無題
大好きな言葉を書く人がこの世を去った
小さい頃からずっと それと知らぬときからずっと 大好きな人だった
そういう人たちはとっくのとうに死んでいるか もうじきに死ぬものであると勝手に思っていたから
まだ生きているのだと気づくたびに少し驚いて 嬉しくなっていた
この世界はもうあなたのいない世界なのだという
会ったこともない他人なのに それがとてもさびしくて さびしくて
私は朝から泣いている
これからもきっと会う予定などなかった
けれどもう この世界にはあなたがいないのだと思うと ひどくかなしい
あなたの吸って吐いた呼気がかたちづくった雨に濡らされた日もあったかもしれないと
あなたを包む大気と同じ物質に囲まれているのだと
時々思っては感嘆していたのに
もう二度と来ないのだ
あなたを焼いたあとの煙は雲になって
この星を囲み そして去っていく