約束手形からでんさいへの依頼
約束手形とは?
そもそも約束手形を知らない人も多い時代でしょう。約束手形とはこういうものです。
振込で支払う代わりに、何月何日に支払うという約束を書いた紙で支払う
受け取った側は、その期日になるまで現金は手に入らない
というものです。
IT系やサービス業などの比較的近年に発生した業種では使われていません。建設業界や製造業など古くからある産業で使われてきたもので、現在でも少数ながら利用されています。
当社においては、コロナの前までは発行していました。コロナの期間中に実施されたコロナの特別融資によって余剰の運転資金を確保できたため、そのタイミングで約束手形の発行を廃止しました。また、当社が廃止した後に顧客にも約束手形での支払いを振込に変えてもらうように要請しました。現在では当社の顧客で約束手形による支払いが残っているのは1社だけとなりました。
約束手形の問題点
約束手形を扱う上において問題点は手間と受取側の負担です。約束手形を扱う場合は下記のような流れになります。
支払側の処理
1. 約束手形を紙で発行する
2. 収入印紙を貼る(最低200円)
3. 約束手形に印鑑を押印する
4. 約束手形の送り状を発行する
5. 約束手形と送り状を封入する
6. 封筒を簡易書留で発送する
受取側の処理
1. 約束手形を受け取る
2. 領収書を発行する
3. 領収書に印紙を収入印紙を貼る(最低200円)
4. 領収書に印鑑を押印する
5. 領収書を普通郵便で発送する
6. 受け取った約束手形を銀行に持ち込んで預かってもらう
これに対して、振込での支払いの場合は、振込むという1ステップのみで済みます。
また、約束手形は銀行に手数料を支払うことで即時に現金化することもできます。しかし、その手数料は受取側が負担することになっています。支払の猶予を得るための金利を受益者側である債務者ではなく、債権者が負担するという制度になっています。
でんさいへの移行の依頼
この紙で処理する約束手形を電子決済で扱えるようにした「でんさい」という仕組みが存在しています。約束手形のオンラインバンキング版だと考えて問題ありません。
1社だけ残った約束手形を発行する顧客から、でんさいに移行するという依頼がありました。でんさいに移行した場合は、下記のようになります。
手間
約束手形 > でんさい > 振込
紙の約束手形を発行するよりは手間が小さくなります。しかし、シンプルな振込処理よりは負荷は大きいままです。
受取側の負担
これは変わりません。
でんさいへの移行の背景
なぜ今でんさいへの移行なのか?これは、日本政府の制度の変化によるものです。約束手形は2026年度末に完全に廃止されることが決まっています。また、約束手形の支払期日も徐々に短くなってきています。2024年11月には約束型の支払期日が60日未満に規制されます。このような背景から、約束手形ではなく、でんさいに移行することを意図したのだと考えられます。
当社の思いと社員との相談
当社としては、ここまで来たらでんさいに移行するのではなく、振込にしてほしいです。理由は下記のとおりです。
手間を減らしたい
事務処理の手間を減らしたいです。また、顧客においてもこの手間を減らしてほしいと願っています。支払日に支払って欲しい
債権ではなく、振込で支払って欲しいです。なぜならば当社の仕入れも従業員の給料も振込で支払っているからです。
顧客への返答の前にこの顧客を担当している社員と会話しました。
私:というわけで、でんさいではなく、振込で支払って欲しいと回答しようと思う。
社員:そんな回答をしたら、もうこの顧客からの仕事をしたくない、というふうに取られかねない。
私:なるほど。であれば、そういう意味はなく、シンプルに振込にしてほしい、というだけなんです。御社には大変お世話になっているし、弊社としても最も大切なお客さまであることに変わりありません、ということも伝えましょう。
ということから、文書で回答する前に、顧客に電話することにしました。
顧客との会話
顧客に電話しました。
でんさいへの移行ではなく、振込にして欲しい
御社と取引したくない、という意味はなく、伝えるべきことを伝えたいというだけです。御社は大切な顧客であることには変わりありません
一度、御社のお話を聞かせていただきたい
ということを伝えて、別途、顧客の上役と会談することになりました。終始快く対応してもらいました。
まとめ
伝えたいことは伝えることが今回の大切なことだったと感じています。
でんさい(債権)での支払いではなく、振込にして欲しい
御社と取引したくないという意味はありません。むしろ、御社はとても大切な顧客です
特に2番目のことが重要だったかと感じています。確かに、約束手形をやめて欲しい、でんさいをやめて欲しい、といったら仕事がなくなるんじゃないか?という不安はあったと思います。であれば、それもそのまま表現したらよいのです。これが言えないから、本来の伝えたいことも伝えられない。シンプルなことだが、見落としがちなことであることを再発見しました。
顧客との会話はこれからです。どうなるかは分かりません。実際に会話してきてどうなったかは、その2に続きます。
それまでの間に、約束手形やでんさいについて、皆さまのエピソードや気づいたこと、感じたことなど、コメントでお教えいただけますと幸いです。