黄泉路

よみ 黄泉と書く きいろいいずみ?そんなものがあるのだろうか

暗く深い穴を 振り向かず静かに降りていく ずっと下っている ぼぼ、と火の燃える音がする いつの間にか片手に持っていた松明だ
空気は冷え、湿り気を含んで身体にまとわりつく かびのにおい こけのにおい 地べたのにおい そして死んでいく体の臭い
どうしてここに来たのだろうか それでも俺はわかっている このまま静かに降りていくと 降りていくと そこは黄泉なのだ
黄泉の国 根の国 光の届かない地の底で 俺は次の俺になるための手続きをする どうしてかはわからないけれど そんな気がしている
それにしたってあんまり寒い もう死んでいる体なのに 随分冷え切って痛いほどだ
死ぬ、死ぬってなんだ 痛みも苦しみもなくなることじゃあなかったのか もう死んでこの長い道を下っていると思っていたのに まだひょっとして生きているのかしらん
黄泉路を辿る 手元の松明は燃え尽きる様子もなく ただぼぼ、と揺れた 脂の匂いがした

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