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バリ島~宗教と観光と硬水の島~

リゾート地はもともと興味なく、日本に住んでいたときに行ったことがあったのは母の70歳の記念に行ったハワイくらい。
しかしシンガポール在住中にできるだけ周辺を旅行したい!と思い、日本でも有名なバリに3泊4日で行ってきた。

シンガポールからバリは3時間。バリは東京の2.5倍のサイズと大きく、宿泊エリア候補がいくつかある。
ショッピングよりは寺院等の歴史的建造物・自然に触れたかったため、それらにアクセスの良いウブドを拠点とすることにした。

バリ島地図
(画像引用:https://access.his-j.com/01/A55/sp/recommended/20190522143129.html)


1. ユニークな歴史を感じられるウブド

街並み全体、寺院の一つ一つの建物が楽しい。
もちろんインドネシアなので暑いし、観光客のために交通量が多くてホコリっぽい面はある。
しかし、落ち着いた石造りの寺院は細かで時に面白い彫りが施されている。タイの仏教寺院やヒンドゥー寺院のようにカラフルにペイントされおらず石のままで、日本の仏教寺院に似ていて落ち着く。ただし日本とは違う彫りが施されていて、違いの中に類似性を感じてまた違いを感じて惹きつけられる。
寺院は大きなものから小さなものまでいたるところにある。路地に入れば車通りもなく落ち着いている。個人宅も並んでおり、石造りでデザインも寺院と似ているため個人宅なのか小さな寺院なのか区別がつきにくい。つまり、全体的にワクワクする。

ウブドパレス

色々な表情をした様々な謎の生物の像が寺院のいたるところにあり、見ていて楽しい。

左)Pura Gunung Kawi Sebatu 中央)ウブドパレス 右)Neka Art Museum

水が流れる寺院もあってテンション上がる。Pura Gunung Kawi Sebatuは山の麓にある聖なる水の寺院。山から流れる湧水があり、旅行者も飲める。美味しい。
Tirta Ganggaはインドの聖なる川ガンジス川から名前を取ったかつての王家の水宮殿。

左)Pura Gunung Kawi Sebatu 右)Tirta Gangga  

この割れ門は街中にもあり、バリでよく見かける造形。
上部がなく、入口部分をくっつけたら縦長の三角形になる。
果たしてこれは開こうとしているのか閉まるのか。

左)天国の門として有名なランプヤン寺院 中央) 右)ブサキ寺院

観光客は欧米系が多い。ジュリア・ロバーツ主演の「食べて祈って恋をして」(2010)の舞台はイタリア、インド、そしてバリだった。当時は思い至らなかったが、欧米はバリに魅力的な連想イメージがあるんだろう。
Pura Tirta寺院で霊的体験のために列をなしていたのもほとんどが欧米系旅行者にみえる人たちだった。

Pura Tirta寺院

遡ってのきっかけはオランダ植民地時代の1920年代頃からオランダ政府によって実施されたバリの真正な文化保護政策のようだ。第二次世界大戦前までは「最後の楽園」としてのイメージが欧米に紹介され、欧米の芸術家も来航し観光客も多かったようだ。
18‐19世紀に日本がジャポニズムとかなんとかで欧米に紹介され、”オリエンタリズム”と後に批判されたような日本のイメージが形成されたのと経緯は類似しているのかもしれない。

美術館も市街地に2つ。Puri Lukisan美術館とNeka美術館。展示物だけでなく建物も敷地全体も文化が感じられて楽しい。

Neka Art Museum の著名な絵。確かに目をひかれる。
Puri Lukisan美術館はウブドの街中なのにゆったりした空間が広がっている。癒される。

一方、他の東南アジアの旅行先のように東アジア系を見かけなかった。タクシードライバーにきいたら「中国人はこういうところには興味ないんだ、クタまでだよ」と言っていた。他のソースからは、コロナ前は中国人の観光客はかなり多かったという話もある。コロナにより恐らく人流が変わったのだろう。

2. 圧倒的に完成された観光地、ライステラス

2012年にジャティルイがユネスコ世界遺産に登録されて以来か、バリのライステラスは観光スポットだ。
私たちが訪問したのはCeking。ジャティルイがウブドから車で90分なのに対し、Cekingは30分と近場。ジャティルイのほうが美しいのかもしれないが、バリの旅行は目的地までの移動距離が長いことも多いため、妥協してこちらという観光客も多いのではないかと推測。

Cekingは、すごかった。もちろん棚田は美しかったが、それ以上に印象的だったのが、観光地として圧倒的に完成していたこと。
農業時の天秤棒に帽子、さらにバリを象徴する赤い花がオシャレな感じで置かれていた。花なんて実用的には意味がない。ライステラスを背景に写真映えする感じで配置されており、場の雰囲気を美しくしていた。自然ではないが、絵のような風景。観光スポットがさらに魅力的になるような精進がすごい。
日本の白川郷を思い出した。あそこもそれだけでとても美しい村だが、さらに磨く余地はありそうだ。

3. 宿泊施設のコスパは素晴らしい

レビュースコアの高いヴィラタイプのホテルが一万円+αでごろごろしている。
私たちが泊ったのはウブドの市街地にある Wana Buca Villas でヴィラタイプ。1泊1部屋1万2千円だった。
半屋外のバスタブと屋外のプール付きで、屋内もゆったりとしている。
スタッフさんのホスピタリティも高く、話している感じも良い。

左)ヴィラのベッド 右)ベッドの上のウエルカムフラワー
左)ヴィラに付属のプライベートプール 右)ヴィラ内の小道

1つだけ不満があるのはバスタブ。石でゴツゴツしておりリラックスできる感じではない。お湯は熱さが不安定。そしてこれはどうしようもないが、硬水。髪はきしみ、肌は喜んでないのが感じられた。乗り越えられない壁。

4. 移動時間には要注意

ウブド周辺は問題ないが、空港周辺はメチャメチャ混む。
最終日に空港に行って荷物を置いてから空港から10分のクタに行こうとしたのだが、混みすぎててタクシーが空港に来られない。全然来ないし途中でキャンセルされたりで、3台目でようやく到着。結局空港着いてからクタに着くまで1時間近くかかった。空港周辺は要注意。

さらに、バリ島自体が東京都の2.5倍の大きさ、かつ観光名所がちらばっているため、全部見て回るには時間がかかる。
私たちはウブドを拠点としたが、そこから有名なヘブンズゲートに行くには東に車で2時間半、タナロットに行くには西に来るまで1時間20分。疲れちゃう。

5. 食事は個人的に全体的に残念

タイ・ベトナムレベルを期待していたが全然及ばなかった。
例えばフルーツが美味しくない。フレッシュジュースのオレンジ、パイナップル、ウォーターメロン。ホーチミンやタイは驚くほど甘味もうまみもあり美味しいが、バリは薄いか酸っぱい。水が硬水だし、土壌が違うのかと推察している。
食事全般も、うまみが少なくあっさりしている印象。
以下が食事先一覧。基本的に観光者向けでローカルの人がいるな~と思ったのはスタバくらい。

■ STARBUCKS
空港のラテが、タイ・ベトナム・マレーシア・香港よりおいしい。
よい牛乳(Green Fieldとか)使ってるからかも。
それでも日本の方が美味しいが。東南アジアでどこかないか日本と同じレベルのスタバ。

■ Daily Baguett
ベトナムフランスパンにチーズ、ハム、トマトでマヨあえした感じ。バターを使ってない感じ。

■ Cafe Wayan
クラシックなインドネシア料理を食べておこうということで訪問。
取り立ててまずくないけど、美味しくもないという記憶のみが残っている。
あとフルーツジュースが美味しくなかったこと。

■ Namaskara Coffee & Superfoods
ヴィーガン・ベジタリアンフード。私はナシアヤムを食べたが、これは美味しかった。各パートの食材が全体で調和するように味付けられていた。味の濃さは強すぎず弱すぎずちょうどよい塩梅。

■ Warung Ovet
ジェノベーゼは味なし。
シーフードピザは生地が薄いけどパリパリ、チーズもソースも良いのだが、たこなどのシーフードが水っぽくて残念。

■ BUKIT GANGGA
ナシレマ食べた。悪くなかった。

■ Ivy Café
TripAdvisor総合3位の実力。おしゃれカフェ。今回食べた中で一番美味しかった。ただし、値段も一番高かった。

■ Blend Cafe Ubud
おしゃれアサイーボールの店。ビジュアルだけかと思ったら、味もちゃんとしていた。食感のバランスが良い感じでフルーツやシード、シリアルが中に入っている。ちょうどよい甘さでよい。

■ Living stone
工場用に建てられたのかな、というくらいの高い天井。クロワッサンセットとアイスラテをオーダー。
Ivy Cafeと同じレベル感で美味しかったが、Ivy Cafeと同じレベル感で高かった。

6. バリローカルの人々の生活とは…?

バリの人々はかなりの時間を宗教関連のことに費やしているように見える。たとえば毎朝供えるというチャナン。
各家には敷地内に家寺があり、その儀式。もちろん地域レベルの寺があり、その儀式。とても大変そう。

一方で、バリ島の経済のドライバーは観光業である。観光としてのバリの魅力は自然と文化であり、文化とは宗教を中心に回る慣習・儀式、寺院等の建物だと思う。
おそらく、以前から多くの欧米の観光者が押し寄せてくる中で、文化が”発見”され、それが外部の影響を受けて多少変容しながらバリの文化として”再インストール”された、さらに経済資源である観光業の主要な要素であることが、慣習の維持のための間接的なモチベーションになって再生産されている。という、日本にもある伝統文化の再発見型であり、それが継続的な外部からの視点(=観光客)と経済的モチベーションがかけあわさって変容しながらも維持されているパターンではないかと思ったりします。
日本も観光がメジャーな産業になる中で、同じような事象が起きるのだろうか。

おわりに

旅行先としてのバリの感想は、惜しい!
バリは良い素材が揃っている。歴史も自然も観光客受けする。ホテルやレストランの接客等のレベルも高い。ホテルも手頃。ウブドは山中だがクタ等の海岸沿いに行けば美しいビーチがある。

クタビーチでバルシャーク

しかし、私にとって大切な食べ物と水がよくなかった。ここは大幅減点。
加えて、広いがゆえに観光するための移動時間が長すぎるので、「この場所行ってみたいな」となっても車に乗る時間を考えるとモチベが一瞬で萎える。例えばウブドから天国の門で有名なランプヤン寺院には車で片道2時間半かかる。途中観光スポットに立ち寄りながら往復するにしても、車での移動時間がとても長い。
色々な場所に寄って各箇所でアクティビティしながら時間をかけて移動するツアープランが楽しいのかもしれない。

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