岸見 一郎、古賀 史健『幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教えII 』
昨日に引き続きアドラーです。
『幸せになる勇気』は、『嫌われる勇気』の問答でアドラーの思想に感化された青年が、3年後にもう一度哲人を尋ねるところから始まる続編です。青年は、「価値観を揺さぶられ、曇っていた空が開け、人生が変わったような気にさせられる。非の打ち所がない、世界の真理さえ思え」たアドラーの思想が、「現実世界では、空虚な理想論」で、「害悪をもたらす危険思想」だったと息巻いて登場し、また二人の問答が始まります。続編では、「具体的にどのように歩んでいけばいいのか」、「抽象ではなく、具体の話を。理論ではなく、実践の話を。理想ではなく、現実の話」が語られていくことになります。
具体的に展開されていくのは、アドラーの教えに感動して、教育者として子どもたちに教えを届けようと図書館司書を辞めて中学校の教員になった青年の直面している問題です。「ほめてはいけない、叱ってもいけない」というアドラーの教育方針で張り切っていたものの、その方針では教室の統制をとることができなくなってしまったという青年。実際に彼は教室でどうずればよかったのか……。アドラーの理論はもちろん変わらないのですが、哲人との問答を通して、青年がアドラーを理解しきれていなかった部分と、教えを実践することの難しさが浮かび上がってきます。
教育現場の問題ということもあり、問題行動を起こすときの5段階の心理状態なども詳しく語られ、興味深く読みました。最終的に、青年の反論に答えていく二人の問答は、「尊敬」「愛」「自立」といった議論に到達していきます。しかも、この「愛」や「自立」、さらには「幸せ」といったものが、アドラー流の解釈を与えられていき、自分(わたし)ではなく「わたしたち」を主語に生きるというところまでつながっていきます。
詳細は読んでいただくしかありませんが、「いま」を誠実に生きていきながら、ありのままの私として「シンプル」にあり続けるしかない、と感じました。最後に、私が個人的に印象に残った文章を……。