しゃべるピアノ/#完成された物語
その男は毎日のように路上でピアノ演奏のパフォーマンスをしていた。
彼の演奏はそれは素晴らしく、観客たちから毎回のように多くの投げ銭による収入を得ていた。
しかし、ある日のこと急に演奏が止まってしまった。
どこからか彼女の声が聞こえたからだ。
「そんなはずはない。彼女はもう…」
分かっているのに、動かずにはいられなかった。
できるなら、彼女にもう一度会って話したい。
気持ちが抑えきれず、彼女を探そうと席を立った瞬間、
「私はここにいるよ。あなたのそばにずっと一緒にいる。」
ピアノから声が聞こえた。
その時、彼女と最後に交わした会話を思い出した。
「私、生まれ変わったら、あなたが弾くピアノになりたいなぁ。あなたが1番輝いてるところ、こんなにも近くで見られるんだもん。」
◆
「あぁ、君はずっとそばで僕を見ててくれたんだね。もっと僕たちの会話、みんなに聞かせよう。」
今日も、彼の弾く優しいピアノの音が観客たちを魅了させるのだった。
了
冒頭にある、#物語の欠片#完成された物語に参加させていただきました!
短い字数の中で初めが決められているのは、なかなか難しかったです。
最後までこれはどうかな〜と思いつつ、えいやっ!と投稿することにしました。
でも企画ものはやっぱり、同じテーマに対して、色んな人の違った発想が見れて面白いなと思いました!
企画を考えて下さった方々、ありがとうございました!