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ウィリアム・モリス「不思議なみずうみの島々」上下巻を読む

魔女という存在

#晶文社 #ファンタジー #ウィリアム・モリス #斉藤兆史 #読書日記 #読書記録

 感想。

 主人公には3人の「親」的存在がいる

①産みの親(産みの母)結果的に金貨で子供を売ったような形になっている

②育ての親 魔女 「育ての親」というより人さらいで人買い。奴隷として主人公を扱う。暴力も振るう。呪いのことばをかけ続ける。悪辣。

③助ける仮親 森の妖精。主人公を助ける存在であって、第二の「育ての親」でもある。主人公が慕い「お母さん」と呼ぶほど。美しい姿をしている主人公にきちんと「あなたは美しい」と言う。貶めたりしない。

 主人公を攫っていった魔女は、『こどもを抑圧し、縛り付け、年頃になったら他の人間に売り払おうとする」いわば『毒親』のような存在にも思える。

 罵って育て、自尊心が育たぬようにし、自分のために働かせ、美しい姿をそうではないものに変え、恩着せがましくて、脅し…モラハラ飛び越えてもうありとあらゆる犯罪。

 筆者のモリスは、ファンタジー世界における舞台装置としての魔女、盗み子、人さらい、軟禁、という設定をしたのでしょうけれど タテから見てもヨコから見てもナナメから見ても毒親。
 日本で言うと明治大正のころのイギリス人が書いた物語。

 主人公の実母はというと、カネをくれるってだけで怪しげな女を家に引き入れて、まんまと我が子を盗られている。後に再会。

 さて分量のある上下巻でしたが読了。登場人物の多さもさることながら、場面転換が頻繁。

なかなかのドロドロ展開

 主人公のバーダロンが超絶美少女ということもあって会う人会う人が彼女に懸想する。
 終盤で借りた家の家主のおっさんも息子達と共に惚れてしまう。

 赤の騎士という悪役の、割とマトモな部下も主人公に惚れる。

恩人の女性の恋人と恋仲になる主人公

 3人のお姉さまがたの恋人のうちの一人と、主人公は惹かれあい結果的に彼女から恋人を略奪するようなテイになる。

 そのあたりは、彼の元々の恋人が牽制したりとなかなかに面白い。


 主人公攫われるor行方不明→奪還の場面が複数回出てくる。

 姫を救い出す騎士が主人公なのではなく、幼い頃から苦労続きの美少女が主人公であるという朝ドラ的「女の半生」でもあるよなーと勝手な解釈。(死ぬまでを書いてるから半生でなくて女の一生か?)

 モリスの描く散文ロマンスの多くの主人公が男性であって、それは作者の投影であろうけれども
 皆から愛され欲される少女という設定の、ある種の過剰さが面白かった。


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