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デザイン vs 機能 (徳島宿プロジェクト)

昔々、まだ映像プロダクションに勤めていた昭和の時代、社長によく「映像というのは情報ではなく、感動を伝えるのが仕事なんだ」と口酸っぱく言われていた。

「予算がないから無理です」なんてのは無能な人間のいい訳だと・・・。

まだコンピューターグラフィックが珍しかった頃、作品に少しだけCGを使うとか、登場人物だけはお金を掛けて外人モデルを起用するとか、例え予算が少なくても、見栄えも中身も工夫して顧客に感動を提供する、そんな社長の方針はバブルの波にも乗り、当時はほとんど家にも帰れないほど忙しかった。

あれから数十年、SNSの登場により、「感動」は一瞬でスワイプされ、あらゆるものにおいて見栄えや雰囲気、便利さが最優先されるようになった。

張りぼてのインテリアと派手なスウィーツで気分を演出するカフェ、機能がてんこ盛りの家電、威嚇するような顔のクルマたち、器ばかりが目立つ料理屋などなど。
そんな時代の中で、見栄えだけで無く中身も追求するとなると、急にコストが跳ね上がって手に追えなくなるというようなことが起こる。世の中には、こんなにもたくさんの商品やサービスが溢れているのに、なかなかしっくりくるものが無いのは、私がいつまでも昭和の時代を引きずっているからなのだろうか。

無いものは自分で工夫して楽しむ・・・

話は変わるが、最近youtubeを漁っていて、老いも若きも軽の貨物車を自分らしく改造して、趣味やアウトドアに活かして楽しむ人たちを知り、何だかとっても微笑ましく、自分でもやってみたいと興味が湧いてきた。いろんな動画を見るに付け、宿も開業することだし、維持経費の掛かる今のクルマを乗り換えるいい時期かもと、俄然軽バンに気持ちが傾き始めている。

スズキ エブリバン 

まず気になったのは、スズキのエブリバン。郵便局や佐川急便などでおなじみの真四角のバン。改めて街を見渡すとあっちにもこっちにも働くエブリバンがいる。
まさに荷物を運ぶという機能最優先のクルマなのだが、リフトアップして、外観をいじると、何だかワイルドなSUVといった風情が出て、なかなかにカッコイイ。こんなにも印象が変わるものなんだと感心しかり・・・。

リフトアップし、カスタムしたエブリ

昭和生まれの人間にとって、クルマというのは自らのアイデンティティでもある。クルマが好きで、今までいろんな国・タイプのクルマに乗ってきた身としては、ただ実用的な軽貨物車に乗るというのは抵抗があったけれど、こうしたクルマに出会って、軽自動車乗り換えへの背中を押してもらった気がしています。

ホンダN-VAN
ピラーと呼ばれる柱が無く、助手性までがフルフラットになる

続いて、気になったのがホンダのN-VAN。同じくお仕事のクルマなのだが、そのデザインやカラーは秀逸で、ノーマルのままでも十分。宿のかわいいマスコットカーになりそうな気さえする。サーフボードも気にせず中に乗せられるし、燃費もリッター20kmと良好のようだ。

ダイハツ アトレー

そして気になるもう一台が最近新型になって、人気が高まっているというダイハツアトレー。デザインは質実剛健という感じであまり好みでは無いが、シャーシを始めすべてを設計し直したという言葉通り、試乗してみると、静かだしパワーもあるし、とにかく乗り心地が抜群。もう貨物車とは呼ばせない・・・そんな魅力があり軽バンの概念が大きく塗り替えられた1台だった。

余裕の車内空間

セカンドシートを倒すと、全長1820mmもの真っ平らな空間が現れる。余裕で足を伸ばして眠れるし、サーフボードも縦に乗せられる。軽とは思えない広さだ。

デザインは、断然N-VANだが、機能・乗り心地を考えるとアトレーがベスト。カスタムパーツも豊富で、なんとも言えない表情を見せるスズキのエブリも気になるところが、燃費の悪さや乗り心地で一歩後退というところか。
N-VANのデザインで、アトレーの機能・乗り心地を持った車というのが一番なのだが、それは無いものねだりというもの。若い頃なら、デザイン重視で迷わずN-VANを選んでいただろうけど・・・。

デザインを取るか、機能を取るか。
クルマの本質を考えると機能を優先し、デザインは自分好みに工夫するのがいいのかな。軽は税金も高速代も安いし、経費節減にも大きく役に立ちそうだ。

今の世の中、実にたくさんの選択肢があるけれど、大方は見栄え重視の良く似たものばかり、いくら選択肢があるからといって、甘えていてはダメですね。

「無い無いと文句だけを言うのは、無能な人間の言い訳・・・」
社長の言葉を改めて思い出しました。

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