原研哉『デザインのデザイン』
高等学校の「国語総合」の教科書に収録されているグラフィックデザイナー・原研哉さんの評論「白」。日本人の文化の美意識の原点に触れられる評論で、大変面白く、また興味深く、生徒たちにとっても実生活に引き寄せて考えさせられた教材でした。
その原研哉さんがデザインを語り、サントリー学芸賞を受賞したのが本書です。原さんならではのデザイン論に加え、実際に原さんが手がけられた具体的なデザインが写真入りで紹介されていて、門外漢でもとても理解しやすくなっています。例えば、原さんがボード・メンバーとして関わっている「無印良品」のアートディレクションのコンセプトなどについても、第四章「なにもないがすべてある」で一章を割いて語られています。
新奇なものをつくり出すだけが創造性ではなく、「見慣れたものを未知なるものとして再発見できる」ようデザインすることは、無から有を生み出すのと同じく創造的であり、それが、「ものと人との関係を豊かにすること」に繋がるというデザイン論。その価値に気付かずに蓄積された膨大な文化を未使用の資源として活用すること、自分たちの文化の美点や独自性を相対化し、熟成した文化圏としてのエレガンスを生み出そうとする姿勢が貫かれていて、それは「たたずまい」という表現にも象徴されるようです。「叡智は自然の側にあり人間はそれを汲み取って生きていると考えてきた」日本人独特の感性も思い出させてくれる一冊です。