えんた と えんた
僕は「バガボンド」が好きだ。
天下無双を追い求める
宮本武蔵の成長を描いた漫画である。
井上雄彦のおりなす
大胆かつ繊細に描かれた墨絵と
選び抜かれた言葉によって
表現された武蔵の精神的葛藤が
本作の魅力であるが、
この葛藤がタイトルにまで
影響を与えることになるとは
思いもしなかった。
21巻からタイトル「バガボンド」
のフォント(形)が変わるのである。
こんな連載漫画を見たことがない。
20巻までの荒々しい獣のような
「バガボンド」が、
21巻からは、丸みを帯びながらも鋭い
「バガボンド」に変わるのだ。
師との出会いが、
武蔵の天下無双に対する
認識を大きく変えたのである。
「バガボンド」
- 放浪者。
20巻以前と21巻以後で
タイトルの言葉は変わらない。
変わったのはフォント(形)である。
この変化が武蔵の精神的な成長を
読み手に伝えるのである。
本記事
「えんた と えんた」の扉絵で
「前のぼく と 今のぼく」を
異なるフォント(形)であらわした。
ここではあえて説明しない。
形の持つ意味を想像してほしい。
形との対話を体験してほしい。