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編集人の京都の朝をぶらぶら◉お盆、夜明けに大文字を眺めると

京都在住の編集人のモリタです。最近は少し観光客で賑わい過ぎの京都ですが、早起きして、じっくり街を歩くと意外な京都が見えてきます。

京都の夏のはじまりを告げるのが7月の祇園祭とすると、夏の終わりは大文字送り火。お盆8月16日の夜、巨大な文字・記号が五箇所の山々に輝きます。今朝は、その中で東山連峰の一角、大文字山の西斜面を火床とする「大文字」を賀茂川と高野川の合流点"鴨川デルタ"から眺めてみました。

まずは東山連峰を広角に眺めると、左右対称に二本の角のようにそびえる、右が大文字山、左は比叡山が印象的に目に入ります。そして二つの山の間に大きな凹地が横たわる様子もわかります。

実はこの地形は恐竜が全盛期だった約9千5百万年前(白亜紀後期)のマグマ活動に由来しています。この時代、後の日本列島は大陸縁部の一部にあり、プレート同士の関係で、海洋の境界部に巨大なマグマ溜まりが形成されていきます。さらに地中でマグマは1000度以上の高熱となり、周囲を変形させていく熱接触変性作用でホルンフェルスという硬質な変性岩を形成していく一方で、マグマ溜まりそのものは、ゆっくり冷えて固まり、花崗岩という岩石をつくりました。

大文字山と比叡山は、ホルンフェルスで硬質なため二本の角のように残り、一方で凹地は花崗岩でホルンフェルスに比べるとはるかに脆いため、長い風化・削剥により、現在の景色を形成していったというわけです。

次に送り火の火床となる大文字山の西斜面を眺めると、垂直に立ち上がる平坦面に見えます。

これは大文字山の山裾に延びる、鹿ケ谷断層の上下運動によって生まれた巨大な地すべり地形によるものらしい。地震により断層付近の尾根が地すべりで崩落してしまい、結果生まれた旧尾根の切断面が三角形の平坦面となりました。

このような地形を三角末端面と呼びますが、「大文字」火床はまさしくその典型例で、この地球のいたずらによりできた場所に、長い歴史を持つ大文字送り火が生まれていったのです。

明日8月16日の夜8時に大文字送り火はおこなわれますが、陽が明るいうちに大文字山を眺めると、地球規模で京都の伝統行事を感じることができるので、そんなお盆最後のひとときはいかがでしょうか。

*この記事は下記の資料を参考にしています。詳しくお知りになりたい方は下記をご覧ください。

参考資料1:ノジュール2022年9月号掲載「大文字の送り火〜伝統行事の地形発達」

参考資料2:京都市青少年科学センターホームページ「大文字山の地学」



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