想いが吹っ切れた
深夜2時、足が攣って目が覚めた。とても痛かった。足が攣ったときは無理に腱を伸ばしたりせず攣った部分を温め、痛みがおさまるのを静かに待つのがいいらしい。私は攣った足を電気膝かけで包んで温め苦しみ悶えながらおさまるのをじっと待った。
痛みは長く感じる。実際はほんの数分間なんだろう。痛みがなくなり枕元のiPhoneを開くと中野くんからメールが届いていた。
“結婚してるよ。俺はもう絶対会いたくない”
“もう連絡しないで”という内容で文面から同棲する彼女が打ったメールだとすぐわかった。
もうこんなやり取りを何度と繰り返してきた。前回は先月。2人のメールのやり取りが彼女にバレるたびに、別のアカウントで連絡がきて事情を説明され、愛してるからと引き止められ、関係はずるずると続いてきた。
今日届いたメールが今までと違ったのは「結婚してる」と書いてあったこと。これまで何度も彼女が打った怒りのメールを見てきたけど“結婚してる”と言う文字が入っていた事はなかった。
このたった数文字の“結婚している”を見た瞬間何かが吹っ切れた。2人で会っている時に「本当は結婚してるの?」と聞いた事を何度とある。その度に「していない」と聞いていたし、周囲が結婚を期待しているとか中野くんが結婚の良さを分からないとか聞かされ、未婚だと思い込んできた。
私のメールを発見した彼女自身が打ったと思われる“結婚しているから”という返信メールの文字を見て、今までの中野くんに感じていた不安なことが、すとんとどこかに落ちて心がふっと軽くなった気がした。不思議な感覚だった。
なぜそう感じたのか、私はそのメールに対してどんな返信をしたのかは次回に続けます。
ところで、
足が攣るのは本当に痛い。治すには“温める”“静かにおさまるのを待つ”がポイントだそう。3年前に中野くんに同棲する彼女がいるとわかって以来好きな気持ちをずっと大切にしてきた。それなのにその想いが吹っ切れたのは足が攣った後というのがおもしろすぎる。
失恋には痛みが伴なう。そしてその痛みを取るには心を温め静かに待つしかない。待っていればいつの間にか痛みは無くなる。足が攣ったときの治し方と同じだと気付き、恋や愛はスペシャルなものではなく日常なんだと考えてみたりする。
まだ中野くんを想うと胸が痛い。油断すると涙が出てきて困る。まだ完全に吹っ切れてはいないね。