【スカラーインタビュー#7】 ゴルフのスウィング解析ができるアプリケーション開発を目指して
ご紹介するスカラーは、長野県内の製造業で働く古賀祐樹さん。EACH EDGEでは、ゴルフスウィングの解析ができるアプリケーションの開発を目指しています。会社員として日々忙しく働きながら、新たなチャレンジに挑む古賀さんの思いをうかがっていきたいと思います。
製造現場の課題をITで解決するエンジニア
ーーまずは古賀さんのプロフィールを教えていただけますか?
信州大学繊維学部を卒業した後、長野県内の半導体関連の会社で働き始めて6年目です。
ーー会社では、どんなお仕事をされているのですか?
会社ではエンジニアとして品質管理に関する仕事をしています。品質管理の仕事は、製造業にお勤めになったことがないと、ピンと来ないかもしれないですよね。
ーー確かに、品質管理と聞いてもあまりイメージがわかないです……。
世の中に出回っている製品は、壊れることの方が珍しく、使えることが当たり前と思われている方が多いと思うのですが、じつは製造現場ではそうではないんです。世の中にちゃんと動くものを送り出すための努力がたくさんあって、品質管理はそのためにいろいろと頑張る仕事です。
ーーということは、できた製品が機能するように点検したり、トラブルが起きたら解決策を解決したり、課題を見つけて未然に防いだりみたいなことですか?
まさにそうです。日々、問題に直面しながら、その解決を目指しています。
ーー会社員としてのお仕事、けっこう忙しいのではないですか?
そうですね。品質管理は守備範囲が広いんですよ。製造現場では、製品に使う部品や部品を作るための原材料を買うんですけど、その仕入れ先の企業だけでもたくさんあるし、製造工程も長い。品質問題が起きたときには、お客さんに説明する必要もあります。入り口から出口まで全部という感じですね。
スイング解析でゴルフが上達する手助けになるアプリ
ーーお忙しい中で、このEACH EDGEに参加しようと思ったきっかけを教えてください。
仕事ではデータ解析などのI T技術を使うものの、アプリケーションを作った経験は全くなかったので、アプリケーションを作って実社会に出してみたい気持ちがありました。そうしたときに、InstagramでEACH EDGEの募集を見て、経験者の話を聞くことができる機会を提供してもらえると知って、ぜひ挑戦したいなと応募しました。
ーーEACH EDGEで取り組んでいる技術は、古賀さんとしても新しい挑戦なんですね。今回は、どんなアプリケーションを作ろうとしているのですか?
ゴルフスイング解析をして、スイングの特徴や改善点といった解析結果をユーザーに提供するプログラムをつくることを目標にしています。
ーー古賀さんもゴルフのご経験があるんですか?
趣味の一つです。全然うまくないんですけど、好きですね。ゴルフをするにはお金がかかるんですが、なかなか上達しないんです。ゴルフをやっている人はその上達しなさを楽しんでいる側面もあるんじゃないかと……。
ーーそんな楽しみ方をしているんですね!
面白いくらい上達しないんですよ(笑)。でも、みんなうまくなりたいと思っていて、それが楽しいスポーツだと思います。もっと安く、客観的に、うまくなるために使えるデータ解析がないかなと考えていたことが、そもそもアプリケーションを作ってみたいと思ったきっかけです。
ChatGPTを活用し、新しい技術に取り組む
ーー実体験から着想したのですね。もうすぐEACH EDGEとしては折り返し地点ですが、ここまでは独学で勉強しながら作られているんですか?
どのように着想をまとめて全体計画に落としていったらいいか、メンターの藤本先生とお話しながら勉強させてもらいました。一般的な内容は、ChatGPTに助けられています。自分で勉強して1から作ったら数時間かかるようなプログラムでも、一瞬でコードの例を書いてくれます。ChatGPTがなければ、あと5倍は悩んでいると思いますね。
ーーChatGPTを有効活用されているのですね。
データの階層構造をつくるなどの抽象的な部分はChatGPTでは代替できないのですが、具体的なデータを指定した分析モデルに入れて分析するといった、型が決まっているものは、あっという間にやってくれます。
通勤時間に、技術的にここがよくわからないと思うところをChatGPTに質問することもあります。本当は本を読んで勉強したいのですが、車の運転中はそれができないので……。ChatGPTとの会話で疑問が解決することもけっこうありますね。
ーーここまで順調に取り組まれている印象がありますが、苦労したことはありますか?
慣れない言語を勉強しながら作ると、思い通りに動かないことも多くて、「なんでうまくいかないんだろう」と2、3時間が過ぎていくみたいなことはあります。結局、たった1行のコードのエラーで大した原因ではないことも……。でも、プログラミングをやっている以上、誰もが遭遇する場面だと思うので、当然のことかなとも思っています。
ーーEACH EDGEのプログラムは折り返し地点ですが、残りの時間をどう使っていきたいと考えていますか?
アプリケーションを世に出した後、どうマーケティングをするのかという知識がないので、メンターの先生方のお話をぜひお伺いしたいですね。せっかくいいものができても、市場で周知されてユーザーに届けられないと、ビジネスにならないし、作ったものがもったいないですから。
会社だけでは得られなかった出会い
ーーそうした視点は、社会人としてビジネスに関わられてきたからこそ、より意識されているのかもしれないですね。
計画の立て方などは、仕事で納期に追われた社会人経験が生きているかもしれないですね。スカラーには高校生や大学生の方もいるけれど、高校生より大学生の方が計画に戦略があるし、大学生より社会人の方が外に見せることを意識している気がします。それは面白いなと思いました。 でも、高校生でITで問題解決しようという着想に至っている時点ですごい。僕はそんな高校生ではなかったので、その若さで挑戦していることが本当に素晴らしいなと思います。なんか偉そうなこと言っちゃって、ごめんなさい。
ーー偉そうではないですよ! でも、多様な人たちと知り合う機会になったんですね。
こうした場に集まってくる人は、自分のアウトプットを出したいという欲求がある人たちだから、それがまず面白いですよね。こうしたコミュニティに参加したことがなかったので、自分の力を発揮したいという誠実さがある人たちに出会えて、それだけで楽しいです。
自分で起業しているメンターの先生たちのお話を聞いて、会社員では出会えなかった人たちのお話が聞けることが、自分にとっては大きかったです。僕は会社員として同じ会社の同じ部署で6年間働いてきて、ある程度決まった枠組みの中で仕事をしてきたので、すごい方たちがいるんだなと思いました。
ーー会社員ではない働き方にも目が向いているんですか?
そうですね。目指したいなという気持ちはあるんですけど、いまの会社で信頼してもらって任されている仕事もあるので、申し訳ないなって気持ちもあるんですよね。まずは会社員をやりながら、EACH EDGEでいただいた機会を生かして、いろいろやってみたいなと考えています。
ーーアプリケーションを作ってみた先に、どんなことを考えられているのですか?
アプリケーションを作るには資本はいらなくて、スキルとパソコンができてしまう。付加価値のあるものが作れたら仕事が無限にあるなと感じるので、勉強していきたいと思っています。
あとは、僕は教員免許を持っているんですけど、勉強を教えるのが好きというより、若い人が知的活動をして喜んでいるのがめっちゃ嬉しいんですよね。会社に後輩が入ってきて、その人自身が問題解決をしようと考えながら、そのアイデアが実際に解決に問題解決につながって、本人も満足感を得ている姿を見て、その重要性を感じてもいます。そうした体験を子どもたちにも届けられないかなと思っています。
でも、まずは市場にプロダクトを出した経験がないので、アプリケーションをリリースすることからやりたいですね。
ーーお話を聞かせていただき、ありがとうございました。いまの現状にとどまらず、経験を着実に重ねている古賀さん。将来のキャリアを模索しながら、新たな一歩を踏み出した古賀さんの今後の活躍が楽しみです!
取材・文:大宮まり子