「暮らし・務め・稼ぎ・遊び」をMIXする農山漁村でのライフ・ワークスタイル
農山漁村での3つの仕事
農山漁村では、暮らし・務め・稼ぎという3つの仕事があるとされています。お金を稼ぐしごとだけでなく暮らしや務めの仕事も大切な役割を果たしています。
●「暮らし」とは、
丁寧な衣食住の家事、子育て、自給自足、DIY、家族行事など、お金にはならなくても日々の生活を豊かにする営みです。
●「務め」とは、
地域や属する共同体の中で、労働を提供し合う仕事です。自治会参加、草刈りなど共有地清掃、商工会、青年部、お祭り、消防団などです。コモンズ(共有地)の手入れとも言えます。
●「稼ぎ」とは、金銭収入を得るしごとです。現代社会でいう「仕事」そのものです。
仕事といえば、金銭報酬付きの仕事をイメージする人が多いでしょう。都市においては仕事とは「稼ぎ」仕事だけのイメージになっています。
都市での「稼ぎ」仕事は競争も激しく、長時間を費やすため、
「暮らし」にあたる自炊する時間や家族と過ごす時間、掃除する時間も取りづらいですね。「務め」にあたる地域活動はおもに現役引退者の担当で、例えばマンション住まいなら共用部は管理費を支払って管理会社がやってくれるので、都市の現役層にはあまりイメージしづらいと思います。
現代社会では、金銭を生む「稼ぎ」仕事でバリューを出すため最優先で時間を使い、「暮らし」や「務め」の仕事はアウトソースしてお金で解決しているのが現状です。
しかし、農山漁村では「稼ぎ」仕事だけでは一人前とみなされないのです。なぜなら、自然環境や地域社会と共生しながら生きている農山漁村では、金銭が支配する世界は一部だと認識しているからです。家庭や地域ごとに知恵や技術を継承するための四季折々の「暮らし」があり、金銭を介さない物々交換のやりとりがあります。そして地域・共同体は、皆が少しづつ供出する無償労働による「務め」仕事が支えているとわかっているからです。
なので、農山漁村には3つの仕事、「暮らし」「務め」「稼ぎ」があるのです。
「暮らし」「務め」の再生
私たちアースカラー・地球のしごと大學は、農山漁村に移住あるいは片足を突っ込む(二地域居住、関係人口から)ことを勧めています。それは、都会が災害や感染症に弱く、やりがい生きがいのある仕事が少なくなっているという時代背景からもそうですが、農山漁村の暮らしや仕事にこれからの時代を豊かに生きる大きなヒントがあると考えているからです。
例えば、「暮らし」「務め」「稼ぎ」のバランス。
具体的には、金銭のための「稼ぎ」仕事は少し減らしてでも、「暮らし」仕事や「務め」仕事を少しづつ復活させていくというバランスを意識することがおススメです。
「暮らし」や「務め」は面倒くさいなあ、もっと効率よく自分の市場価値を高めるためだけに時間を使いたい、そんな風に思うでしょう。
しかし長期的な視点で自分を助けてくれるものはなにか?と考えた場合、「暮らし」や「務め」が効果してくるのです。
男性が定年後、会社の仕事しかしてこなかった。それ以外何もできないし何もやることがない、、、という悲哀は良くメディアで見る話ですよね。
なので、自信の価値を市場経済内だけに置くのではなく、地域や家族、あるいはNPOなど自分の価値を発揮するベクトルを複線化しておくのです。他者や地域、社会問題、自然界のために時間を使うということです。
また、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)という概念があります。「絆」「繋がり」、いざというときの精神的結びつきです。言い方を変えれば民間のセーフティネット、新たな社会保障ともいえる有形資本ではなく無形資本です。ソーシャルキャピタルの有る無しは幸福感を左右するとのことです。
都市社会では失われつつある「暮らし」「務め」の再生。
それは、自分の価値を複数ベクトルで最大化し、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)を増大させ、長期的な幸福度を上げることになります。
また、現代の私たちに欠かせないのが「遊び」です。人それぞれ情熱を感じる「遊び」があるはずです。芸術活動やスポーツ、趣味などです。現代人の生活を豊かにするためにも「遊び」の時間も増やしていければ、社会全体がもっとワクワク楽しいものへとなっていくはずです。
さらには、「暮らし」「務め」「稼ぎ」「遊び」の融合という進化もあります。
「遊び」が「稼ぎ」になる人もいるでしょうし、自給農など「暮らし」が「遊び」になったり、お祭り行事などの「務め」が「稼ぎ」に繋がったり(あの人、祭りでとっても貢献しているから本業応援してあげよう!など)どんどん境目が無くなりMIXされていくのが人生の達人の領域と言えるかもしれません。
まとめ:幸福度・安心度が向上するワーク・ライフシフト
繰り返しになりますが、現代では、生活の多くのことが商品・サービス化され、昔は自給していたことやコモンズ(共有地)の管理をアウトソーシングしています。
結果として伝統的社会が持つ生活の知恵や技術といわれるようなことが継承されなくなっていきます。人類の叡智の損失です。
高度な文明社会は分業化し専門化するものですが、「稼ぎ」だけの専門ばか(すみません!)にならずに、今一度「暮らし」や「務め」を見直して、里山里海の手仕事などを取り入れたり、働き方や生き方を変化させてみてはいかがでしょうか。
そこで農山漁村に飛び込む(移住または片足を突っ込む)ことが選択肢に浮上してきます。
もちろん都市でもそのようなワーク・ライフシフトは可能ですが、「暮らし」「務め」「稼ぎ」「遊び」によるセーフティネットが本質的に機能するのは、自然資源が豊かで、いざという時に物々交換や自給自足が可能、みんなが協働して生きるというメンバーシップ感が残る地域共同体がベストと考えます。そのような地域共同体へ片足を入れて所属するコミュニティを増やしておくことは個人の安全保障となります。
GDP(国民総生産)からGNH(国民総幸福度)へなどとと言われますが、
私は、3つの仕事「暮らし」「務め」「稼ぎ」+「遊び」の充実度合いこそGNHになるのでは?と考えています。
老後に2000万円必要というデータもありましたが本当でしょうか。
金銭だけがあらゆる尺度となり、金銭だけに支配される世界が前提ならばそうかもしれません。しかしそんな世界がこれからもずっと続くのでしょうか??
老後に向けて、今を犠牲に金銭を蓄積するために「暮らし」「務め」を軽視するのではなく、金銭備蓄はそこそこに、社会関係資本を備蓄する。
豊かな社会関係資本とともに生きる老後を目指す。
これが人生の早いうちから気づいて配慮できると良い、おススメなワークスタイル・ライフスタイルであり、私たちが描く、地球全体がサステナブルになっていくために必要な個人のワークスタイル・ライフスタイルの在りようです。
ぜひ検討してみてください!!
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