パイプライン型とプラットフォーム型ビジネスモデルの違いと規模の経済性の話
実は、世の中のビジネスモデルは、パイプライン型かプラットフォーム型か、あるいはその2つの組み合わせかで大体説明できます。
それぞれ、
パイプライン型:資源を調達し付加価値を加えて消費者に販売するビジネス
プラットフォーム型:生産者と消費者が出会う場の価値を高めるビジネス
といった違いがあります。
ちなみにプラットフォーム型ビジネスは、インターネットの普及で目立つようになってきたので新しいイメージを持たれてる方もいるかもしれません。しかし、どちらも大昔から存在しているビジネスです。
例えば、
パイプライン型:農林水産業、職人によるものづくり
プラットフォーム型:農産物や工芸品を持ち寄って売買する市場
といった感じ。
ただ、プラットフォーム型ビジネスについては、インターネットの普及やテクノロジーの発展によって、
インターネットで物理的に人や物が集まる場所が不要になった
テクノロジーで大量の取引を一瞬で処理できるようになった
ということが起こります。つまり、プラットフォーム型ビジネスのコストが著しく低下したということ。
2000年代のドットコムバブル以降にIT系のプラットフォーム型ビジネスが目立つようになってきたのもこれが要因です。
ということで、今回はパイプライン型とプラットフォーム型ビジネスについてわかりやすく解説したいと思います。
この二つのビジネスモデルを理解するポイントはズバリ、
(需要/供給側の)規模の経済性
です。
パイプライン型は(供給側の)規模の経済が重要
まず「規模の経済」って何だっけ?ということですが、
生産の規模が大きくなればなるほど製品1つあたりの平均コストが下がる状況
のこと。
同じ設備でたくさんの製品を作れば作るほど、一つの店で商品を売れば売るほど、1単位あたりの固定費が小さく分割されてコストが低減します。
パイプライン型ビジネスは、材料を仕入れて加工するビジネスです。なので、生産コストが低くなるほど儲かります。
生産コストが下がって儲かれば、儲かったお金を研究開発に投じて品質を高めたり、マーケティングに使って客を増やしたりと、さらにたくさん売るための施策が可能です。
その結果、さらに事業が拡大して、より一層規模の経済の効果が働くようになります。
ただし、これを実現するためには、マイケル・ポーター教授のファイブフォース分析のように市場の競争圧力をいかに下げていくかも重要です。
競争圧力が下がれば、事業が儲かりやすくなります。また、規模の経済性が参入障壁となり、事業成長そのものが組織を守る盾となります。
このように、パイプライン型ビジネスでは、自社の経営資源をうまく活用し、サプライチェーン全体の流れをコントロールしながら、他社をどうやって出し抜くかという戦いになります。
プラットフォーム型ビジネスも(需要側の)規模の経済が重要
実は「規模の経済」って2種類あるんです。
供給側の規模の経済性
需要側の規模の経済性
前者の供給側(生産側)の規模の経済性については前述のとおり。他方、後者の「需要側の」規模の経済性は、別名「ネットワーク効果(外部性)」と呼ばれ、プラットフォーム型ビジネスでは非常に重要な概念となります。
ネットワーク効果とは、
商品やサービスの価値や効用が、その利用者の数に依存する現象
のこと。
図で表すと以下のとおり。
これは「直接的」ネットワーク効果と呼ばれ、利用者がみんな同じ場合のネットワーク効果です。例えば、電話とかSNSとか。利用する人が多ければ多いほど利便性も高まりますよね。
しかし今回はプラットフォーム型ビジネスの話。プラットフォームの利用者は「生産者」と「消費者」に分かれます。
このように利用者が2種類以上存在している場合を「間接的」ネットワーク効果と呼び、互いの利用の増加が、互いの利用価値の向上を生み出します。
これは外部の資源をいかにうまくプラットフォーム上に留めるか、ということでもあります。
より多くの資源がプラットフォーム上で利用できれば、それだけ利用者にとって魅力が高まるということ。利用者が利用者を呼び、事業拡大が加速すれば、利用者を獲得するための1人あたりのコストが大幅に減ります。そして儲かります。
儲かったお金は、より一層プラットフォームが魅力的になるように投資を行い、さらにネットワーク効果を高めます。
このように、プラットフォーム型ビジネスでは、外部の資源をうまく活用し、プラットフォーム自体の魅力を高めながら、利用者により良い価値を提供できるかの戦いになります。
パイプライン型とプラットフォーム型ビジネスのまとめ
ここまでパイプライン型ビジネスとプラットフォーム型ビジネスの違いについて「規模の経済性」を軸に解説しました。
2つのビジネスモデルの事業拡大のポイントが大きく違うことも、ご理解いただけたかと思います。
近年ではプラットフォーム型ビジネスのコストが下がったことから、これらの2つを組み合わせて事業を強化する事例もたくさん見られます。
この組み合わせについては、
他社に門戸を開く
顧客をつなぐ
製品をつないで顧客をつなぐ
というシナリオが確認されており、新規事業の立ち上げや事業転換のヒントになるかもしれません。
プラットフォーム型ビジネスへの転換シナリオも含め、より詳しい内容については以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
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