芸術系専門学生のキャリアデザイン
専門学校には就職後のキャリアについての授業があったりします。
自分はグラフィックデザインの講師なのでそういう授業担当にはならないのですが、学生達に聞くとキャリアデザインなんて名ばかりで面接のやり方やスーツの着方の授業が申し訳程度にあるだけで深掘りはしないとの事でした。
という訳で、そんな学生たちに少しでもお役に立てたらという気持ちから学生に送るキャリアデザインについてお話しします。主に女性のキャリアについてですが、男性にも役立つ情報です。
キャリアデザイン=ライフデザイン
女性の場合はキャリアデザイン=ライフデザインだと考えています。
女性にとって妊娠出産は切っても切れない道で、キャリアプランを考えた時、自分の人生設計(ライフデザイン)を同時に考えることになるからです。
価値観が多様化している昨今、女性の結婚率も減ってきてはいますが2017年の調査結果では86%の女性が結婚をしているという事実があります。
結婚をすると次のライフステージとして子供を持つかどうか?という事を考えます。
妊娠出産をすると必ず一度社会というステージから降りなければいません。
そのステージを降りるタイミングはいつにするか?
キャリアを優先するか?出産・育児を優先するか?
まだ社会人にもなっていない学生ですから、そんなこと考えられないと思うかもしれませんが、社会に出てからの10年はあっという間にきます。
仕事が忙しかったり楽しかったりして気がついたら30歳目前だった、なんて普通にあります。
40代で第一子を妊娠出産した芸能人ニュースを見ることがありますが、あれは激レアケースだと思ってください。
40代で出産できる確率は10%以下です。一方流産率は40代後半になると90%を超えます。
いくら時代と価値観が変わっても、医療が進歩しても、女性の身体が進化したわけではありません。
初婚平均が29歳を超え、平均初産年齢も30歳を超えていますが35歳以上が「高齢」で「ハイリスク」出産なのは変わらないんです。
ですから今から考え始めても早すぎることはありません。
女性のキャリアはM字カーブ
このグラフは内閣府の「女性の年齢階級別労働力率の世代による特徴」というデータを元に作成しました。
女性の何%くらいが働いているかを年代&年齢別にしたグラフです。
どの年代も全体的にアルファベットのMに似たカーブを描いていますよね。
これってどういうことかというと、
ほとんどの女性は一度就職をする → 妊娠出産で社会から一度離れる →
育児がひと段落するとまた仕事を始める
という事を意味しています。
そしてよく見るとM字カーブの谷は年代が進むにつれて徐々に緩やかなになってきています。
これは妊娠出産を経験しても退職せずに産休や育休を取得し、キャリアを分断させない人が増えてきているという意味に見えます…見えますよね?
しかし現実は少子化。
子供を産まない女性が増えたのでM字の谷が緩やか、という読み方もできます。自分はこっちの方が原因として大きいと考えます。
上記グラフは女性の出生数のグラフです。4年前くらいに「とうとう100万人の大台を下回った!」なんてよくニュースでやっていました。
なぜ女性が子供を産まなくなったかというと、自分は日本経済の状態に起因していると思っています。
株価だけを見ると日本の景気は回復しているように見えますが、庶民の肌感覚は好景気とは程遠いと思います。
そんな国で子供を産み育てるのはリスクと考える女性が増えてもおかしくはありません。
現実的に、感情的に、欲しくてもお金がなくて育てられない、と思うのです。
子供の産まれない国で経済成長をしている国は今のところありません。
まぁ当たり前だよね。人口と労働力が減り続けるんだから。
経済成長率や景気の話は専門家ではないので間違った情報を流してはいけないと思うので語れませんが、日本にはこんな現状があります。
また、このM字カーブには罠があり、谷から回復した2つ目の山のほとんどは正社員ではなく非正規雇用(パート・アルバイト)に変わっているのです。子持ち女性は正社員で雇われにくく、女性本人も正社員で働くのはキツイと考えるのです。
こんな中で専門学校卒がキャリアデザインをするにはどうすればいいのでしょうか。
これからの日本で働く事
何よりも大事なのがアンテナを張り、とにかく情報を掴んでいく事です。
ネット情報だけでなく本を読んだり、自分の業界だけではなく異業種についてや経済の動向、海外のニュースなど自分には一見関係なさそうな分野に対しても日常的に情報を掴んでください。
例えば、20年後の2040年には日本の人口は1000万人減少していると予想され、逆に65歳以上の人口は増え続け3人に1人の割合になると考えられています。
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_gaiyou.pdf
この情報から今後どんな分野に将来性があるか?を考えることができます。介護業界は今後も人手不足でしょうし、介護の負担を減らすような関連商品は売れるでしょう。
その他にはインバウンド(訪日外国人旅行 / 訪日旅行)の業界も成長産業です。
今自分が持つ専門知識・技術はそれらにどう役に立てるか?を考えると、自分の立ち位置やどう動くべきかが見えてくると思います。
DTPに関して言えば、世界的に見ても印刷業界は厳しい立場に置かれています。先進国で伸びているのはインドくらいです。
ですが、パッケージ印刷だけはどこの国でも伸び続けているんですね。
『DTPで就職したいのであればパッケージ印刷をする会社に注目し、その会社に入るためにパッケージデザインをもっと勉強しておくとよい。』
こういった情報もアンテナを張っていれば入ってきます。
また、会社を調べるときに過去の産休育休取得率と育休後のポジションについても調べてください。わからなければ人事に直接電話やメールをしてOKです。
産休育休取得率が著しく低い企業は言語道断ですが、育休明け後に以前よりも責任の無いポジションに配置転換されてしまい、結局今まで築いたキャリアを無にされてモチベーションも上がらず会社に対しての不誠実さに気を落としてしまう、なんて話も耳にします。
もう一つ大切なのはスキルを身に付ける事。
皆さんは専門知識・技術を身につけている点で一歩リードしていると自覚してOKです。
今後はAIが仕事を奪っていく、と言われていますが0(ゼロ)から物を産み出すクリエイティビティな仕事は今の所AIでは補えない領域です。
ロゴやチラシをAIが自動で作成してくれるアプリやホームページがありますが、そのデザインの大元を作るのは人です。また、そのアプリやページ自体を作成してるのも人です。
このようにクリエイティブな業界はまだまだ需要があります。
そしてデザイナーについて言うと、+αで大切なのは作り続ける事。
これを絶対にやめないでください。
自分自身がM字カーブの谷に入った時、育休産休をとっている最中はそれ以外なにも出来ないくらい大変ですが、超ペースダウンしてもいいし普段の1割くらいの出来でもいいので作り続けてください。
「アンテナを張り情報を掴む」「スキルを磨く」とちょっとふわっとした内容ですが、本当に大切なのはこの2つです。
具体的に「○○業界にしましょう」「△△会社はやめましょう」などと言わない大きな理由は『今の子供達の65%は将来、今ない職業に就く』と言われているからです。
これは米大学の研究者が、2011年8月のニューヨークタイムズ紙インタビューで語った言葉。
この当時から見てもYoutuberなんて職業はなかったよな〜と思います。
10年前、ここまでスマホが普及して私たちの生活を激変させるなんてスティーブ・ジョブズ以外は予想していなかったんじゃないでしょうか。
AIが仕事を奪っていくなんてのもSFチックな話と思っていましたが実際すでに奪いつつあります。
誰にも予測できない未来だからこそ、先ほど伝えた大切な2つを常に心に留めておいて欲しいと思います。
そして女性のキャリアプランはイコール人生設計だと言うことも。
専門学生は自分の持っているスキルは素晴らしいものだと自信を持ってこれからのキャリアを築いていってください。
応援しています!
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