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111.9:29 サラ・パレツキーの呪い?ただの本オタクの話

私の趣味の一つは大相撲観戦だ。
北の富士さんの訃報に接し、悲しくて仕方ない。
現役時代についてもちろん知らないのだけれど、NHKの解説を聞くだけでもそのお人柄が伝わってきて、本当に大好きだった。
心より、哀悼の意を表します。


作家のサラ・パレツキーをご存じだろうか。
シカゴを舞台に探偵 V・I・ウォーショースキーが活躍する推理小説、通称ヴィク・シリーズが有名である。

学生時代、推理小説に夢中になっていた時期があった。
様々な小説を読み漁るうちに、きっかけもう思い出せないが、偶然この本を手に取った。
そして、読んですぐに気に入った。
女性の探偵が主人公の小説を読んでこなかったので(というより男性の探偵を主人公にした小説の方が圧倒的に多いのではないだろうか)馴染めるか不安だったが、主人公の格好良さにまんまとはまった。
80年代の雰囲気もとても気に入り、シリーズを次々読み進めていった。

それと時期を同じくして、あるイタリアンレストランのアルバイトの面接を受けた。
面接官は店長の男性で、一通り基本情報を確認した後、趣味の話になった。
勿論、当時履歴書の趣味の欄には「読書」と書いていた私である。
今読んでいる本を聞かれたので、
「はい。サラ・パレツキーの小説を読んでいます。」
と張り切って答えた。
しかし、反応はいまいちだった。
「え?パレツキー?」
「はい、女探偵が主人公の小説ヴィク・シリーズです。」
「それは、有名なのですか?」
「それは分かりませんが、とても面白いです。例えば、…中略…です。」
などと会話したように思う。
ただ、店長は終止不思議そうな戸惑ったような顔をしていた。
「それでは、結果は後日お知らせしますね。」
と言われ、面接は終了した。

そして、後日面接結果が知らされたが、敢え無く落ちたのであった。

それまでアルバイトの面接で落ちたことが無かった私は、とてもショックだった。
今なら、単純に縁がなかったと割り切れるが、当時の私は理由を探し求めていた。
失敗したように感じて、悔しかったのかもしれない。

思い当たるのは、サラ・パレツキーの話を熱く語った時の微妙な反応くらいである。
あまりにもマニアックな(とは最初は思っていなかったが)話をし過ぎて、お洒落な店にはそぐわないと思われたのではないか。
オタクっぽすぎたのか。
サラ・パレツキーの呪いだ。
そんなことを考えた。

そして、私はサラ・パレツキーの小説を読むことをやめてしまったのだ。
今考えると、はっきり言って馬鹿らしい。
ただ、当時の私にとっては、「面接に落ちる」ことで人間性を否定されたように感じてしまった。
友達にも恥ずかしくて言えなかったくらいである。
非常に偏った思考をしていたのだ。

それから年月が過ぎ、最近久しぶりに、『サマータイム・ブルース』というヴィク・シリーズ第一作のタイトルをインターネット上で目にした。
面白い小説を探していたときだった。

話は殆ど忘れているのだが、ヴィクの格好良さや当時夢中になった気持ちが蘇った。
また読みたくなってしまった。
しかし、手元にはない。
処分してはいないが、実家という名の本の倉庫に眠っているのだ。
なんとかして読みたいが、再度買うのはもったいない気もする。
実家の家族に本を発掘してもらうのも不可能。
どうする。

というもんもんとした気持ちを抱えながら、今これを書いている。
Amazonを調べたら、何と23作もシリーズが続いているらしい。
私はどこまで読んだのかも不明である。
今年は年末年始に帰省する予定がないので、自分で本を発掘することもかなわない。
折角のこの気持ちをどうすればいいのだろう。

気持ちのはけ口として、また本の大量購入をしてしまいそうで怖い今日この頃である。
やっぱり、本のオタクだった。

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