人間のバイアスを知る
こんにちは。
税理士法人上坂会計 DXメンターチームの笹岡です。
人間、生きていれば毎日様々な判断を下します。
ケンブリッジ大学の研究によると、「ランチは何食べよう?」とか「今日はどっちの道から帰ろう」のような細かいものを含めれば、人は1日に最大3万5,000回も決断をしているそうです。
非常に多いですね!
人の判断には、その人なりのなんらかのバイアス(思い込み、先入観)があるものです。これまで見てきたこと、聞いてきたこと、勉強してきたこと等、様々な知識、記憶に判断が引っ張られます。
このバイアスにより、考慮すべきことが十分に考えられなかったり、複数の選択肢のうち特定の選択肢を過大に評価してしまうなどして、判断を間違えることもあります。小さい判断なら問題ないのですが、仕事の中での判断だったり、自分の人生における大きな判断であれば、少しでも正しい判断をしたいですよね?
そのためには、自分にはどういうバイアスがかかりうるのか、知っておくことが重要なのではないかと思います。
行動心理学という学問があります。行動心理学の本を読むと、人間の認知に関わる様々なバイアスが載っております。今回、これらのうちいくつかを紹介してみたいと思います。
正常性バイアス
まずは、正常性バイアスです。
これは、本当は異常な事態が発生しているのに、正常な状態だと誤認してしまうバイアスです。
例えば、お客様と接しているときに、お客様が少しムスっとしていたとします。このとき、「今日はたまたま機嫌が悪いのかな? まあ、そういう日もあるよね」などと判断してしまうと、これは正常性バイアスに囚われている可能性があります。「問題が起こっている」「自分に何らかの非がある」という風には出来るだけ考えたくないという想いから、正常の範囲内の出来事だと判断してしまっています。
もしかしたら、自分の対応に不服があってムスっとしているのかもしれません。もしそうだった場合、そのまま対応が改善されないと、お客様からクレームを頂いたり、今後取引してくれなくなってしまうかもしれません。
ちょっとの違和感を大切にするように心がけることが大切です。
生存バイアス
生存バイアスは、成功した対象(=生存した対象)のみを見て物事を判断してしまうバイアスになります。
今の時代、成功事例と呼ばれる話はたくさん見聞きします。成功者の自伝書籍や、YouTubeなどで活躍しているインフルエンサーの動画には、たくさんの成功話が出てきます。その中で、「〇〇すれば成功する」「私は毎日✖✖をして成功した」といった話がわんさか出てきますが、これらを鵜呑みにしてしまうことが生存バイアスです。
成功者たちが「〇〇すれば成功する」と言っていると、もっともらしく聞こえるのですが、この人たちの言葉から、さも〇〇をすることが成功の秘訣であると判断するのは早計です。なぜなら、〇〇をしていても全然成功していない人たちが大量にいる可能性があるからです。私たちの目に触れやすいのは成功者で、成功していない人たちの情報は自分たちには基本的には届きません。つまり、片方の事例だけを見て、もう片方の事例を見ていないため、サンプルが偏ってしまっているのです。
そうなると、成功者の人たちの話を無思考に鵜呑みにしてしまうと、判断を間違える可能性も高くなります。
確証バイアス
確証バイアスは、自分の思い込みや願望を強化する情報ばかりを収集していくバイアスです。
例えば、政治である政党を支持している人がいたとします。この人は、その政党のことが好きなので、その政党の良いニュースは調べる一方で、対立する他の政党のことは好きではないため、それらの政党の悪いニュースばかりを好んで読みます。そうすると、支持している政党のことはどんどん好きになる一方で、それ以外の政党のことはどんどん嫌いになり、その人の考えもどんどん強固なものとなります。
意識的に反対意見を見ることをしないと、人間の頭は固くなっていってしまうのです。
最近、フィルターバブルやエコーチェンバーというものが問題になってします。フィルターバブルとは、ネットで調べものをしている際、AIがその人に合った情報をレコメンドして積極的に提供することで、無意識に思考の偏りを作り出してしまうことです。エコーチェンバーは、SNSなどで自分に似た考えの人たちとばかり繋がることで、自分の周りが自分と同じ意見の人たちだけになり、自分の意見が大多数だと勘違いしてしまうことです。
どちらも、確証バイアスを作り出す大きな要因となり得ますので、十分に気を付けていかなければなりません。
バイアスの盲点
行動心理学などを通じてバイアスについて学ぶと、次第に「自分はバイアスについて勉強したから、もうバイアスに囚われないぞ」と思い込むことがあります。このことをバイアスの盲点と言い、この状態も立派なバイアスの一種です。
例え知識として知っていても、人間はバイアスをゼロにすることは基本的には出来ません。人間には感情や好き嫌いといったものがありますので、真に公平に物事を考えることが出来ず、どうしても考え方に偏りは出てしまいます。にもかかわらず、バイアスについての知識があるからと言って自分にはバイアスが無いと誤認してしまうことは、とても危険です。
なので、基本的には自分にはバイアスがあると考えて、バイアスによって判断を間違えないように、他の人の意見に素直な心で耳を傾けたり、客観的なデータを集めるといった努力が必要になります。
今回紹介したバイアス以外にも、人間にはたくさんのバイアスがありますので、ご興味があればぜひ勉強してみてください!
今回の記事が、少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。
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