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私の履歴書②

こんにちは。前回の更新からだいぶ時間が空いてしまいました。もし続きを待っている方がいて下さったら大変申し訳なく思います。4月から始まった新しい仕事が思いのほかハードだったうえ、DVはポジティブな進捗がほとんどなく、ブログを書く精神的な余裕がどうしてもありませんでした。

言い訳はこのくらいにして、誰にも頼まれていないのに勝手に始まった連載の第2回目です。
第1回目では大学を卒業してから初めて入社した民間企業1社目までを紹介しました。)

IT企業その1 - 製薬業界

リクルーターになかば強引に押し通されて嫌々面接を受けに行ったにもかかわらず、その面接の1発目からいきなり入社意欲が爆上がりし、IT業界はまったくの未経験だったにもかかわらず何とか内定を得て転職することができました。
この会社は製薬業界(と医療機器メーカー)だけをターゲットにしたかなりニッチなIT企業なのですが、ニッチなだけに競争相手もそんなに多くないことや、初期段階の巧みな営業戦略によって、特に日本では圧倒的なシェアを押さえることに成功していたようです。とにかく、後にも先にもあんなに羽振りのいい会社には勤めたことありません。
まず海外出張時の飛行機はすべてビジネスクラスです。外資だとかなりくだらない用事(年始のキックオフだの新入社員研修だの、どれもこれも日本国内で十分できるだろうと思われるような内容)でも平社員がアメリカ本社へ出張させられるというのはよくあると思います。(特に規模の小さいスタートアップ系のIT)。でも平社員からビジネスクラスっていうのは、今のところ後にも先にもこの会社だけでしたね。
日本支社のオフィスも、日本で有数の高賃料をぶんだくると言われるビルにあり、デスクや椅子、備品もかなりの高級品で揃えられておりました。私の給料だって、今考えると仕事内容の割には破格の高待遇でした。要するに無駄遣いだらけの会社です。
ここに私は一応営業職として入社しました。一応というのは、営業として数字のノルマはあるものの、顧客や潜在顧客に対して能動的に営業をしかけるような類の仕事ではなかったからです。顧客側からやってくる案件を着実にクローズしていけばいいだけです。自社製品の売り込み、決定権のある人たちにすり寄っていくといった、私がもっとも苦手とする類の泥臭い仕事は全く求められませんでした。
必要だったのは無数にある案件を管理して状況を把握し、いかにタイミングよく契約に持っていくか、ほぼそれだけです。
腐っても営業ですので四半期末の追い込みみたいなものはありますし、気が進まない交渉ごとも必要でしたが、お客さんと普段からいい関係を構築し、先方の無理を聞いて「貸し」を作っておくと、こちらが困った時はお客さん側がひと肌脱いでくれたりするものです。
ところで、私の他にもいわゆる「営業」をする人たちは別にいて、私の何倍もの給料をもらっていました。いちばん大変な仕事をしているのですから、たくさんお金をもらうのは当たり前なのですが、その金額が桁違いに多かったです。ここで言っているのは比喩ではなく、文字通り桁が多いのです(俗にいう1億円プレイヤー)。それまで私の中では、お金持ちというのはみんな社長や経営者など「ビジネスを持っている側」だとばかり思っていたので、サラリーマンでもこんなにお金をもらえる人がいるんだなあ、としみじみ感じたものです。

この会社ではとてもいい同僚や上司に恵まれたのですが、非常に気まぐれな日本支社長の思いつきで配置転換があり、私は社内でものすごく悪名高い女性の部下にされてしまいました。もちろんソリも合わず、しまいには「なんでこいつのボーナスのために私が働かなきゃならないんだ」とまで思うようになりました。あの頃の私は非常に未熟で(今も大して変わってないですが)、職場で私情と実利のバランスを冷静に見据えて懸命な判断をするということがまったくできませんでした。
仕事自体は前述の通りそんなに難しいものではないので、案の定飽きがきていました。もともと営業の仕事に情熱を燃やすタイプではないので、売り上げが関係ないポジションにつきたいな、という単純な理由でプロフェッショナルサービス(お客さんからお金をもらってプロジェクトを担当する部署)に興味が出てきました。社内での異動も打診しましたが、あまりいい返事がなかったため転職活動を始め、相当な紆余曲折を経て(非常に込み入った話なので機会があれば別記事にします)内定を得ることができました。
こうして、最初のIT企業は3年弱で退職しました。

IT企業その2 - ERP

ライフサイエンスを完全に離れ、企業向け基幹システム(ERP)を手がけるドイツ発のIT企業です。実はここの会社には正確にいうとプロジェクトマネージャではなく、俗にいうCSM (Customer Success Manager) のポジションで入りました。
その昔は、ソフトというのはハードウェアと同様に1回売り切りのビジネスでした。マイクロソフト・オフィスを使いたければヨドバシカメラに行ってCDロムに入ったソフトを買い、それを自分のコンピュータにインストールして使う(もしくはウェブサイトで購入してダウンロードする)、というソフトウェアの買い方です。
20年くらい前からでしょうか、クラウド技術の進歩に伴って、このような「1回売り切り型」ではなく「購読型」のソフトウェアが出てきました。新聞購読のように月単位(もしくは年単位)でお金を払って使いたい期間だけソフトを使い、いらなくなったら契約をやめればいい、というタイプの買い方です。
業務用のソフトは導入にものすごいコストがかかります。ソフトウェアそのものの金額も莫大ですし、そのソフトを個々の企業の使い方に合うようにカスタマイズしたり、脆弱性に対するアップデートなどのメンテナンスをしたり、ランニングコストもものすごくかかります。そして、1回売り切り型ですから、もし同じソフトに新しいモデルが出たとしても、自分が買った旧モデルを使い続けなければなりません。新しいモデルが欲しければまた膨大なお金を払って書い直す必要があるのです。
一方、購読型(サブスクリプション)は、ソフトそのものを買うというよりはお金を払って一定期間ソフトを使う権利をもらう、つまりレンタル・賃貸に近いイメージです。そのため上記のような膨大な初期コストやメンテ費用もかかりません。レンタルですからメンテは貸し主がしてくれるのです。
通常こういったサービスはユーザー数に応じて課金されるので、規模の小さい会社ならコストも少なくて済みます。
それまでは一定規模の大企業しかいいソフトを導入できませんでしたが、サブスクモデルのおかげで資金力のない中小企業でもイケてるソフトウェアを使えるようになったのです。
皆さんも何かしらのサブスクサービスを購入されたご経験があると思います。新聞でもアマゾンプライムでもSpotifyでも何でもいいです。これらのサービスを使いこなして十分に満足していれば契約を続けるでしょうが、もしそうでない場合どうでしょう。
「もとがとれていない」と感じたら、当然そのサービスを解約しますよね。もしくは、同じようなものでもっと安い、もっと使いやすいものがあれば、そちらに切り替えようと思うのが普通です。
サブスクビジネスのリスクはここにあって、少額投資で誰でも簡単に買える代わりに、他にとって変わられる危険、解約される危険があるのです。
ここまで来てようやくCustomer Success Managerに話が戻ってきます。CSMの仕事は、サブスクモデルのビジネスにおいて「お客さんが『次の契約満了時にまた契約更新しよう』(あわよくばユーザー数を増やそう)と思ってくれるように仕向ける」というものです。お客さんがその製品を使って、当初の目論見通りの効果や成功を得られるように手助けする、ということですね。
私が入った会社は業界では最大手のひとつで、企業勤め(特に外資)をしたことのある人なら知らない人はいない有名企業です。CSMというポジションも自分の適性とマッチしているという自信があり、希望いっぱいで入社したのですが、とんでもない落とし穴が待っていました。
まず、この会社の製品が最悪であることに入社後気づきました。私のリサーチが足りなかったのですが、運の悪いことに私は入社するまでこの会社の製品を実際に使ったことがなかったのです。これだけ有名なのだからさぞかし優れたソフトなのだろうと、深く考えもしませんでした。ところが入社してみると、会社で使わされるソフトのすべてが使いにくくて仕方ないのです。誰でも使えるような一般消費者向けのソフトとはかなりの隔たりがありました。はっきり言って前時代的な代物です。自分が最悪だと思っている製品をお客さんに活用させるなんて、とてもじゃないけど無理な話です。それどころか「こんなもの使うのはお金の無駄です。今すぐXX社のソフトに切り替えたほうがいいです」とネガキャンしたくなるくらいでした。
そしてもうひとつ決定的に我慢できなかったのが「会社の文化」です。正確には「私が配属された部署の文化」ですね。ドイツ企業という点から想像できる通り、会社全体としてはかなりドライな雰囲気のいわゆる外資企業でした。むしろ私はそういうのを望んでいたのですが、私が配属されたのはその会社の中でも浮いた部署で、非常に結束力が強く仲間意識の強い「ザ・日本企業」のような雰囲気でした。極め付けは業務後にカラオケに誘われたことです。Noと言えない気弱な日本人の私は、最初の2、3か月で心底摩耗してしまいました。
根性なしだと思われるでしょうが、無理なものは無理ですし、嫌いなものは嫌いなのです。そんなわけでこの会社はなんと4か月で退職しました。
これは今のところ自分史上最短記録です。できれば今後も更新したくない記録ですね…。

(次回へ続く)

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