黄色い髪のブス

昔の私

中学生の頃、決まったお小遣いは無かった
私立の中学校へ行かせてもらってた私はそれじゃあ困る
周りはみんなお嬢様ばっかり
下校途中、みんなで寄り道するにも多少のお金は必要だ

私はお小遣いをもらうため
週末、おじいの植木屋を手伝わせてもらっていた
植木屋というよりも造園屋
お客さんの家へ行って植木の剪定や一から庭を作る仕事

仕事がある日は朝の5時、6時におじいが家まで迎えに来る
おじいの軽トラに乗って仕事場へ向かう

その頃、私はおじいの事が凄く嫌だった
思春期の女の子がお父さんを嫌いになるみたいに

デリカシーの無い発言や、その頃の私には理解出来ない行動や過度な期待、何もかもが嫌だった

それでも、単純にお金は欲しかったし
私が手伝うとおじいが喜んでくれる、喜んでもらいたいっていう気持ちも心の奥底にはあった

最初から最後まで、ずっと不機嫌な顔のまま
おじいの横で作業する

当時、私は所謂ヤンキーになりたかった
ヤンキーの定義はよく分からないし、自ら目指すものでも無い
誰かに言われて、やっとヤンキーだと認められるんじゃないかな？
それでも、私はヤンキーというものに憧れた
親戚の叔父さんが楽しそうに話す昔のエピソードを聞くのが好きだった
叔父さんは誰もが認めるヤンキーだ
一度、その叔父さんに聞いた事がある
"どうやったら、ヤンキーになれる？"

答えはこう

"ヤンキーになるには鼻がとんがってないとなられへん"

私の鼻は丸い

ヤンキーは諦めた

それでも、少しでも
ヤンキーに近づきたくて髪の毛を染めた
黄色い髪

私が髪を染めた事に対して、おじいは何も言わなかったように思う
特に記憶に残っていない

そんな姿でおじいと庭を片付ける

パサパサの黄色い髪、ムッとした表情にそっけない返事
とてもブス
今、思い出すと恥ずかしい事この上なし

庭をキレイにしてくれてありがとうと、お客さんがお茶やお菓子を出してくれる

黄色い髪のブスは
ムッとした表情のままで
いただきます
と言う

おじいはそんな私を見てどんな気持ちだったんだろう

恥ずかしい恥ずかしい

ある日、お客さんの庭に1枚30キロ程の石の板を敷く仕事があった
おじいと一緒に2人で100枚運び込んだ
その頃、おじいはすでに70歳を越えていた
それでも、私よりも早く綺麗に石の板を敷き詰めていく

そんなおじいの姿を学校でみんなに話す
心の底からおじいを尊敬して話す
黄色い髪のブスは笑顔になる

あの頃、おじいの前でもっと素直な姿で過ごせたら
もっと色んな事を2人でできたのに
昔の自分を思い出して後悔する

今、おじいは91歳
相変わらず元気だし、野生で変人だ
私の知らない世界をいっぱい知っている

毎日、ラインを送ってくれるし
会いに行こうと思えば行ける距離

それでも、あの頃のように
毎朝、おじいが家に来ることも、一緒に植木や石を運ぶ事もない

黄色い髪のブスを叱りたい