トラブル対応:クラスの小さな事件から考える
学校でのよくある光景の一例
女子児童Bさんの前に少々やんちゃな男子児童Aさんが座っています。授業中、後ろに座るBさんから、「Aさんが消しゴムを投げてきていやなんです」と申し出がありました。このような申し出を受けたとき、まずAさんに心当たりがあるか尋ねてみました。すると、Aさんは「Bさんが先にやってきたんだよ!」と言います。この発言を受けて「Bさん、Aさんにも同じことをしたかな?」と尋ねると、Bさんは表情が曇り、「私は、してません!」と言い張ります。
学校の現場では、こうしたちょっとしたいざこざから大きな問題まで、相手がいる事案の聞き取りをしていると話が嚙み合わないことが日常茶飯事です。
事後対応の重要性
さて、問題はこの後の対応です。実際に先のケースでも、Aさんが同じことをしたかと尋ねた途端、Aさんは表情を変えて自分は悪くないと主張し始めました。ここでAさんの言いなりになると、Bさんは納得しないどころか「なんで俺だけ怒られるんだよ!」とさらに不満を抱くでしょう。
お互いにやり取りをした結果、Aさんが消しゴムを投げたことを相互に理解できるように整理する必要があります。そうした聞き取りを経ずに指導をすると、その後の学級経営にも影響が出ると考えています。
この時は、ゆっくりとBさんと話して、「今、消しゴムを投げてきて嫌なのはよくわかるよ!少しその前の様子も確かめさせてもらいたいけど、話を聞かせてくれるかな?」と声をかけて、一度経過を確かめました。
児童とのやり取り
こうしたケースでは、「俺じゃないよ!」「私は、やってないよ。」「僕だけじゃないよ!」と主張することがよくあります。酷い場合は、黙り込んでその場を逃れようとする子供もいます。子供たちは自分がした悪いことを認めることがなかなかできません。
子どもたちとこうしたやり取りをしながら、したことを素直に認めたうえで話を進めないと、後につながるスムーズな解決が難しくなります。かといって、「やっていない」と言い張る子供とのやり取りは、昨今非常に難しいです。なぜなら、家に帰ってから、「先生からやってないことをやったでしょ!」と詰め寄られたとか、「やったことにさせられた!」と子供たちが嘘をつくからです。これがこじれると、保護者も巻き込んだ問題になり、さらに複雑化する可能性があります。
価値観の共有
今回のケースで言えば、Bさんからの申し出を受け、Aさんと話をしたときに生じた齟齬を注意深く、丁寧に受け止める対応が欠かせません。そして、相互が納得して事実を整理しながらの対応・指導が重要です。
その上で、やったことを素直に認めることを価値づけ、その価値観をクラス全体で共有できるかがポイントになってきます。このポイントをおざなりにすると、様々なケースを解決することが難しくなります。小さな対応もクラスの文化に関わる価値観を醸成するよう意識した指導が重要だと思います。
世の中とのギャップ
とはいえ、現実社会では、悪がまかり通り、やったことを認めて謝罪することが難しくなっています。政治の世界でも、時が経てば忘れ去ることを意識し、やったことを素直に認めることが遠い世界が漂っています。こうした状況の中で、子供たちを教え育て、保護者とやり取りするのは厄介なことです。
ここに児童・生徒指導が困難を極め、学校を真綿で締め上げるような苦しさの一端があるのではないかと感じています。
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