ヘルプ商店街
私は5歳の頃、母と妹の3人で買い物に来た時、迷子になったことがある。
どんなに叫んでも母の姿は見当たらず、全く来たことがない道に迷い込んでしまった。
泣きながら歩いていると、ある商店街にたどり着いた。
すると、次々と商店街の方がお店から出てきて、泣いている私に話しかけてくれた。
駄菓子屋のおばさんは、食べたことのない飴を渡してくれた。
玩具屋のおじさんは、見たことのないおもちゃで遊ばせてくれた。
商店街の方のおかげで、少しずつ寂しかった気持ちがまぎれて笑顔になっていた。
しばらくすると、遠くから母が私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
商店街を出て、声が聞こえる方へ走っていくと、母の姿があった。
「今までどこにいたの?心配したのよ!」
「商店街の人たちが一緒に遊んでくれたの!」
ほら!と後ろを振り返ると、さっきまであった商店街が跡形もなくなっていた。
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ずっとこの出来事が気になっていて、大人になってから調べてみた。
どうやら私が迷い込んだ辺りには、本当に困った人だけが入れる「ヘルプ商店街」の都市伝説があるらしい。
しかし、これは都市伝説なんかじゃない。
だって、あの時、商店街でもらった飴の袋を今でも持ってるから。
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