【教育】学級通信の作り方とその内容①
私が教員になった初年度は、中学1年生を担任しました。入学式までの1週間は慌ただしく過ぎ去り、混乱する私の心の支えとなってくれたのは隣の席に座っていた同じ学年を担任する先輩教員でした。その先輩がはじめに取りかかっていたのが、学級通信の作成です。とにかく分からないことだらけで先輩の真似をすることで必死だった私は、「どうやら学級通信というものを書く必要があるようだ」と思い、先輩の書いたものを見本として書き始めたのが、学級通信との出会でした。
生徒が登校するようになり、気づけば夜遅くまで職員室にいるのが常態化しました。日々英語の準備が間に合っていなかった私が「今日もやっと明日の準備ができる」と職員室の自席に腰を下ろしたとき、私の隣にいた先輩は学級通信を作成していました。「どうしてそんなに通信が書けるのですか」と問うと、「通信の大切さは書き続けることで気づくことができるよ」と返ってきました。それを聞いた私はとにかく書き続け、1年で200日中150日くらい発行できました。ですが、その書き続けた学級通信も、1年目はあまり読まれずに教室の床に捨てられたりしたことがあった。紙飛行機になっているのも見ましたし、くしゃくしゃで捨てられているのもありました。「なぜあの先生の学級通信は捨てられないのか?」。保護者からは「先生の通信にはよいことは載っているけど、クラスの実態はあまり載っていませんね。」といった厳しいご指摘を受けたこともあります。色んな失敗を経験したものの、先輩の「書き続けることで気づくことができる」という言葉を信じ、色んな先生からアドバイスを頂きながら学級通信を書き続けました。今では、学級通信は私の学級づくりには欠かせないものとなりました。ですが、日々忙しい教育現場でなかなか学級通信を書き続けられる先生は少ないですよね。私に摂っては学級経営には欠かすことができないツールなので、新しく教員になった先生方にもメッセージを込めながら、学級通信の書き方やその役割などにも触れながら書いてみようと思います。
学級通信で構築すべき6パターンの人間関係
学級通信は児童・生徒(以下、子どもとします)へ向けて書くだけではなく、それと同時に必ず保護者へ向けて書いているという意識を忘れてはだめだと思います。学級通信は、子どもに連絡事項や先生からのメッセージなどを伝える場であると同時に、保護者にとっては学級の雰囲気や授業の様子など、普段見ることができない我が子の過ごす学校について知ることができる大切な情報収集の場でもあるのです。書く際には丁寧な言葉遣いを心がけ、子どもの呼称(あだ名や呼び捨てではなく、「〇〇さん」とする)などにも気をつけたいところですね。
学級通信には、上記したように①教師と子ども、②教師と保護者の関係をつなぐものですが、本当はもっともっと役割があると思っています。①②に加えて、学級通信は③子ども同士、④子どもとその保護者、⑤保護者と保護者、さらには⑥教師と教師をもつなぐものかなと思います。この6パターンの関係性を視点に持つことで、色んな人に気にかけてもらえるような学級づくりができるようになりました。
子どもたちが読みたいと思える学級通信
書くからには読んでほしいと誰しもが思いますよね。ただし、教師側の「よいクラスにしたい」という気持ちばかりが先行して、教師の熱すぎるメッセージやお説教のような内容ばかりでは、読まずに床へ捨てられることにもなります。私の失敗談です。笑
では、子ども達が読みたいと思う学級通信とはどのようなものでしょうか。それは自分たちのことが載っていたり、みんなが知らない友達の一面が載っていたりするものではないかと思います。
私はこのように考えて、子ども達の一人ひとりのことを学級通信に載せようと決め、「今日はこの子のよいところを見つける」と、よいとこみつけに日々取り組むことから始めました。ポケットにはメモ帳を忍ばせ、「毎日、ひとり以上のよいところを見つけること」を目標に過ごしました。床に落ちたものを拾ってあげることもよいところであるし、「給食当番を代わってあげる」と言ってあげられるのもよいところです。なんでもない日常を観察するだけなのですが、私が言いたいことはこの「ひとり」を決めなければ、全ての子どもを意識的に見ることができないということです。特に初任のころは、通知表の所見を書く際にスラスラと書ける子もいれば、なかなか思いつかずに考えることを後回しにする子もいました。これは教員あるあるではないでしょうか。何日も教室で一緒の時間を過ごしながらも、「考えなければよいところが思いつかない」ということに担任としてはどうなのかと情けなく感じたことを覚えています。職員室で先生方の話に挙がる名前もまた、活発な子どもばかりであったりします。そういう経験が、一日ひとりの「よいとこみつけ」を始めたきっかけでした。この取り組みを続けてきたこともあって、何年かした時には所見に書きたいことが多すぎて、字数制限内に収めることが大変だった記憶があります。
この視点が育つと、学級通信には子ども達の作品や班ノートの内容に加えて、一人ひとりのよいところをたくさん載せることができるようになりました。子どもの名前は目に止まるよう必ず太字で記載すると良いでしょう。子ども達にとって自分のよいところが載ることは誇らしいですし、内心では「お家の人にも見てもらいたい」と思っていて、恥ずかしがって保護者に見せない子どももいるのですが、保護者同士の会話で話題に挙がることもありました。最近ではSNSの普及で、保護者同士がつながっていることも多いですので、学級通信が話題の一つになることは、先ほどの「⑤保護者と保護者」を結ぶきっかけになっているといういことですよね。
よいとこみつけをする際、内向的でなかなか前へ出られない子には、私はあえて役割や仕事を与えました。それを快諾してくれる様子や一生懸命取り組んでくれたことを、私はまた学級通信で子どもたちへと返しました。集団行動を苦手とする子に対してもこの方法でアプローチできますし、後々に知るのですが、QU調査では「承認されている」という方向に進み、学級が良い方向へ進んだことが何度もありました。子どもにお願いをしてやってもらってから、「とても助かった。どうもありがとう」と伝え、「こんないいところがあるんだよ」と通信で伝えることでも、その子の自信やモチベーションに繋がっているのかなと思います。
学級通信は終礼時に、必ず私自身が読み上げました。この時、クラスの友達のよいところを読み上げると、拍手が起こったり会話や笑顔が生まれたりしました。この様子を見て、「私も頑張ろう」と思う子がいるのは私にとって嬉しいことですし、この取り組みが少しでも子ども達の居場所づくりになっていればなお嬉しいなと思います。
こだわりたい学級通信の作成ポイント
先に書いたように子どもの名前を太字にして目立つようにすることや、読みやすい行間、文字の大きさ、字体などにはこだわりたいところです。見る側が「見やすい」と思えないと、読みません。季節感のある話や子ども達の写真などを載せるのもいいですよね。また、通信名にもこだわりたいところです。通信名は先生の思いがこもっていますから。ちなみに私は1年生がLeaders(リーダーズ)、2年生はYou&Me日和(ユメビヨリ)、3年生にMate(メイト)と決めていて、これらには私なりの思いがあります。
その他にもこだわりたい部分がありますので、学級通信を発行するにあたって私自身が特に留意している部分を、以下の4点でお伝えします。
作品や写真の掲載数に気をつける。
子どもの写真はたくさん載せたいと書きましたが、私は毎回写真に載せている回数や班ノートを掲載した数など、教務必携にメモするよう心掛けて今いた。気を配らなければ、必ず掲載数に偏りが出ると思います。カメラを向けると、わざわざ前へ出てきて撮らせてくれる子っていますよね。そう言う子達の写真は載せやすいんです、画角的に。でも、それではみんなにとってのコミュニケーションツールとはいえません。子どもは敏感に感じとります。
学級通信を書く時間帯に気をつける。
おそらく、先生方が学級通信を書いている時間帯は夜の時間帯ではないでしょうか。私も年間で120~150日は発行していたので、やはり放課後に書くことが大半でした。しかし、夜の時間帯というものは、人の気持ちが高揚する時間帯です。気持ちや思いだけが先行し、一方的に意見を押し付ける内容になっていたり、やや感情的な内容になることがあるということを心に留めておきたいところですね。私は夜に学級通信を書いたとしても、印刷して自席の机上に置いて帰宅し、翌朝出勤した気持ちが冷静な時にチェックをして、それから印刷にかけていました。朝に読むと、「なぜこんなに怒って書いているのだろう」と感じることが何度もありました。客観的に自分の学級通信を見つめ直す時間を意図的に作ることは、教師からの一方的なメッセージで終わる通信を作ってしまうのを防ぐ、一つの手立てだと思います。そういう説教ばかりの通信って、読みたくないんですよね。
発行枚数は無理をしない。
学級通信を作ること自体が目的ではありません。たまに同日に2枚発行すれば、学級通信の番号が2号分増えているのを見ますが、個人的には一日に何枚発行しようとも、号数としては1号とするほうがよいのではないかなと思います。なぜなら号数は、今後の自分の発行した日数の目安になりますし、通信の目的は量ではなく人と人とを繋ぐものだからです。出席日数を超える号数を書いて「これだけ書きました!」と主張されても、私としては「う〜ん・・・」と思ってしまいます。結局それは「発行した枚数」に満足してしまっているわけですよね。
くり返しになりますが、私は枚数を重視するより、例えB5サイズであっても、内容のあるものを継続的に発行することの方が大切だと感じます。メッセージは伝え続けることで子どもにも届きますし、特に保護者には確実に届きますよ。月曜に4枚出して、翌週の月曜日に4枚出した第8号の学級通信より、週に4日間発行し続けた2週間分の第8号の方が、価値があるのではないかな〜。
よいことばかりを書かないこと。
冒頭に保護者からのご指摘について触れたました、よいことばかりを書いても教室の実態とかけ離れていると分かれば、一瞬で学級通信の信頼は失われます。学級で起こっている問題や教師や子どもの思いなどにはきちんと触れ、保護者には現状を正しく知ってもらう必要があると思うのです。情報を出すことによって、心配した保護者から連絡を受けることもあると思います(書き方次第ではあるのですが)。ただ、これは学級通信が双方向のやりとりを促すツールとして機能していると言うことだと思います。保護者が読んでくれているって、とても素敵なことですよね。こうやって一緒に問題について考えてくれる保護者の存在は大きいです。一人ですべてを抱えず、保護者も含めてみんなで学級を見ていくという視点を持って、学級通信を作成するとよいと思います。懇談の時に「通信、毎回楽しみにしています!」「自分の子どもの名前が載っていたら話すきっかけになります!」と言ってもらえたら、頑張って作っていて良かったと思えます。
次回は、(手間はかかるけども)毎回手応えがある記事内容について書いてみようと思います。