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消えた鍵(カッコ)

「消えた鍵カッコ?」
「ナンダそれ?」
「そんな顔をするなよ」
「文字通り鍵カッコが消えてしまった世界さ」
「文章を書く時、特に会話文を書くのに鍵カッコがないとなんだか落ち着かない」
「それぞれが話す言葉に力がないような気がする」
「わかりにくいな」
「鍵カッコがなきゃオレがひとりで話していると思うかもしれない」
「ちゃんと相手がいる」
「なんだよ」
「いつも見えない誰かと会話しているとか言うなよ!」
「句読点がなくなるよりいいかもしれない」
「そう言えば五十音をひとつずつ使えなくしていく小説もあったな」
「何事も実験」
「何事も経験」
「書き方ひとつで世界は変わる」
「鍵カッコにこだわらない」
「ヨシ!」
「この考えを大事にしまっておこう」
「箱はある」
「鍵は……」
「消えた!?」

……カッコばかりつけてるうちになくしたんじゃないか?


今回もシロクマ文芸部さまの企画に参加させていただきました🙏
筒井康隆さんの小説、タイトルと表紙買いでした🐥