とりおる

はじめまして。 息をするために字を書いている。20代。 目標:「すなおに生きる」 好きなこと:歩き回る、読み書きする、食べる、ゲームする

とりおる

はじめまして。 息をするために字を書いている。20代。 目標:「すなおに生きる」 好きなこと:歩き回る、読み書きする、食べる、ゲームする

最近の記事

ががんぼ

電車の床 に 迷い込んだががんぼ みんながわずらわしそうに 足で退(の)ける 大きな羽 細い手足 弱いががんぼ せわしなく羽ばたく とまったががんぼ 踏まれそうで不安だ ぼくは荷物も体裁も投げ出して ががんぼを助けてやりたくなった でも僕だって本当は少し ががんぼがこわい 弱くて何もしないのに ががんぼがこわい  でも踏み殺されるのを黙ってみている方が ずっとこわいので やっぱりががんぼを助けたい 動けず黙ってみていたら 飛び立ったががんぼ ふらりふらりと 車内を飛んでい

    • お前が嫌い(2022/05/09/20:52)

      一定のモチーフを見ると、「お前はこれが好きだろうな」とお前のことを思い浮かべてしまうからお前が嫌いだ。 わたしだって自分として、そのモチーフを愛好していたのに、お前と出会ってお前を知ったせいで、「お前もこれが好きだった」と一つ思考に段階を挟むようになってしまった。 わたしのほうが、お前に干渉される前から、自分として、それが好きだったのに。 だからムカつく。お前がとっても嫌いだ。 わかったような顔で、きっと好きだと思って、と差し出してきたそれはお前が好きなだけで、好きなモチーフ

      • 黄泉路

        よみ 黄泉と書く きいろいいずみ?そんなものがあるのだろうか 暗く深い穴を 振り向かず静かに降りていく ずっと下っている ぼぼ、と火の燃える音がする いつの間にか片手に持っていた松明だ 空気は冷え、湿り気を含んで身体にまとわりつく かびのにおい こけのにおい 地べたのにおい そして死んでいく体の臭い どうしてここに来たのだろうか それでも俺はわかっている このまま静かに降りていくと 降りていくと そこは黄泉なのだ 黄泉の国 根の国 光の届かない地の底で 俺は次の俺になるため

        • いるか

          ひとりぼっちでうたっている 空を見上げてうたっている 波の声 風の声 いるかの声 いるかはうたっている だれに届かなくたって 構わない いるかはとても自由なので 好きなうた 好きなおと 好きなようにうたっている いるかはひとりでうたっている 昼でも夜でも 気が向いたときならば いるかはうたって うたいつづけて うたって うたって いつのまにかいるかのまわりには 色とりどりのあぶくがあふれ いるかのうたはシャボンみたいに きらきら光ってとんでいく

          詩人の死

          一人の詩人が死んだ ある朝、その報せを聞いて ぼろぼろと泣いた 何が変わるわけでもないというのに 詩人が死んだので 詩人の書いたものを読み返そうと思った 家には詩人の本があり それを持って歩いた 適切な間を見つけては その本を開いて詩を読んだ しばらく前に買ったものだが もう知っている詩と まだ読んでいない詩がたくさん載っていた 詩人が生きていても死んでいても 詩は変わらずそこにあり 書かれたまま読まれる日を待っている 詩人は大層たくさん詩を書いたから まだまだいくらで

          無題

          大好きな言葉を書く人がこの世を去った 小さい頃からずっと それと知らぬときからずっと 大好きな人だった そういう人たちはとっくのとうに死んでいるか もうじきに死ぬものであると勝手に思っていたから まだ生きているのだと気づくたびに少し驚いて 嬉しくなっていた この世界はもうあなたのいない世界なのだという 会ったこともない他人なのに それがとてもさびしくて さびしくて 私は朝から泣いている これからもきっと会う予定などなかった けれどもう この世界にはあなたがいないのだと思うと

          僕は自分に何が必要なのかわかっている

          居場所のなさの理由を探る。 おしゃれじゃないから。ノーセットの髪に化粧ひとつ施していない顔。動きやすさと暖かさ以外考えていない服装。社会人としては周囲への配慮に欠けているのだろうか。 話し方が変だから。硬すぎるか無礼すぎるかのどちらかで、言葉の選択が微妙に文語っぽい。そのつもりはないのにどことなく偉ぶっているように聞こえる場合があるし、なんとなく不気味で鼻につく。 あとなにがいけないんだろう。 自分にバツをつけていく。周りが悪いのではない。自分が、欠けている。 今の居場所が良

          僕は自分に何が必要なのかわかっている

          空(2020/06/13/22:04-)

          空の中に生まれた わけではないので 空の中をただ夢想する 薄く透けた雲の間に 天上楽土の幻を 鳥の翼に憧れて 瞬く星に手を伸ばす 空は自らが空であることを知らない 青さも深さも そこに舞う鳥の形も すかされた天体の影も ただ浸された世界の姿をゆったりと、想像している

          空(2020/06/13/22:04-)

          2024-10-04-23:18-

          気づいていた。 自分がことあるごとに一人が好きだと言いはるのは、自身にそう言い聞かせないと死んでしまうからだ。 ものごころついてから今に至るまで、集団の中で居場所を見出すことがとてつもなく苦手で、人付き合いにコンプレックスがある。自分を守るには、「群れ」を否定し「孤独」を賛美する必要があったんだ。 うまくやっていけない。必要としてもらえない。みんなの望む答えを持っていない。笑わせられない。けれど笑われることも嫌だ。 他人のために自分を偽る必要があることをおぞましく思った。その

          2024-10-04-23:18-

          学校のことつらつら

          田舎で育った。子どもの数は少なく、必然学校の数も、その内側にあるクラスの数も少なかった。 小学校。1学年だいたい1クラス。多くても2クラス。30人に少し足りない程度だったから地域の中ではまぁ普通のほう、なんならまだマシな方だったんじゃなかろうか。周囲のさらに人が少なかった学校の人間を知って、そう思うなどしてみる。けれど自分には、まだマシだったその教室の中ですら苦しい場所だった。 変な学年だった。最初からそうだったのかはわからない。いつから、何が理由でそうなったのか、わからない

          学校のことつらつら

          断ち切る

          細い 柔らかく光る糸が わたしにいくつもつながっている 頼りなく風に吹かれて どこかへ流されそうな かすかなきらめきが 手で掴んでいる この糸を はつ、と切ってしまえば 切ってしまえば楽になるのだろうか 自由になれるのだろうか 自由とは、死か? これは命綱だと知っている けれど あまりにもやわくかそけき希望 縋る自分の醜さを直視したくない こんなものに こんな光に 救われる必要のある自分だと思いたくない あぁ あたたかい糸 この先にいる人たちを思う 愛してくれている あ

          世界を諦めない人

          諦めないことを選べる人は強い。 諦めないでいることの価値を知れるまで歯を食いしばり、報われるまでの長い道を堪えられる人。ほんとうに諦めないでいる、という選択は楽観からはもたらされない。得るべき結果、望んだ未来のため今を犠牲にし、何ならその果実にありつくのは自分ではないことすら理解してもなお“良きこと”のために舵を切る、そんな姿勢に自分は恐怖すら覚える。 諦めないことを選ぶ、その強さが醸されるのはその人たちを育んだ環境、関わった人たちによるものもあるのだろうか。何がそんなに希望

          世界を諦めない人

          ほんとう

          あの日何を感じていたか 正確に推測することはできない あの日何を感じるべきだったか そんなものはないのにいつも考える あの日何なら感じてよかったんだか 正解はないのに問うてしまう 気持ちや心に鮮度があるなら あの日のはもう賞味期限切れだろう 今考えたって 同じ味はたぶんしない それなのにあの日にうまく自分と向き合えなかったせいで ずっと似たような味の再現を脳内でしてしまう 食べてもいない料理の不格好な再現 絶望した かなしんだ 怒るべきだった?そう予想されていた できなか

          連想

          頑張らずに何者かになりたい そのままで誰かに褒められたい やりたいことはいくつもあれど やってモノにならなきゃ悲しいだけ 負け戦なら挑まなきゃいい ずっと無気力の渦中 何もできないことが悔しい 向き合って拒絶されるのが悲しい すべて賭けたとして世間はどれほど顧みてくれるだろう? 他人の評価軸で生きるつもりの己は空っぽだ 腸をまさぐって探す 光るもののひとかけらも見つからぬものかと ぐちゃぐちゃの暗がりで誰か来ないかと泣いている 嘘、ほんとは涙にも飽きてただただ倒れている 口を

          2024-0905-19:37

          キッチンで立ったまま食べる飯、うまい。 作ったものを作ったまま、その場で食べる。盛り付ける、分け合う、なんて概念はそこにはない。フライパンはまだ熱されたまま、次の食材を載せたまま。皿に移動したての形もぐしゃっとしたナニカを自分はその横で食らっている。 お行儀の悪さの極地だ。しかも衛生状態もあまりよろしくない。洗われていない食器、発泡トレー、包丁。流し台の上に渡されたまな板に皿を載せ、周囲はびしょびしょに濡れている。そんな場所に背を軽く預けて、片足に体重を載せつつ不定形料理を食

          夏休み終わっちゃった

          今年の盆休みは長く、そして充実していた。休みなのに休んだ感がないほどに。 盆が開けて1週間、本当はもっと早く記録をつけたかったと振り返ればもう休みはじめの記憶は薄らいでいて、反芻しなければすぐに透き通ってしまう思い出の儚さたるやと慄く。自分がぼうっと生きているだけ、ということかもしれないが、果たしてどうだろう。みんなそんなものであろうか。昨日の夕飯、今朝の通勤路、出来事、会話、つぶさに覚えて置けるのは強く光があたった一瞬だけで、溢れていくのは次の記録に必要な余白作り、そんな言

          夏休み終わっちゃった