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初めての裁判: 未払い賃料請求事件 No.3

こんにちは。

大家をしております。
人生で初めて裁判を原告として経験していますが、ようやく第一回弁論が終わりました。
第一回弁論までの経緯はこちらの記事でご紹介しました。

この記事では、第一回弁論での主要な論点となる、被告の主張に対する原告である私の反論についてご紹介したいと思います。
原告として訴訟をすすめようとされている方、特に本人訴訟の方には参考になるのではないかと思います。

背景

戸建てを人に賃貸しておりますが、家賃の支払いを拒否されている状態が4か月近く続いたため、賃料請求のため訴えを提訴いたしました。

建物の一部不具合がきっかけになりましたが、こちらが誠意をもっときちんと修繕対応したにも関わらず、一時退避後に連絡が途絶えて家賃の支払いもしなくなってしまったという経緯です。

これまでの経緯

今回の訴訟は、被告側のこれまでの対応から立場が弱く、十分勝てる見込みがあると思ったため始めました。
被告側で「まともな」反論はできないと思っていたので、解決までのスピードを重視し、少額訴訟での提訴をいたしました。

滞納家賃支払い催告書の内容証明を送付、その後、訴訟提起ときちんと手続きを踏んで進めましたが、被告からは一切応答・連絡などはありません。
ここまでは、想定どおりで、第一回口頭弁論も欠席裁判になることをある程度期待していました。
しかし、裁判呼び出し状が未達となり(受取り拒否?)、勤務先に再度送付したところ、被告からの答弁書の提出がありました。
そのため、口頭弁論期日の再延期となりました。
この記事では、被告の答弁書での主張に対し私がどう反論し、準備書面を作成したのか共有します。

被告の主張と原告の反論

被告としては、建物の問題を指摘し、家賃不払いを正当化しようとしているものと思われます。
主張のポイントは以下の3点。

  1. 賃貸している家が住める状態ではない

  2. 家が傾いており、住める状態ではない

  3. 修繕中の退避の費用を被告側で負担した

被告の主張に対しどう反論するのかの検討では、各主張にひとつずつ証拠・客観的な論旨で反論するのは当然として、以下のポイントを強調するようにしました。

  • 被告の見解、行動が常識を外れており、信頼できるものではない

  • 問題の解決に対し誠意が全くない

上記のポイントを意識し、被告の言質には信ぴょう性がないこと明確にしようと考えました。
私が準備した反論を記載した準備書面の文面をご紹介しながら、上記のポイントについて補足します。

まず、冒頭で以下のとおり言及し、被告の言葉の信ぴょう性、また誠意がないことを強調しました。
また、原告としても裁判は不本意であり、最終手段として取らざるを得ない状態となったのは被告のせいであると暗に主張します。
(裁判というのは、基本的には訴えた側が悪者にされるものだということを聞いたことがあります。それを否定する意味合いがあります。)

第2 被告の主張に対する反論

これまでの原告と被告とのやり取りでは、被告が自分の言いたいことのみ主張し、話が進まない状態であった。
家賃支払いに関する話し合いを原告から何度も申し入れたが、被告から返答が全くない状態が続いてきた。
被告は原告の連絡・求めに応じず、また、現住所を知らせないなど意図的に解決を遅らせ、原告に心理的・金銭的・時間的な損害を与えている。
そのため、強制的に解決を図るため、裁判に訴えた次第である。

今回の被告の主張は、それを裏付ける客観的な事実・根拠の記載がないため、提示することを求める。また、原告側に要求する事項があれば、明確にしていただきたい。

以降、各主張に対し証拠を提示し、反論をしました。
その反論の中でも、被告の信ぴょう性・誠意がないことを再三強調します。

➀の主張に対する反論
、、、
原告から被告に対し、修繕の完了報告、および、修繕内容の説明をしたが、それに対する指摘は一切受けとっていない。(甲第X、Y号証)
工事完了後の建物の現状を再確認し、具体的にどこに問題があるのか明示いただきたい。
なお、被告が修繕された現場を確認したとの連絡はなく、今回の主張➀は、修繕後の状況を確認したものではないと考える。
さらに、修繕工事の完了日を事前に連絡していたにも拘わらず、工事完了の報告後、お金がないというコメントを残し連絡が途絶えた。(甲第X号証)
X月YY日に連絡するとの約束も守らず、こちらからの再三の連絡・話し合いの申し出に一切返答がなかったのはなぜか
きわめて不誠実な対応である。

②の主張に対する反論:
被告の主張は根拠がなく、事実ではない
修繕を実施したXXXXの見解では、建物の傾きに問題はない。(甲第Z号証)
住宅として住めない客観的事実、または、専門家の見解を提示の上、賃貸契約が無効であると主張する場合、その論拠を明確にしていただきたい。

XXXX年X月XX日に、被告、原告、修繕業者立会いのもと不具合の状況を被告から直接ヒアリングしたが、その時点で家の傾きが理由で住めないという話はなく、不具合修繕後に被告が言い始めたものである。
なぜ修繕前に言わなかったのか
他にも、地震が多発していることを家に戻れない理由に挙げてきたが、家に戻らず家賃支払いを免れる口実を探しているだけではないのか。(甲第P号証)

③主張に対する反論:
原告側で費用負担する理由はない。理由は2つ。

(1) 一時退避は被告の希望で自ら実施したものである
修繕は居住しながら実施でき、その工事の進め方を被告に説明した。
しかし、被告の希望により自ら一時退避されたものである。(甲第Q号証)
被告自ら希望して実施した引っ越しに対し、原告側で費用負担する理由はない。

(2) また、この一時退避は一部の残置物を残し、家財・私物などをすべて持ち出す形で実施された。しかも、このほぼ完全な退去を原告に事前に相談・連絡をしていない。
この点からも原告側で引っ越しの費用を負担する理由はない。

なお、被告側では完全な引っ越しにともなう費用、時間、労力は事前に分かっていたことである。
修繕工事が完了した後に、再度家に戻るための引っ越し費用がないことを理由に家賃の支払い拒否することは到底受け入れられない

被告の主張に反論する原告の準備書面(抜粋)

訴訟を通じて得たこと

今回、実際に訴訟を提起、身をもって訴訟を経験できたことは非常に勉強になりました。
基本的には、訴訟は時間がかかるものであり、単純に金銭的なメリット・デメリットだけを考えるとあまりお勧めできるものではないとは思います。
泣き寝入りにはなりますが、早く損切して、他のことに力を注ぐ方がいい面は多分にあります。

ただし、それだけで済ませられない問題もあります。
今回の件で言えば、原告側として誠実に対応してきたにも拘わらず、その対応を無下にされてきたわけです。
無駄とはわかっていても、きちっと白黒をつけたいと思うのはおかしな考えではないと思います。

また、この経験を通じて、こちらの常識が通じないような相手もいるという認識を新たにしました。
類似の事件の際に被害を最小限に食い止めるためにも、賃貸契約に盛り込むべき事項がいくつかあると思います。
例えば、状況の如何を問わず、大家に所在を知らせない場合には即解約、かつ、違約金を請求できるようにするなど。

もう一点、この経験を通じて、訴訟に対する恐れというものがなくなりました。
訴訟をすることのデメリットは確かにありますが、必要となったら自分でも訴訟を起こせると考えると、日々の大家業にも自信がつきます。

次回の記事では、第一回口頭弁論の結果をご紹介したいと思います。
被告と原告は何をどう主張しあい、どう議論が展開したのか。
ご期待ください。

最後に

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なべなべ
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