仏の化身

遊女のたわむれに風がそよそよと吹く。
そして藤の花はうなづく。薄化粧が
のり、色めいて、遊女の姿にどこか似
る仕草。遊女のたわむれは風に素直で
うなづく藤の花。華やかすぎもせず、
かすかに色っぽい花はブドウの様に
ぶら下がって咲く。どこかしら琴の音
色が聞こえ、遊女の鳴らす音とみえた。
女は遊び心で風にのる。琴の音を流し
ながら、化粧が少し崩れてしまった。
お粉が汗ばんで、濡れてしまう。
着物は夏でなくとも暑く感じたらしい。
遊女は仏の化身で明るく水のごとく
方円の器に従う。その姿は自由で皆
うらやんで、仏心を求める。
遊女のたわむれは罪におおらかだ。
悟りに近づくために変わり身となって
仏となる。

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