もいただけたので、助かっていますね。
ーーここまで順調な印象がありますが、苦労していることはありますか?
新しい言語で構築しようとしているので、どれくらいの規模になるか把握しづらいというのはあります。どんどんやりたいことが出てきてしまって、どこでいったんリリースするかを決めかねていますね。
2月の最終報告会の時点では、管理画面で機能の特徴を説明するくらいになるかもしれませんが、4月頃にはローンチしたいなと思っています。
ーー公開されたら、ぜひ使ってみたいです! 最後に、今後吉澤さんが目指していることを教えてください。
受託事業からの脱却は目標の一つではあるんですが、会社としては宿や飲食店などのリアルな場所をもっとやりたいなと思っています。
自分たちの技術やデザインのスキルをビジネスに生かして使っていきたいなという思いがあります。事業をやることでその事業での成果を認められて、さまざまな業種の方から別事業の経営の相談などを受けられたらと思いますね。
ーーITのお仕事もされていますが、リアルな場をつくっていきたいという思いがあるんですね。
ITの仕事は世界中どこに行ってもできると思うんですが、やっぱり人と人が会って、話して、繋がっていくことに僕はいちばん価値を感じるので、そこからは離れられないというか……。デジタルだけでいいとは、あんまり思えないですね。
ーーそう言われてみると、お店もマルシェのようなイベントも、どちらも人と人との繋がりが生まれる場ですね。これからも吉澤さんがどんな新しいご縁を紡いでいくのか、楽しみです! お話を聞かせていただき、ありがとうございました。