生協DX学習会レポートvol.7~ビジネスを“Day1”から始めよう!~(前編)
DX学習会も7回目まで来ました。3回目に引き続きウルシステムズの漆原茂さんを講師としてお招きしました。このnoteでは、漆原さんによる生協DX学習会の様子をお届けします!
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ウルシステムズの漆原茂さんのプレゼン「ビジネスを“Day1”から始めよう!」では、短期間で開発したものを頻繁に更新していくアジャイル開発や、クラウドツールの導入、スタートアップのサービス活用などについてお話しいただきました。
プレゼン「ビジネスを“Day1”から始めよう!」
●外部のツールを積極的に使う
今回はとにかく素早くビジネスを始めるにはどうするかという話をしていきたいと思います。
ポイントになるのは、「作り過ぎるのをやめましょう」ということです。最初から全部自分でシステムを作ろうとすると、どうしても機能をいろいろと盛り込みたくなります。そして、結局リリース後に使わない機能が出てくることになるのです。
そこで、なるべく小さく作ろうというのがアジャイル開発の考え方ですが、それでも数カ月程度はかかると思います。実は、もっと手軽に“Day1”からビジネスを始める方法があります。それが最近出てきている外部サービスとアジャイル開発を組み合わせる方法です。アジャイル開発でゼロから全部作るよりも更に短い時間でサービスを始められます。
●米Uberも外部サービスを駆使してスタートした
まずはアメリカの配車サービス、Uberの事例をご紹介します。彼らが最初にサービスを立ち上げたときは、実は外部のサービスをふんだんに使ったんですね。例えば地図はグーグルマップですし、携帯電話のSMSでドライバーとやりとりするチャット機能は、twilioというクラウド型のメッセンジャーサービスを利用しています。そして決済にはPayPalを導入したんです。
彼らのサービスで一番重要な部分は「移動したいお客様とそれを運びたいドライバーのマッチング」です。Uberはその機能の開発に徹底的に注力し、あとは外部サービスを統合することで、素早くサービスを実現したんです。
とても面白いのが、その後の展開です。Uberが成長して、サービスを外部APIとして提供するようになったことで、今後はUberの配車サービスがGoogleマップに取り入れられるようになりました。Googleマップで地図を開いたユーザーがアプリ内からUberの配車を依頼できるんです。
UberのAPIはこのほかにも、レストランの予約サービスのオープンテーブルやユナイテッド航空、スターバックスなど、さまざまな企業に導入されています。外部サービスを活用してスタートしたサービスが成長し、APIとしてエコノミー的に成立して相乗効果を生み出している好例だと思います。
●すぐに導入できるおすすめサービス
Uberの事例に登場したもの以外にも、現在は本当にいろいろなサービスが提供されています。今日はいくつか参考になりそうなものをご紹介したいと思います。
まずは「Shopify」というサービス。これはECサイトを簡単に立ち上げられるものです。最近、同様のEC系のサービスはとても増えています。
例えば、新しい商品を作って販売したいというときに、これを使えばサッとお店を立ち上げて販売できます。そして、本当に必要な機能を見極めた上で、やはり自社できちんと作りたいということであれば、そこから改めてアジャイルに開発することもできます。
「ペライチ」は、無料で簡単にサイトを作れるサービスです。特にマーケティングのランディングページなどに便利です。ランディングページはGoogleにヒットさせてリンクで誘導できればよいので、使い捨て的なページで構わない。そこにはペライチのようなサービスがすごく使い勝手がいいんですね。テンプレートもふんだんに用意されているため、さっと作れちゃいます。
続いての「ロジクラ」は、在庫管理のためのツールです。在庫管理や倉庫管理、入出庫管理などいろいろな機能があり、ユーザー側で必要な機能を選んで使うことができます。使い勝手もよく、Day1の導入ではおすすめかなと思います。
「Safie」という監視カメラのクラウドサービスもあります。監視カメラシステムを自前で全部用意するとかなりの投資が必要になりますが、Safieは利用料だけ。安く早く使い始めることが可能です。無人倉庫でのトラブル発生の検知や、小売店の防犯のためなどに使われています。
●本当に大切なことに集中するために、徹底的にサボる
なにか新しいサービスを作りましょうとなったときには、「徹底的にサボる」ことをおすすめします。とにかく極力作らない。本当に大事な開発だけに全てを集中し、ほかの部分は外部サービスを使ってそれらしく動かすことを優先するという意味です。一番大事な顧客価値にのみ注力することがポイントになります。
その後、サービスのイメージや強みが見えてきた段階で、必要であれば改めてアジャイル開発できちんと作っていくという流れがベストです。
スピードを優先するあまり、すぐに開発に着手しようとしても、その段階ではどうしても重要な要件がわからないんです。当然ブレたり手戻りしたりするんですね。使い捨てる部分が多くなってしまいます。一方、外部サービスで始めておいて必要機能を絞り込んだ後であれば、そこまで手戻ることは少なくなります。すぐ始めたいからこそ、作らない! 新しいプロジェクトにはぜひ検討していただければと思っています。
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本当に大切なことに集中するために、外部サービスを使って「サボる」。このポジティブな意味での「サボる」は新しい施策を始める前のキーワードにしたいと思いました!
次回(後編)では、良い外部サービスを見極める方法や、トライ&エラーを繰り返して成長していけるチームづくりのポイントについて紹介します!