詩人の死

一人の詩人が死んだ
ある朝、その報せを聞いて
ぼろぼろと泣いた
何が変わるわけでもないというのに

詩人が死んだので
詩人の書いたものを読み返そうと思った
家には詩人の本があり
それを持って歩いた

適切な間を見つけては
その本を開いて詩を読んだ
しばらく前に買ったものだが
もう知っている詩と
まだ読んでいない詩がたくさん載っていた

詩人が生きていても死んでいても
詩は変わらずそこにあり
書かれたまま読まれる日を待っている
詩人は大層たくさん詩を書いたから
まだまだいくらでも読むものはある

ひとつの詩のなかに
いくつもの顔がある
だから何度でも出会うことができる

詩人はもういない
だからもう詩が増えることはない

けれども今までと同じように
詩人の詩はただそこにあって
私はその窓を通して世界を覗く
もうそこに詩人はいないけれども

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