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3Dプリンターの滑らかな解像度と0.01mm精度への挑戦


解像度が高いと寸法精度が高いのか?

結論から言うと、3Dプリンターにおいては解像度が高くても寸法精度は高くなりません。むしろ悪くなります。

解像度と寸法精度は反比例する

当社では2021年に当時の3Dプリンターの最新機種で解像度と寸法精度の関係について実験をしました。

試験片について

  • 当社の製品でよくある形状を模した試験専用モデル

  • Φ40 x 250 の半割の疑似模型


試験片 - CADモデル

評価方法

  • 3Dプリンター各種でプリントした試験片を三次元測定機で測定し、両端の偏差を評価する

    • 使用した三次元測定機:FARO ScanArm

実験結果

  1. Markforged X3 - ピッチ0.10mm
    方式:FDM
    材質:Onyx(Markforged 専用 マイクロ炭素繊維充填ナイロン)
    積層ピッチ:0.10mm
    偏差:⭕️0.012mm ~ 0.034mm
    とても滑らかな仕上がり。反りがとても小さく、定盤に配置したときに浮き上がることがない。

  2. Markforged X3 - ピッチ0.05mm
    方式:FDM
    材質:Onyx(Markforged 専用 マイクロ炭素繊維充填ナイロン)
    積層ピッチ:0.05mm
    偏差:🔺0.188mm ~ 0.251mm
    とても滑らかな仕上がり。反りがとても小さく、定盤に配置したときに浮き上がることがない。

  3. Stratasys J55
    方式:インクジェット
    材質:ABSライク
    積層ピッチ:0.02mm
    偏差:🔺0.104mm ~ 0.156mm
    表面の仕上がりは最も滑らかな仕上がり。ただし、明らかな反りが見られる。定盤に配置すると浮くのが分かる。

  4. Stratasys F770 - ABS
    方式:FDM
    材質:ABS
    積層ピッチ:0.18mm
    偏差:⭕️0.021mm ~ 0.031mm
    寸法精度としては優秀。全体的な歪みの傾向もほぼない。しかし、0.18mmの積層ピッチによって表面は明らかな段差を感じる。鋳造模型としてはそのままでは使用できない。

  5. Stratasys F770 - ASA
    方式:FDM
    材質:ASA
    積層ピッチ:0.18mm
    偏差:⭕️0.049mm ~ 0.070mm
    寸法精度としては優秀。全体的な歪みの傾向もほぼない。しかし、0.18mmの積層ピッチによって表面は明らかな段差を感じる。鋳造模型としてはそのままでは使用できない。

  6. Form 3L
    方式:SLA
    材質:Rigid 10K Resin
    積層ピッチ:0.10mm
    偏差:❌️0.350mm ~ 0.367mm
    Stratasys J55より寸法精度は高い。しかし、約0.40mmの寸法精度では鋳造模型としては使用できない。

  7. Moment
    方式:FDM
    材質:PC
    積層ピッチ:0.10mm
    偏差:❌️0.505mm ~ 0.523mm
    材質の特性の影響もあり、表面はとても粗い。寸法精度としても約0.50mmでは鋳造模型としては使用できない。

  8. Raise 3D Pro 2
    方式:FDM
    材質:ABS
    積層ピッチ:0.05mm
    偏差:❌️約0.500mm
    0.50mmを超える偏差が見られる。また製品の中心から外側にかけて同心円状に偏差が広がっていく傾向が読み取れる

実験結果のまとめ

  • 表面がきれいな光造形方式よりも、表面に積層痕(段差)があるFDM方式のほうが寸法精度が高い傾向が見られる

  • より寸法精度の高いFDM方式でも、積層ピッチを粗くしたほうが寸法精度は高くなる。ただし、積層ピッチが粗い分、表面の仕上がりも粗くなる

考察

なぜ、積層ピッチが細かいほうが寸法精度が悪化するのか?推測ではあるが、熱収縮や硬化が影響しているのではないかと考えられる。

  • 積層ピッチが細かい場合

    • 1回で出力される体積が小さい

      • 材料がより早く冷却され、より早く硬化する

        • よって、熱収縮や硬化による寸法の変化がより大きくなる

  • 積層ピッチが粗い場合

    • 1回で出力される体積が大きい

      • 材料の冷却や硬化が緩やかになる

        • よって、熱収縮や硬化による寸法の変化がより小さくなる

このような特性があるのではないか?と考えている。よって、3Dプリンターでは仕上がりは滑らかで、よりきれいな見た目なものが、寸法精度が悪くなるという、一般的な感覚とは逆行する現象が発生する。

どうすればいいの?

当社では現在このように3Dプリンターを使い分けています。

  • 寸法的な正確さが必要ではなく、滑らかな表面、造形の再現性が重要なもの

    • 光造形タイプの3Dプリンターを使う

  • 300mmを超える大型のもの

    • 大型の3Dプリンターを使う

      • 積層ピッチが1.0mmクラスになるので表面は粗くなる

  • 工業的な寸法精度が求められるもの

    • FDM方式の高精度に対応した材料の3Dプリンターを使う

      • 造形サイズはもっぱら300mmが限度となる


試験で使用した3Dプリンターの紹介

Markforged X3

当社の主力機。専用材料のOnyxが優秀で高い寸法精度、0.1mmの積層ピッチでもきれいな仕上がり、高強度ということで大活躍です。

Stratasys J55

寸法精度があまり良くなく、反りも大きい。フルカラーということからも工業部品よりもデザイン寄りの3Dプリンターという印象です。

Stratasys F770

Stratasysのフラッグシップ機。抜群の造形範囲と造形スピードを持っている。高い寸法精度を持ち、高度な温度管理によって反りも非常に小さいものがプリントできる。大型造形専門ということで最小積層ピッチが大きいというのが玉に瑕。

Form 3L

光造形のメジャーな機種。光造形らしい特性を持っている。やはり工業部品よりもデザイン向けといった印象です。

Raise 3D Pro2

工業用3Dプリンターのベストセラーだと考えています。リーズナブルな価格のわりに高性能。樹脂3Dプリンターを導入してみようかな?と思ったら、とりあえず買っておけばいいと思う。

Moment

Raise 3D Pro シリーズと同じようなグレードの3Dプリンター、Raise 3D Proとほとんど変わらない特性です。やや造形範囲が広いというのがメリット。

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