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【教育】学校組織づくりについて考える③
今回は組織づくりの最後の柱である「コミュニケーション」についてお伝えします。
コミュニケーションと聞くと、色んな人と会話することと思われると思いますが、それだけではありません。経営学ではコミュニケーションは組織図によって表されます。
学校現場は「なべぶた型組織」と表されますね。一方で他の組織は「官僚制組織」と表されます。まずは、その違いについて考えてみましょう。」
コミュニケーション
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組織図を見てください。左が学校のなべぶた型の組織図になります。経営学のコミュニケーションとは「単に会話をする」ことではなく、組織図の上から下へ、下から上へ、そして横同士で情報共有がきちんとされたり意思の疎通が図られたりすることを意味します。
官僚制組織となべぶた型組織
官僚制組織はピラミッド型組織とも呼ばれ、下(現業職)から上(管理職)の方向へ流れるコミュニケーションは簡単ではありません。例えば、何か問題が生じて他会社から連絡があったとしましょう。その電話を受ける人は、現業職(一般社員)になります。現業職から社長へ連絡することはありません。その内容は上司へと伝えられ、対応について話し合われることになります。そこで解決できない場合はさらに上がっていく。つまり、苦情などは現業職が受けますが、対応するのは別の人だということですね
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引用:https://supe-rior-media.com/startup/1102/
一方、学校は違います。苦情を引き受けるのも対応するのも、教諭です。対応した内容をいきなり校長先生へ伝えにいくということもあります。他にも、隣のAクラスで問題が起こった場合、Bクラスの先生は「Aクラスのことだから私には関係ない」とはならない時点で、官僚制とは異なります。官僚制は「他の部署のことは他の部署のこと」として捉えるからです。
学校組織はミドルリーダーがまだまだ足りない(しかもミドルリーダーの仕事は多すぎる)というのが現状です。官僚制組織では上のピラミッドのように細分化され,仕事の中身も主任,係長,課長とそれぞれ違います。しかし学校はというと,分掌部長などいくつか仕事はありますが,その枠には誰もが入る可能性があるわけです。教諭間のコミュニケーションは意識的に密にしてお互いの仕事内容も知っておかなければならないということがわかります。学校は教職員間のコミュニケーションが図りにくい構造ではありますが、だからこそ教職員の一人ひとりが組織の目的に向かって自ら取り組む(マネジメント・マインド)姿勢が必要となってきます。
コミュニケーションの図り方
それでは、どのようにしてコミュニケーションを図ることができるのかについて、学校の例を一つ挙げてみたいと思います。
4月に職員会議があると思います。その時に新転任の方々とコミュニケーションを図ることができているでしょうか?職員会議のはじめには、学校の共通目的となる教育の指針などが発表されると思いますが、「その目的はどのような経緯で立てられたものなのか」を伝える必要がありますし、各分掌から出る重点目標などについても同様で、経緯から伝える必要があると思います。年度末反省で確認された過去の決定事項についても、新転任者が追体験できるような工夫が必要です。会議資料について「例年のように」と説明してしまっては、コミュニケーションを図ることはできません。新転任者が「よく分からないから、自分のやり方でやろう」と個人事業主路線へと入ってしまうと、組織的な働きはできなくなります。
一方で、このことについては転任者からもコミュニケーションを図っていくべき点だといえます。「この子ども像は、どのような像なのか」「どういう経緯で立てられた目標なのか」「具体的に私はどういうことをめざして授業をしていけばよいのか」など、気になることは確認をした方がよいと思います。組織の目的達成に関わるコミュニケーションに「自分が絡んでいる」という実感を、みんなで持つことが大切です。
組織づくり(まとめ)
学校の児童・生徒の実態はどうなのか?その子どもたちに,どういう力をつけて欲しいのか?そういうところから学校教育目標(目的)が作成されることになります。実態から作られるわけですから,学校教育目標が何年も同じままであるということは基本的にありません。
4月に入ってから学校教育目標決めるということは,難しいと思います。ですから,それは前年度の時点で決めておき,4月からはその目的を達成させるために様々な目標を立てることになります。実質,学校は目標に向かって頑張るということになりますね。その目標が決定したら,年間を通したPDCAサイクルで行うのではなく,修正は適宜加えながら進めていくことになるでしょう。
なべぶた型組織と官僚制組織の大きな違いはなんでしょうか?学校と会社の違いで考えるとわかりやすいかもしれません。官僚制組織のピラミッド例
にも示したように,会社は仕事が細分化されています。例えば係長のポストが何らかの理由で突然空いてしまったとしても,そこへ一般社員が入ることは構造上ありません。一般社員の人が「来年は部長を担ってもらいます」といわれることもありません。しかし,なべぶた型組織(学校)は違います。例えば担任,主任,分掌部長などのポストが急に空いてしまった時,代わりに誰かがそのポストを担うことになります。年度末に,「来年は分掌部長を担ってもらいたい」と言われることもあります。つまり,例えどのポストであっても,誰もがその仕事を担う可能性があるといえます。
誰でも仕事を担う可能性はありますが,誰もがその仕事を得意としているわけではありません。「他の仕事量を減らしてあげるから」と言われても,不得意な分野であれば心の負担は減らないでしょう。そのため,教職員間でどれだけ普段からコミュニケーションを図り,お互いのことを知ろうとしているかが重要となってきます。極端な話,同僚の先生方の得意な分野や興味を抱いている分野,好きな食べ物など,何人の先生方について知っているでしょうか。縦と横がよりつながることができる仕組みが,職員室内にあるといいかもしれません。
学校の中でめざす子ども像を達成させるために,新たな取り組みをすることになったとします。その時に,「誰が担当するのか?」という話になると思いますが,そういう視点から入ってしまうと担当者だけが取り組む,いわば個人化された仕事になってしまいます。大切なのは「その取り組みを通してどんな子どもたちを育てたいのか」という話し合いから始めることです。ここから始めることにより,この取り組みに至るまでの過程から考えて議論できますし,「○○先生の授業でこんなことしていたよ」「○学年でこの前していた取り組みの内容が合うと思うから,どうやって計画したのか聞いてみよう」「○小学校(中学校)の先生が似たような取り組みをしたって聞いたことあるよ」という流れから,みんなで取り組む雰囲気ができるかもしれません。こういう話し合いができるためには,先に伝えたコミュニケーションを通して教職員間でお互いを知っておく必要があるという話へとつながります。実際に話を進めていくと,「この分野は前にしたことあるからやってみます」と仕事が分担できたり,実際に取り組んでみると,「意外に上手くいった」という達成感(誘因)を得たりして,さらに高みをめざした取り組みになっていくのではないでしょうか。
今年度,様々な取り組みをされてきたと思います。新たな課題も見つかり,次年度へ引き継ぐ内容も出始めてきた頃かと思います。4月に入ったら,それらの経緯も踏まえて新転任者に伝え,みんなで共通理解を図りなが進めていくことが,学校の組織づくりの一歩となると思います。
さいごに
学んだことを全て書くことはできませんでしたが,学校の組織づくりのヒントになれば幸いに思います。カリキュラム・マネジメントが謳われていますが,その前にあるのが組織づくりです。ここでは触れませんが,まずは「教師力」と「学校力」を高めていく必要があります。
教員間のコミュニケーションを図るには小学校より中学校の方がより難しい(高等学校はさらに難しい)と学びました。どうしたらお互いをもっと知ることができるでしょうか?個人的な意見ですが,子どもたちに書かせる自己紹介カードのように,教職員も4月に自己紹介カードを書いて,みんなで共有するのはどうでしょう?好きなことや趣味のほかに,「なぜ教師をめざしたのか?」など,楽しく交流できる項目があるとよいかもしれません。
この記事をご覧になった皆さんのアイデアもぜひ,教えて頂きたいです!!