転職サイト「ビズリーチ」のビジネスモデル図解:市場限定と利用者選別の仕組み
今や当たり前となったダイレクト・リクルーティング(企業に能動的な直接採用、スカウト)ですが、その先駆けとなった企業の一つが「ビズリーチ(BizReach)」です。
ビズリーチのビジネスモデルは、
求人企業
ヘッドハンター
転職希望者
の3者を繋ぐマルチサイドプラットフォーム(複数の異なる利用者を対象としたプラットフォーム型ビジネス)をベースとして、ハイクラス人材の労働市場に特化したものになっています。
まずはビジネスモデル図解の全体像から。
なお、ここではシステム思考の「ループ図」を使ってビジネスモデルを解説していきます。以下のリンクでは「ループ図」および、「ビジネスモデル」について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
ビズリーチのビジネスモデルのポイントは、
市場絞り込みによる売上単価向上
利用者選別によるプレミアムの獲得
潜在層への訴求による供給量の増加
の3つ!
この3つを解説する前に、簡単にプラットフォーム型ビジネスの基本形をおさらいしましょう。
ビズリーチはマルチサイドプラットフォーマー
冒頭でお伝えしたように、ビズリーチの利用者は「求人企業」「ヘッドハンター」「転職希望者」の3者に分かれます。
この3者を繋ぐのが即戦力の採用という価値です。ハイクラスの即戦力人材の採用が成立するからこそ利用者が集まり、利用者が集まるからこそ即戦力の人材が成立します。
このような利用者の数が増えるほど、サービスの価値が高まる効果のことを「ネットワーク効果(外部性)」と呼びます。
プラットフォーム型ビジネスでは、事業の継続的な拡大にネットワーク効果が必須となっているので、ここを押さえておくことは非常に重要です。
では、ビジネスモデルの3つのポイントの解説へ。
①市場絞り込みによる売上単価向上
ビズリーチは、「ハイクラス(高年収・高収入)」「即戦力」「転職」という労働市場に特化しています。
これがビジネスモデルにどのように影響するかというと…。
ブランドの信頼性の向上
採用ごとの仲介手数料の向上
の2点です。
ブランドの信頼性という点については、ハイクラスの即戦力人材に絞ることで、よりプロフェッショナルなブランドイメージに繋がります。
さらに、採用ごとの仲介手数料は、採用人材の年収がベースになるため、高年収・高収入であるほど手数料の単価が高まります。つまり、同じ1件の採用成立でもビズリーチの儲けが大きいということ。
ちなみにスキマバイトアプリ「Timee(タイミー)」も、ビズリーチと同じ労働市場のマルチサイドプラットフォームですが、全く戦い方が異なります。
タイミーは、バイト採用ということで1回の手数料単価は低いですが、採用の手間を最小にすることで回転数を高め、収益を上げる戦い方をしています。
②利用者選別による追加利益の獲得
実は、ビズリーチには誰でも登録できるわけではありません。
どの利用者にもビズリーチによる審査があり、その審査を通過した場合だけビズリーチを利用することができます。
せっかく集めたたくさんの登録希望者を、何故振るいにかけてわざわざ減らすのか?
それはもちろん、ターゲット層ではない登録希望者を弾くためなんですが、もう一つの理由が、追加の利益を得ること。
厳選された求人企業や、評判の良いヘッドハンター、能力の高い転職希望者がデータベースに登録されていれば、利用者は互いに嬉しいですよね。何故なら、ミスマッチの可能性が減り、良質な採用を得られる可能性が高まるから。
そしてビズリーチが手間暇かけて作り上げた質の高いデータベースを利用することに課金をお願いしたとしても、納得感があります。むしろ、本気の利用者ほどお金を払ってまで使います。
つまり、ビズリーチは利用者を厳選することで、すべての利用者からシステム利用手数料という追加の利益を得ることができるのです。成功報酬型の収益が多い採用業界の中では、毎月定額で徴収できる仕組みを持っているビズリーチは強いのです。
③潜在層への訴求による供給量の増加
ビズリーチのCMって、本格的に転職を検討している人に対してではなく、
転職を考えていない人
転職がちょっと気になっている人
に対しての訴求が多いんです。
なぜ、すぐにお客さんになってくれなさそうな層に宣伝をしているのか?
それは、顕在化したニーズがある(=転職したいと思っている)利用者だけでなく、潜在的なニーズがある(=転職は考えていないけどハイクラスな)利用者を集めることで、プラットフォーム上の労働力の供給量を底上げするためです。そして、人材が増えれば求人企業は喜んで登録してくれます。
でも「転職する気のない人を登録させても採用につながらないでしょ?」と思うかもしれません。でもそんなことはないんです。ビズリーチが、潜在層にバンバンCMを打つってことは、ここを攻めるのが一番儲かるんです。
優秀な人にとりあえず登録してもらえれば、あとは厳選した求人企業から魅力的なスカウトが届き、気が変わって転職する。そういったことが頻繁に起きているんでしょう。
ビズリーチのビジネスモデル図解まとめ
あらためてビズリーチのビジネスモデルのポイントを見てみましょう。
市場絞り込みによる売上単価向上
利用者選別によるプレミアムの獲得
潜在層への訴求による供給量の増加
プラットフォーム型ビジネスのとして、それぞれの利用者の需要と供給のバランスをとっているのは言わずもがな。市場を絞り込んで、さらに利用者も自ら厳選するという徹底した価値向上へのこだわりで業界では優位な地位を確保しています。
後追い企業もたくさん出てきてはいますが、ネットワーク効果が十分に効いている現状では、同じ領域でひっくり返すのはおそらく難しいでしょう。
そのため、後発組の戦い方としては、特定職種や特定業界に特化するなど、さらに領域をしぼってクリティカルマス(ネットワーク効果が現れる閾値)を小さくして攻めるのが良いかもしれませんね。
…ということで、ここまでビズリーチのビジネスモデルについてポイントを解説しました。より詳しい情報については、以下のブログ記事で解説しています。ここまで読んでビズリーチに興味が湧いた方は、ぜひブログ記事も読んでいただけると嬉しいです。
また、下記のTwitterでも情報を発信しているので、こちらでもコメント等いただけると大変励みになります。最後までご精読いただき、ありがとうございました。