明治7年を舞台に、国の土台を築こうと「全国統一話し言葉」を制定しようとする南郷清之輔を主人公とした戯曲です。
南郷家には様々なお国訛りをしゃべる人たちが集まってくるのですが、そのバラエティたるや、まるで明治時代の「日の本のお国の縮図」ともいえるような設定となっています。
登場する主な言葉と登場人物は以下の通り
明治という時代にあって、新政府側から旧幕府側まで様々な背景を彷彿とさせる地域の言葉が網羅されています。
では、それぞれの人物が勝ち組と負け組のように描き分けられていくのか……というと、皆が何らかの失敗をしていき、完全なる勝者というのがいないのが特徴的な作品で、主人公の清之輔すら、「全国統一話し言葉」作りに失敗します。おそらく作者は、西洋文明を盲目的に取り入れ、また闇雲に国民を一色にしていこうとする明治の日本という国そのものにもの申す近代小説を、戯曲として作り上げたのだろうと感じました。
ともかく、これらの言葉が音声となって飛び交う舞台を想像すると、まさに混沌……で、明治の世の象徴としか思えません。また、登場人物達の中で、強盗という一番底辺の者として描かれているように見える若林虎三郎が、誰よりも物事の本質をついた様々な反対意見を述べる役割を担わされているのも、皮肉にも面白い戯曲だなと感じました。