【スカラーインタビュー#2】「SNSを活用して長野の魅力を発信したい」
二人目のスカラーは、長野県の魅力を発信するinstagramアカウント「ながちゃ。」を運営する石坂総偲(そうし)さん。石坂さんは、TikTokのフォロワーが1万人を超えたことをきっかけに、高校生でありながらSNS運営コンサル・マーケターとして活動を開始。EACH EDGEでは、SNSを活用した長野の魅力を発信するプロジェクトや、県内の学生がつながる仕組みづくりを目指しています。
自分の知識を生かして、ポテンシャルのある人のサポートをしたい
ーーまず最初に、自己紹介をお願いします。
石坂総偲です。小布施町出身の高校2年生です。普段は高校に通いながら、SNSマーケティング、アカウント運用代行とサポート、コンサルティング、商品設計の事業をしています。
ーー事業を始めたのはいつからですか?
2022年の12月ごろからです。もともと、当時流行っていた恋愛コンテンツの発信でTikTokに参入したら、約半年で1万フォロワー・累計再生回数1000万回を突破したんです。父に話したところ、「仕事にできるんじゃないか」と父の仕事関係の方を紹介してもらい、SNSマーケティングやコンサルの案件をもらうようになりました。
現在は、アパレルの会社と学校法人様のアカウント、自分と同じような地元の魅力を広げる系のアカウント、英語が得意な方のアカウント運用代行・サポートを行っています。
ーーSNS自体はいつから使い始めましたか?
中学2年生からです。SNSで月商1000万円を稼いだ中学生のニュースを見たことがきっかけでした。Tiktokのアカウント運用を始める前は、主にXとNoteを使って自分のアイデアや意見を発信していました。
ーー最初はお父様の紹介でSNSの仕事を始めたという話でしたが、そのほかのクライアントの方々はどういう繋がりで見つけたのですか?
ビジネスパーソン同士を繋げるマッチングアプリ「Yenta」を活用するほか、自分が気になるコンテンツを発信しているSNSアカウントに「僕と一緒にやってみませんか」と直接営業をしています。
ーー営業をかける相手はどうやって選んでいますか?
投稿からあふれ出るポテンシャルを感じ取り、「このままではもったいない」と感じたときです。自分の持っている知識や、動画編集のノウハウ、言葉選びの仕方を活用すれば、このアカウントはもっと伸びるんじゃないかと感じたら、改善方法を提案させてもらっています。
ーー「自分の得意なことを生かして相手をサポートしたい」という思いがあるんですね。高校生でありながら事業をすることの壁を感じたことはありますか?
「高校生」という立場は強みになりつつも弱みになりつつあるなと思います。「高校生なのにすごいね」と褒めてもらう機会ももちろん多いんですが、社会的な信用の面がまだまだ弱いなと感じるときもあります。あとは、日中は学校があるので、時間の制限があることも課題です。
「長野にはなにもない?」地元の魅力を探して発信したい
ーーEACH EDGEプロジェクトに応募しようと思ったのはどうしてですか?
地域の大人と繋がる機会が欲しいと思ったからです。また、事業をやっているとはいえまだ学生の身なので、資金面のサポートが得られることも魅力でした。
ーーEACH EDGEを通じて、石坂さんが実現したいプロジェクトについて教えてください。
現在運営している長野県の魅力を広めるinstagramアカウント「ながちゃ。」の運営を通じ、いろいろな人を巻き込んで長野県を盛り上げていきたいです。
よく、同年代の友達から「長野って、遊ぶところやデートスポットがなくてつまらないよね」という声を聞くんです。自分自身もそう感じている部分があります。でも、なにもないからと東京へ遊びに行くよりも、地元である「長野の魅力」を探して、みんなと一緒に共有した方が楽しいんじゃないかと思うんです。
ーーこれから具体的に作ってみたいコンテンツがあれば教えてください。
まず、「長野の魅力マップ」の本を作ってみたいです。SNSでも情報は得られますが、「所有感」がない。実は自分は、本を買うときは電子書籍より本派なんです。同じ情報でも手応えが違うと思うので、実際に手に取って活用できる紙媒体のコンテンツを作りたいですね。
それから、自分発でコミュニティの輪を広げていきたいです。「ながちゃ。」経由で、現在長野県内の高校生アカウント6つと連携しています。「ながちゃ。」では北信を、提携しているアカウントは、松本・安曇野など南信地域をカバーしているので、そうやって各地に同じ思いを持った提携アカウントを増やして、いずれは長野県全域をカバーしたいです。
ーー石坂さんは、普段の仕事では自分が教える立場にいることが多いと思いますが、EACH EDGEでメンタリングを受けてみた感想はどうですか?
メンタリングを通じて客観的な意見をもらうことで、自分の中の硬くなっていた部分がほぐれていく感覚があります。特定の界隈で情報発信をして、情報を受け取って、というのを繰り返していると、ほかの分野から見た視点がどうしても欠けてくるんです。ほぐしてもらったところから、新しいアイディアが生まれてくることも多いです。
今まで、SNSの運用やマーケティング、コンテンツ作りは戦略的にできていたんですが、自分のアカウント運営に関してはまだどこかふわふわしていた部分がありました。メンタリングを通じてビジョンが明確になったことで、具体的な行動プランを練るようになり、アカウント運用の仕方がぶれなくなったと思います。今後は、どうやって人を巻き込み、プロジェクトをさらに大きくしていくのかを具体的に詰めていきます。
若い世代が活躍しやすい社会を作るために自分ができること
ーー「人を巻き込むこと」を目指しているのはどうしてですか?
僕には、「若い世代が活躍しやすい社会を作りたい」というビジョンがあるんです。ただ自分が情報を発信するだけではなく、人を巻き込むことでなにか魅力を持っている子たちと繋がって、みんなが活躍できる舞台を作りたい。
学校生活を過ごしていく中で、英語がペラペラだとか、歌が上手い、ダンスができるといったスキルや魅力を持っている子たちがいても、活躍できる場が学校の文化祭くらいに限られてしまうのがもったいないなとずっと思っていました。SNSはそういう子たちが学外に出るきっかけになると思うんです。
ーー自分が表に立つというよりは、裏方の方が?
今は、表に出たいという気持ちもめちゃくちゃあります! でも、表に出たい部分と、裏方をやりたい部分は、実は繋がっている気がしていて。コミュニティを大きくしていく上で、まずはリーダーとなる自分が表に立って、尊敬される人になるべきだと思うんです。そこが達成されてからこそ、「人の魅力を伸ばす」という裏方の役割が生きてくるんじゃないかな。
ーー今後事業を進めていく上で、自分の中で大切にしていきたい価値観はありますか?
一番念頭にあるのは、「表でも裏でも尊敬される人でありたい」ということです。最近、SNSで活躍している人に出会える機会が増えてきたのですが、SNS上のキラキラした一面とは違う、あんまり見たくなかったような姿が見えてしまうことがあるんです。
自分が目標としていた人のそういう一面を知り、気持ちが凹んでしまった経験から、自分がこれからインフルエンサーで影響力をつけていく上で、周りの人にはそんな思いをして欲しくないと思うようになりました。どこにいても尊敬される人でありたいです。
ーー最後に、石坂さんが今後チャレンジしてみたいことを教えてください。
学生がいろんな大人と出会える場を作っていきたいです。「所詮学生でしょ」と、大人にちゃんと話を聞いてもらえなかった経験があるので、今の学生は何を考えていて、どんな意見を持っているのかを自分が先頭に立って発信していきたいです。そうしたら、今後ほかの高校生も動きやすくなると思うので。
また、高校生も大学生も、学生のうちに大人と交流する機会がないまま社会に出ていく人が多いと思うんです。大人と話がしたい、話が聞きたいと思っていても、話す機会がなかなかないと感じています。
ーー「大人と話す機会が欲しい」というのは、どういった経験からくる思いですか?
「将来の夢」って、自分の知ってる職業の中でしか決められないじゃないかと感じるんです。たとえば、自分の周りには「将来は先生になりたい」という子が結構います。でも、話を深堀していくと、「教える」ことに興味があるという軸が見えてくる。それなら、選択肢は「学校の先生」に限らないですよね。でも、他の選択肢を知らなければ、「先生になる」しか選べない。
自分も、「学生でもSNSを仕事にできる」と知りませんでしたが、父や大人と話すことでそういう道もあると知ることができました。ほかの学生のみんなにも、いろんな選択をしてきた大人たちの話を聞いて、人生の選択肢を広げていってほしいです。
取材・文:風音