見出し画像

森博嗣『すべてがFになる』『封印再度』『有限と微小のパン』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2021.10.03 Sunday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

工学博士でありなら、数多くのシリーズを出されている森博嗣さん。私自身は初読みですが、ドラマ化やアニメ化もされている森さんのデビュー作で第1回メフィスト賞を受賞した『すべてがFになる』を含む「S&Mシリーズ」の中から3冊をピックアップしました(ドラマ化の際の綾野剛さんが表紙になったものを選んだだけという話も……@笑)。これがちょうど、シリーズの初め『すべてがFになる』とラスト『有限と微小のパン』とが含まれていて、しかも『F』と『パン』の2冊は、天才・真賀田四季が出てくる作品となっていて、図らずもシリーズとしては外せない3冊だったとわかり、満足のチョイス(!?)でした(笑)

3冊ともに、共通するのは密室殺人。主人公の大学助教授の犀川創平と学生の西之園萌絵が、密室殺人の謎に迫っていくのですが、いわゆるミステリィの謎解きの面白さ以上に特徴的に感じたのが、犀川を通して描かれていく人生観とか死生観を含む思想的なものでした。

科学とは、現実とは、虚構とは、言語とは、思考とは、存在とは、人間とは、自分とは……。

シリーズを重ねるにつれ、根底にある思想のようなものが深まっていき、ストーリーでないところで何を見せてくれるのだろう……とういう期待感で引っ張られていきました。理系ミステリィならではのロジカルな思考と、形而上的な思想との配合が絶妙で、そこを一番面白く読みました。

主人公の犀川が助教授ということもあり、なんだか勝手に犀川に作者の森さんを重ねて読んでしまっていたのですが……、ほかのシリーズはどんな読み心地なのだろう……と興味を引かれました。特に、今回登場していた真賀田四季が主人公の「四季シリーズ」は気になって仕方がありません。ぜひとも手に取ってみたいと思っています。