生きた仏

虚ろな仏はかわいた風の中にカラカラ
と音がする。耳を澄ませば空虚な心の
音であった。物の哀れさに何故情けを
知ったのか私は知らないただ月の満ち欠けの変化に気づき、無常な仏の姿が
見えた。ただ変化の中息をした。
呼吸のリズムにのっては哀れみをまき
散らす。気が違った年増女に仏の姿が
見え、ボサツとは女の正体だった。
汚らわしい女の存在が愛を求めた。
それはかわきと飢えで老いてく者に
変化の身を任せた。美しい白髪は仏と
なる兆しで染めても染めても生えてくる
老いの姿。正しい目を持ち澄んだ心は
仏となった証、祝いをこめて赤飯でも
炊こうかと亡き祖母の声がした。
それは空耳であったか、幻聴だったの
か私は気づかなかった。


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