回収数の設定の正解とは?
人口過密地域と人口過疎地域、同じ質問だけど、同じ回収数でいいのでしょうか?
みなさん、こんにちは!
公式noteちゃくちゃくと更新中です。
一般消費者向けのアンケートを行うときに、疑問がわくのが、
「どれくらいのボリュームを集めればいいの?」ということ。
前回のコラムをぜひご覧ください。
今回は、回収、割付、出現率について、考えてみたいと思います。
大事なポイントとなるのが、割付。
冒頭の疑問ですが、同じ回収数でいいのでしょうか?
正解は・・・いいです。
ただし、違うやり方もあります。
具体的に以下より考えていきましょう。
◆回収:回答の回収ですね。
◆割付:想定している回収したい対象者を属性によって分けて、回収数を設定すること。よくあるのが、性別や年代別で設定します。
◆出現率:別称ですが、IR(IncidenceRate)ともいいます。対象条件に合致するサンプル数が属性・集団の中に含まれる比率。
回収数の予測、調査コストの検討において、とっても重要な指標です。
IRが低いと、対象者が限定的と考えられ、回収数も少なくなります。
IRが高いと、対象者は一般的と考えられ、回収数も多くなります。
と、単語がわかったら、一つずつ考えていきましょう。
ネットモニター調査では、郵送調査と異なり、事前に想定した回収したい対象層の回答を回収することが可能となります。そのため調査の実施前に回収割付を設定する必要があります。
割付の検討
割付は母集団の構成比を反映することが重要です。
性別、年齢、地域などは統計情報を参考にして回収数を設定することが可能です。
商品やブランド調査ではシェアや販売実績などの客観データを根拠を利用します。
以下は2000サンプルを均等で回収する場合と人口比で回収する場合の比較です。
実際の調査では上記のように母集団の構成比がわからない場合も少なくありません。そのような場合には、母集団を推定できるデータを参照するなど、分析に必要な回収数を前提にして対象層を均等に割り付ける方法や任意に設定する場合もあります。
例えば、以下例1~3のように、オンライン調査では事前に回収の割り付けを設定し、より精度を高く調査することが可能です。
難しい条件の場合には、調査期間も延長するなどで回収確保期間を少し長めに確保するのもよいです。
ただし、登録されているアンケート回答のモニターによっては特定年齢層が少ないということもあります。またこれは対象国やターゲット層によっても異なります。国によっては高齢者が少ないことや、若者層の参加・協力率が高くはないという状況があり、回収分サンプル数の設定には留意が必要です。
<例1>
米国での自動車の利用、購入に関する実態調査を実施するにあたり、
米国でのメーカーの新車販売実績のシェアを基に回収数を設定。
GM 18.1
トヨタ 13.5
フォード 14.1
ホンダ 8.9
ヒュンダイ 4.4
ニッサン 6.8
<例2>
インターネットを通じた出前の利用調査
対象は20~69歳
回収は1000回収
10歳刻みの男女均等回収
各層は男女50回収
<例3>
自社製品の利用実態調査
対象は自社製品購入者
商品 a=100
商品 b=100
商品 c=100
商品 d=100
商品 e=100
合計500回収
そのほか、 以下のような方法があります。
母集団の構成費を反映して設定する
母集団の構成費に近いデータを基に設定する
母集団の構成費が不明な場合には分析必要な回収数を任意に設定する
回収の実際
設定した割付の回収ができるかどうかは、出現率(IR)やターゲット層の回答状況によります。その他にネットモニター調査のパートナーを利用して回収する方法もあります。
また、延長期間においては通常、回収数が確保されているセル以外の回収が進んでいないセルの回答者のみをターゲットした回収を行います。
それでもなお特定セルについて回収できないような状況もありえます。
事前の段階から回収延長期限を設定して実施することが現実的です。
モニター調査は母集団からのサンプル抽出を行うなど、統計的な優位性を検証できないことから、回収確保についても厳密性より現実の対応を前提にした方が良いと思われます。
仮に特定の割り付けの回収がほとんど出来なかった場合に、より確からしいデータを得たいような場合には、最終的にはウェイトバック集計をするという方法もあります。
ウェイトバック集計とは、アンケート回答者の構成割合と母集団の構成割合に差があるときに、その差をなくし、できるだけ偏りのない調査結果を出すために使用される集計方法のことです。
より細かくなるので、さらっとそんな集計もあるのだと思っていた抱ければ大丈夫です。
出現率の検討
出現率IRとは、ネットモニター調査において、対象条件に合致するサンプル数が属性・集団の中に含まれる比率を意味します。出現率は回収数の予測と調査コストの検討において重要な指標となります。当然ながらIRが低い場合には、対象者が限定的であるたる最大回収数も少なくなります。
他方で高い場合には回収数、回収スピードも高くなります。
具体的には・・・
20歳以上の男性のみを対象にした調査で、特に指定する属性がない場合には、男女比が概ね50:50であるので、IRは50%となります。
その他に大卒者や正規雇用者などをターゲティングする場合は日本の統計情報から大学卒比率(約51.9%)や、正規雇用比率(約62.9%)を出現率として設定します。
実際の調査でのIRの検討は、ターゲティングしない一般配信の場合の他、ターゲティングした後にIRを検討して設定する場合もあります。
例えば、大卒者を登録属性でターゲティングした後に、
中小企業に勤務する人、正規雇用者で金融業界に勤務している人、女性でパートタイムで勤務している人などをターゲットする場合です。
このようにIRは最終的に対象とする人が、モニター全体やターゲティングした層の中で、どの程度出現するのかを特定する指標です。
IRにはいくつかの方法があります。
1つ目は、公式な統計を基にして算定する方法です。
ターゲティング可能な属性以外で統計情報としてIRの検討で使えるものとしては、国勢調査、経済センサス、家計構造調査、消費者実態調査、労働力調査などの統計情報があります。これらの統計情報は信頼性があるあるので、その数値をIRとして、そのまま利用できます。
2つ目は各種の調査からのデータ引用です。
仕事、リモートワーク、外食、旅行、家計、消費者意識、子育て、老後など、様々なテーマで官民において調査か実施されており、その調査報告書のデータを基にして設定する方法です。
例えば、A社の行った「育児に関するアンケート調査」で、育児休暇を取得した男性は3割未満と報告があったとします。
この場合、調査の方法、サンプル数、対象を確認して一定の信頼性がある場合には、育児休暇を取得した男性のIRは30%と設定できます。
なお、この調査は0歳から6歳の子供を持つ家庭を対象にしているので、この場合には、育児休暇を取得した男性がいる家庭の調査は、以下のような条件になります。
・性別 男性、女性
・年齢 18歳以上
・世帯 0歳から6歳の子供を持つ世帯 8.6% (国勢調査)
・育休 育児休暇を取得した男性は 30%(A社調べ)
・IR 約2.8%
3つめは自社製品の販売や流通実績からIRを推計する方法です。
代表的には米国や中国での日本車の販売実績やシェアなどです。その他に消費財である物やファーストフードなどの場合には販売数や来店客数は確認できるものの、それをそのまま利用できる場合もありますが、リピーターを除く実購入者数を特定してIRを設定するには工夫が必要です。その場合には、根拠として利用できるデータがない場合には、仮説に基づいて設定するなどの対応になります。
4つ目ですが、それでもIRが判らない場合には、出現率調査を行ったうえで推定する方法です。これは5問程度のスクリーニング設問を通じて一般配信を行い、ターゲット層がどの程度存在するのかを確認する方法で、これによって調査の実施可否やコストを事前に確認することが可能となります。
出現率調査は有償、無償のいずれかの方法によりモニター調査会社が行います。
上記のようにいくつかの方法を通じてネットモニター調査の実施前の段階でIRを設定して、回収数とコストを把握します。
なお、多くのネットモニター調査会社では、この出現率に応じて回収単価が設定されます。回答者に対する報酬は一般的には設問数に応じて設定されますが、他方でこの出現率が低いターゲット層についてはレアな対象という理由で、調査実施の困難性から単価が高く設定されます。
一般に契約段階で出現率が確認されて単価が設定されますが、事前に想定した出現率が実査の結果、大幅に低下した際には単価が上方修正されることもあります。これはネットモニター調査会社によって異なります。
IRは回収数、コストに影響する重要な指標です。可能な限り根拠がある、確からしい数字を前提にすることが求められます。
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