神保町中国学書店案内~附:神保町周辺の書店~
凡例
・本書は、神保町を中心に、近隣地域にも広げ、中国関係の本を扱う書店をまとめたものである。とくに中国関係の人文書関連の取り扱う書店を中心に書いている。
・2024年11月8日現在の書店情報であるため、最新の情報は、ネットや店舗にあたって調べられたい。
・西の九段下から、神保町、東の小川町へと書店を列挙していく。なお、神保町以外の近隣書店は最後にまとめてある。
・最後に、主観をまじえた文ではあるものの、宣伝、利害誘導は一切ないことをここに記しておく。
アクセス
神保町駅…東京メトロ半蔵門線、都営三田線・新宿線。
九段下駅…東京メトロ半蔵門線・東西線、都営新宿線。
※神田神保町とはいうものの、神田駅からは少々遠い。中央線を利用の場合は、御茶ノ水駅から駿河台の坂を下ると神保町と小川町の境に到着する。
九段下から神保町の中国学系書店
〇松雲堂書店
専大前交差点の近くにある書店。漢詩文創作の書籍や詩語表、韻書に強い。自社出版物もその関係のものが多く、『詩語集成』や『史記会注考証』などのテキストの販売もある。太刀掛呂山『詩語完備 だれにもできる漢詩の作り方』は、こちらか後述の東方書店で買いやすい。
〇燎原書店
新刊の中文書を売る書店。新古書も多い。中医学に強いが、古典の中文書も多い。新古書は背表紙に丸いシールが貼ってあり、半額セールを行うことがある。日本書は少ない。なお、専修大学の前にあるが、茶色のビルの二階にあり、少々わかりにくい。
〇山本書店
古書、古典籍に強い。最近、古典籍の売り場が広くなってきた印象がある。研文出版はこの山本書店の出版部である。A1出口の前にあるので、結構印象に残る方も多いであろう。
〇通志堂書店
中国アジア関連の本を扱う古本屋。靖国通りより北側に一本入った路地にある。向かいは、コスメショップで、六一書房の隣。恐らく、清代の納蘭性徳の号からこの名前になっている。非常に本が多く、かつ通路が狭い。在庫は、恐らく神保町有数であるほどなので、日本の古本屋か電話メールで事前に問い合わせるとスムーズ。しかし、比較的手に入りにくい本が安く手に入ることも多い。台湾の古本もよく扱ってくれる珍しいところでもある。また、店主の方がかなり本を教えてくださるのも良く、所謂、古き良き古本屋。
〇東城書店
店舗というよりは事務所型の店。古典籍が非常に強いが、中文書も安く置いてあることが多い。全集ものは少し高めであるが、日本にあまり出回っていないものもある。注文は「日本の古本屋」のサイトで確認し、店舗で直接見たい場合は一言連絡するとよい。
〇内山書店
新刊の中文書と日本書、またアジア関連の本を扱う。すずらん通りにある。東方の向かいにあるといってもよい。一階レジのうしろに新釈漢文大系や中華書局の正史、また、研究書が陳列されているが、その眺めは壮観である。三階には、古書もあり、中国共産党関連の本や古典関係が強い。
ちなみに、上海で、内山完造が魯迅をかくまったのは有名な話だが、内山完造の弟の子孫がいまは営んでいるようである。
〇東方書店
すずらん通りを挟んで、内山書店の向かい、東京堂書店の正面にある。新刊は東方書店か内山書店で買うのが定番となっているが、積極的にSNSの宣伝を行い、また自社サイトの書誌情報はかなり質が高い。中国語で書かれていることもあるが、半分ほど日本語の情報や目次などが書かれていて、参考になる。店舗は、少し狭いが陳列がよく管理されている印象があり、店員さんも優しい。神田神保町の書店でもかなり入りやすいように思う。論文雑誌や同人誌も多く取り扱う。
〇光和書房
店舗は、駿河台の交差点、事務所は白水社の正面にあり、事務所中心の店。店舗は日本書と古典籍が並んでいる。「日本の古本屋」のサイトには、中文書や台湾書も並んでいる。しかし、中国に在庫を置いているらしく、取引には時間がかかるとともに値付けは高めの傾向。
附:ワゴン
※「ワゴン」とは、店前や店の中でも入り口に置かれる特価本コーナーのことである。中国関係の本が特価で売られる場合は、大体ほかの分野を専門とする書店が販売することが多い。つまり、専門外の書籍なので特価で売るということである。
〇原書房
もともと易占いや浮世絵を専門とする店だが、店前のワゴンや入って左側は、中国関係の本が置いてある。ワゴンには、シリーズもののバラや掘り出し物が多い。
〇誠心堂書店
古典籍と書が専門。白山通りを北上するとある。レトロな建物に店をかまえているが、千代田区の文化財になっているらしい。また、店主の方は和本の扱い方の本を出されている。
〇日本書房
白山通りを水道橋方面に北上するとある。隣に大きい駐車場があるので、それが目印。もともとは国文関係の専門書店だが、漢文学の本も充実している。ワゴンには、和本や漢文学の専門書が並ぶことも多い。たまにお店の猫と犬とがいる。
〇西秋書店
白山通りを北上し、鯛焼き屋を左折するとある。日本書房とは親戚。ここも国文専門だが漢文学の本がある。ワゴンは、文庫本やシリーズものがおおい。
〇大雲堂書店
神保町交差点の近くにあり、靖国通りに面している。茶色のビルにある。辞書がよく置いてある。中のレジ前には、漢文学関係の本が多い。
〇一誠堂書店
神保町でも屈指の老舗。石造りの建物で、昭和初期に建てられたらしい。古書全般を扱い、漢文学や東洋史、哲学も扱う。ワゴンは、シリーズものや文庫が多い。
〇澤口書店
何店舗かあるが、靖国通り沿いの巌松堂ビルの店はよくにぎわっている。店前のワゴンは文庫、単行本、聖書、全集のバラなど幅広く扱っている。ただし非常に回転が速く、見逃すとすぐに買われてしまう。
〇東陽堂書店
東洋史などの本が置いてあるが、ワゴンには、仏教書やバラの本も多い。
〇湘南堂書店
すずらん通りにある。たまに流通が少ない本が安く売られることも多い。
〇八木書店
靖国通りにある国文の書店。自社出版物や「ソッキ本」といわれる新刊のような古書のような本も売られている。
〇三茶書房
文学、全集に強い。ワゴンには珍しい岩波文庫が並んでいることも。
附:神保町周辺の中国学系書店
〇琳琅閣書店
本郷の東大の隣にある。古典籍に強いが、中文書も多い。店内の前にある格安コーナーは、安く一見の価値あり。しかし、現在(2023年10月)、ビルの改装中であり、今後店舗の様子がどうなるかは不明。
〇亜東書店
中文書の新刊書店。内山や東方とは違う品ぞろえである。店舗もあるが、どちらかというと、ネットでの販売が中心。名古屋に支店がある。なお、昔は淡路町にあったが、今は上野と入谷の間にある。
〇五十嵐書店
早稲田にある学術書や一般書を売る古書店。地下一階には、専門書がよく並んでおり、またネットにも在庫登録が多い。
〇鶴本書店
ネット販売の店。在庫が多い。最近は、古典籍もよく売られている。
〇書虫
ネット販売の店。新刊書を扱うが、ほかの新刊書を扱う書店よりもなぜか安く、早いのが特徴。
〇上海学術書店
ネット販売の店。大量に本を頼むと大口割引がある。またセールも多い。中国の古書サイトである「孔夫子」の本や学術論文も取り寄せをしてくれる。
附:神保町でうまく本を買うコツ
古本屋が多い神保町であるが、厳しい店主が多いというイメージを持つ方がいる。また少し独特な世界でもある。しかし、以下のことを守れば大丈夫である。
・キャッシュレスではなく、現金歓迎の店が多い。⇒現金主義なので、多めに持っていくとよい。ペイペイやカードは使えないところや一定額以上でないと使わせない店が非常に多いためである。
・日祝月に注意。⇒日曜、祝日、月曜は、休みの店が多い。理由は不明だが、多くの店がそうであるため、なるべく避ける。
・時間に注意⇒朝は10時から、夜は18時までのところがほとんどである。あまり夜遅くまでは営業をしないのは、神保町がオフィス街でもあり、夜は一気に人が減るからでもある。
・本を値切らない。⇒相場を守る意識の強い本屋が多いので、ある程度根拠がある。であるから値切ってはいけない。
・古本の来歴を聞かない。⇒どこから買い取ったというようなことは言わないのが古書業界のマナーである。また個人情報も多いためでもある。
・リュックは前に。⇒荷物がぶつかるのを防ぐためである。
・在庫は事前に調べる。⇒新刊書店とは違い、一点ものが多いので、事前に「日本の古本屋」のサイトや自社サイトで調べるとよい。
・トイレに注意。⇒本屋にいると、俗にいう「青木まり子現象」が起きるわけだが、神保町はトイレが少なく、用を済ませてから、買い物をした方がよい。
あとがき
神保町は世界有数の書店街であるが、カレーやラーメン、中華料理でも非常なる名店が多い。本書では紹介を省くが、本が入った重いリュックを背負いながら、どこで食べるかを考えるのは一興である。また、文化が馥郁としており、様々な業種の老舗があるのもよい。東京都心に通う学生よ、30分もあれば着くのに、このような特異な街にどうして行かないのであろうか。私は是非行って楽しんでほしいという一心でこの書を書いた。
2024年11月 記
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