穴の中の君に贈る
「穴があったら入りたい」
そう言って本当に穴に入ってしまった君。
あの日、君の秘密がクラスのみんなに知れ渡ってしまった。
「ねぇねぇ、ほんとの話なの?」
みんなに囲まれて質問沙汰にされた君は、顔を真っ赤にしてうつむいていたね。
僕と目が合うと、さらに気まずそうにしてその場から出ていってしまった。
その日から君は穴の中に入ってしまい、出てこなくなった。
何日も君の姿を見れないのは、こんなにも寂しいものなのか。
早く穴の中から出てきて欲しい。
僕は穴の中にいる君のところへ向かった。
「お願いだから出てきて…!言いたいことがあるんだ。」
聞こえていないのだろうか…
ふぅ…
大きく深呼吸する。
「僕も君のことが好きだから!!」
そうすると、真っ赤な顔をした君がゆっくりと穴から出てきた。
そして真っ赤な顔をした僕と目が合い、二人で笑った。