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エンジニアによるプ譜を活かした戦略的思考法

なぜこの記事を書いたのか?

『私は会社員でエンジニアである。経営コンサルタントではない。』

エンジニアであるため、プロジェクトマネジメントについて考えることもあり、2つnoteの記事を書きました。

プロジェクトに関わることでプロジェクト譜(以下、プ譜)と出会い、プロジェクトマネジメント下手でもプロジェクトマネジメントを考える機会を得ました。
プ譜と出会ってから3年経ち、まだエンジニアではあるものの、リーダー的ポジションや管理職的ポジションが見えるに従い、うまくやれるのか不安を感じます。
マネージャーとして、うまくやるためには戦略的に考える重要性を感じてつつ、戦略的に考える力をつけなければと日々悶々としているところです。

私事から少し離れて広い視点で考えると、現代社会は経済の発展、技術革新に伴い、福祉、教育、行政など様々な領域で複雑な問題がでてきており、日常生活でその問題にさらされることも多くなっています。
これらの問題はトップダウンですべての問題が解決されることはなく、現場から解決(ボトムアップ)せざるおえない場面が増えていると感じています。
複雑な問題のため、戦略的に考えることが必要であるが、いざ戦略的に考えrるとなっても、手が止まってしまうか、行き当たりばったりになりがちです。私個人だけでなく社会においても、現場でつかえる戦略立案の手法が今後必要になってくると想定しています。では、戦略立案の手法をどこから学ぶと良いかと見渡すと、常に不確実さにされされている経営、特に経営戦略にヒントがあるのではと考えます。
また、プ譜は紙1枚で活動をまとめられる利便性があり、刻々と変化していく現場での運用に適しているとも考えています。

そこで、経営戦略の方を取り入れながら、プ譜を活かして実践的な手法を見出していくことをテーマとしました。手法を見出すにあたって、経営戦略の書籍を読み漁り、題材として複数回の企業分析を取り組んだ中で得られた知見を記事にしています。
以降、戦略の導き方とプ譜をどう活かすかについて記載しています。

良い戦略とは何か?

みなさんは、戦略と言われると何を連想するでしょうか?小難しい言葉を並べただけの役にたたないもの?できもしない目標?いろいろあるのではないでしょうか。戦略という言葉は便利にいいかげんに使われやすく、世の中で戦略と読んでいるモノも玉石混淆の世界です。戦略を導くにあたって、まず先人の言葉をお借りしますと

状況が困難であるほど、行動の調和と集中を図り、問題解決や競争優位へと導くのが良い戦略である。

「よい戦略、悪い戦略」 著:リチャード・P・ルメルト

「良い戦略」となるには問題解決に導かれなければならないとあり、達成できない目標では少なくともないです。会社でいうとビジョン(実現したい未来)が近いかもしれないです。しかし、ビジョンでは粗すぎます。逆に、具体的な行動計画はどうでしょうか?行動計画を作るために戦略を利用するのに、戦略がないと行動計画が作れない事態になるので、行動計画では細か過ぎます。戦略の要素は、ビジョンと行動計画の間にあり、それらを結びつける存在に答えがありそうです。

戦略の要因について、著書「経営戦略の思考法」では、複数の経営戦略学派を分類した結果、経営戦略において時間展開・相互作用・ダイナミクスの3次元のやりとりが、重要な知識発達の契機になっていると述べています。

時間展開・相互作用・ダイナミクスでは、人々の相互作用が時間の流れで繰り広げられ、良循環・悪循環について思考します。この時間展開・相互作用・ダイナミクスに対する思考法として、要因列挙法とメカニズム解明法という2つの方法が紹介されています。
要因列挙法は、ある結果に対して原因となる要因を複数列挙する思考法であり、メカニズム解明法は、時間的に展開されていく要因の力学的相互作用を解明する思考法です。

要因列挙法とメカニズム解明法

要因列挙法を「経営戦略の思考法」で紹介されているインテル社を例にしますと。インテル社が高い利益率を出している原因・理由(要因)を考える際に、プロセッサー事業者であるということが上げられます。しかしプロセッサー事業者すべて高い利益率かというと、そうではないので場合もあり、他にも理由が考える必要があります。
例えば、デファクト・スタンダードとなっている、ブランド・イメージといった感じで複数列挙していきます。結果に対して網羅的に原因・理由を列挙していく思考方法です。

要因列挙法の例

要因列挙法は原因・理由となる要因は列挙できますが、時間変化や相互作用はわかりません。
また、外部環境や内部環境を考慮しながら、どうやって要因を列挙していくかも課題になります。

次にメカニズム解明法ですが、要因の時間変化と相互作用を考慮していきます。再度インテル社を例に上げると、図「要因列挙法の例」をもとにさらに深堀りし、インテル社の利益率は高いシェアとパソコンメーカーへの交渉力が土台であると位置づけます。シェアはブランド・イメージで強化され、パソコンメーカーの高い交渉力はシェア、ブランド・イメージ、補完財の充実により強化されます。また、ブランドイメージは交渉力→キャンペーンからも強化され、循環構造を描きながら、利益率がどんどん強化されるという戦略を導きます。

メカニズム解明法の例

メカニズム解明法で、要因の時間変化と相互作用を考慮することで、優位性や競争力などが強化される流れを理解するとともに、戦略の論理的飛躍を抑え、選択と集中を明確にすることで戦略を形成していく思考法となります。

プ譜を活かして経営戦略を考える流れ

要因列挙法とメカニズム解明法で戦略を形成していく流れを紹介しましたが、プ譜をどのように取り入れ、活かしていくかを紹介します。

プ譜とは?

プ譜とは、異なる抽象度でプロジェクトなどの活動を捉え、考える方法です。具体的には下記のような枠組みのフォーマットを利用します。

プ譜のフォーマット例

廟算八要素には、外部・内部の状態について、獲得目標には最終的に得たい目標、勝利条件は活動の成功を定義する条件、施策は行動内容について、中間目的は行動をグルーピングするような行動の目的を記載します。
またプ譜は継続的に記述する側面もあり、棋譜のように局面として、変化を記録することもできます。

詳細については、書籍をご覧いただくのがよいかと思います。

プ譜を戦略的思考に利用する場合、重要な要素が勝利条件と中間目的になります。獲得目標=ビジョン、施策=行動計画とおくと、勝利条件+中間目的が戦略的要因となります。ビジョンを具体化したものが、戦略的要因(勝利条件+中間目的)となり、逆に行動計画を抽象化したものでもあります。

プ譜と戦略的要因の関係

先述の要因列挙法とメカニズム解明法との対応付けで考えると、インプットとなる内部および外部環境の理解した結果をプ譜へとまとめます。そして、要因列挙法をプ譜の勝利条件・中間目的の導出が担います。
プ譜をインプットとしてメカニズム解明法へとつなげる考え方です。

戦略導出とプ譜の関係

利用例の説明

私が以前独自に行った株式会社10Xさんの企業分析を例に、要因列挙法・メカニズム解明法+プ譜の例を紹介します。

【企業分析 with プ譜③】株式会社10X

公開情報から、ビジョン、過去の取り組み、企業文化、ターゲットなどの情報をプ譜にまとめていきます。
書きやすいのは廟算八要素、獲得目標、施策になります。勝利条件、中間目的は、施策を埋めながら中間目的を徐々に形成していき、最後に勝利条件を考えるという流れで作成しました。

プ譜による要因列挙
メカニズム解明

このように企業活動をプ譜として記述することで、要因列挙を行い、メカニズム解明へと繋げます。
また、プ譜は局面のして継続的に記録できるため、状況の変化があれば戦略を更新することができます。そのため、創発的な戦略においても効果を期待できます。

おわりに

要因列挙法とメカニズム解明法で戦略を組み立てつつ、プ譜によって要因列挙法を行う一連の流れを紹介しました。
今回、戦略立案は専門家が何ヶ月もかけてつくるのではなく、現場で軽量かつ継続的に行える方法を模索しました。
私自身、まだまだ学びの旅路の途中ですが、少しでも読んでいただいた方のお役に立てれば幸いです。

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