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【留学するまで#5】願い続ければ叶う
社内留学制度を利用したくて希望を出し続けて6年間、ずっと選ばれずに悶々とした日々の中、あるきっかけが訪れる。
武漢空港の出発ロビー
プロジェクトの都合で、隣の部署の部長と中国出張へ行く機会が発生した。
自身はもう何十回も訪問しているので慣れたものだが、部長にとっては初めて。プロジェクトの現地リーダーとして、不測のないように対応する必要がある。
部長とは一週間中国の地方都市を巡る。当然タクシーや新幹線、飛行機は同じ。お話する時間は大量にあった。
武漢での飛行機の待ち時、部長がD2の今後のキャリアについて聞いてきた。
「D2は、今後はどんなキャリアが良いとかあるんか?」
「海外駐在か留学が第一希望で、海外マネジメント系がその次の希望です」
「そうか。よし、その可能性、上げよう」
「え?」
一瞬何が起きたかわからなかった。
「今回同行していて思ったんやけど、お前はどこへ行っても生きていけると思うで」
シンプルに嬉しかった。部長は海外出張中いつも通りな感じで接していたが、実は結構見られていたらしい。
「とはいえ決定権はないからな。上に意見しか言えへんで。あんま期待はせんといてや」
「それでも嬉しいです、ありがとうございます。」
武漢の空港、というか中国の地方都市の空港はどこも薄暗くて無機質だが、この日だけは少し明るく見えた。
呼ばれた窓のない会議室
それから数か月が過ぎた6月。
梅雨空の蒸し暑い日、エアコンの効いたオフィスで仕事に追われていると、所属部場の部長が現れる
「D2君、ちょっといいかな」
「辞令は突然に」ではないが、人事異動は大体こんな感じで偉い人に呼ばれる。
通されたのは窓のない会議室。ここは社員の間では「人事異動を告げられる部屋」として有名な部屋である。
話の内容はわかっている。「留学いける or 今年もダメだった」
しかし今日は例年と様子が違った。
部屋にいるのが一人多い。彼は留学担当の管理職の社員。彼がいるということは。。
「D2君よかったね、部長会で満場一致で次の留学生はD2君で決定しました」
「ありがとうございます!頑張ります!」
隣の部署の部長の後押しもあったのだろう。嬉しさが込み上げてきた。
こうして待ち時間足掛け6年、ようやく社内留学制度を利用して1年間のアイルランド留学に行けることになった。
だが、、
与えられた試練
会議室で最後、留学担当のカナダ人社員が一言、
「事前に英語のテストがあるから、頑張って」
実はこのテストの存在は知ってはいた。具体的な内容を今から聞くことになる。
「どんなテストで、どれくらい出来ればよいのですか?」
「IELTSアカデミックモジュールでoverall 6.5以上、全技能で6.0以上で合格。これは派遣先の大学の規定だからね。社内的にはD2君に決まったけど、留学に行けるかどうかはテスト次第だよ」
IELTS、聞いたことがない。でも社内的には選ばれた。海外の仕事もしている。大丈夫、どうにかなる。
ポジティブに自分に言い聞かせていたが、後にフルタイムで働く日本人がこの合格点を取ることが、どれほど大変か思い知ることとなる。
つづく。